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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第五章 天を衝く咆哮
147/543

登場人物紹介5

今回もほぼ初期設定となります。イリス達の変化については修正を加えております。

ちょっとだけ書き過ぎた気がしないでもないですが、後悔しておりませんっ。

 

 ◇エメリーヌ・プレヴァン

 フィルベルグ王国国営図書館司書長兼館長代理。二十九歳、女性。

 ブラウンでロングのエアウェーブパーマの大人系素敵美人。暗めブラウンの瞳で、目元はとても優しいが、目力が少々あり、マールを常にびびらせている。

 だがそれは国営図書館館長代理という大役を仰せつかっている為、元来の真面目さと相まって、普段よりもずっときつく見えてしまうようだ。心根はとても優しく、礼儀正しく、真面目で親切。おまけに記憶力も抜群。


 一度読んだ本のタイトルと、ある程度の内容、その本がどこに置かれているかを覚える事が特技で、希望の本を聞くだけでどこの本棚の何段目左から何番目、という細かい位置まで記憶しているので、現代で言うところの利用者用端末みたいな事が出来てしまうハイスペックお姉さま。

 もちろん利用者が違う場所に戻してしまう事も多い為、大体その辺り、という言い方をせざるを得ないのではあるが、その正確な記憶力と持ち前の丁寧さ、礼儀正しさで、国営図書館館長から全幅の信頼を寄せられている。


 後輩であるマールを実の妹のように大切にしているが、本人に言うと図に乗るのでなるべく気づかれないようにしている。

 いずれは自分のポジションまで上げる為に現在教育中。


 貴族であるプレヴァン家のご息女だという事実を知る者は、館長だけである。



 ◇ヴィオラ・オベルティ

 チームヴィオラのリーダー。ゴールドランク冒険者。二十三歳で獣人の女性。

愛称、(あね)さん。百八十センルはあろうかという長身大柄で程よく筋肉質の女性。大きな剣を背中に背負っている。褐色の肌にぎらついたような鋭い瞳、黒髪に黒目。灰色の魔法銀(ミスリル)製重鎧を身に纏った熊人種(くまひとしゅ)重戦士(ウォリア)の獣人冒険者。


 人を引っ掻き回すような言い方をして、相手の反応を見ては楽しむ性格の悪さが目立つが、時と場合をしっかりと選ぶ。いざ戦闘となると、その無駄の無い勇猛果敢な姿に見惚れる者が多い。大剣を力任せに扱わず、繊細に遠心力を使った攻撃をする為に、とても威力が高い攻撃を繰り出す事が出来る。その姿は普段の彼女の気性とは思えないほどに優雅である。


 メンバーである四人は全てシルバーランク冒険者ではあるものの、重戦士(ウォリア)一人、剣士(フェンサー)三人というパワー重視のパーティー。ごり押しパーティーかと思いきや、リーダー含め冷静な者ばかりが集まっているため、確実性と安定性のあるパーティーでギルドからの信頼が厚い。


 やはりと言うべきか、かなりの酒好きで酒豪。最近ぱっと出の"うわばみ"とやらを酒樽に沈めようと、獲物を狙うような目で探していた。ちなみに酒癖は全くと言って良いほど悪くない。寧ろ酒が入ると、"面倒見の良い人"が前面に出るらしい。それが普段の彼女と似つかわしく無いようで、却って不気味に見えるのだとか。

 実際にはとてもいい人で面倒見も良く、パーティーメンバーも彼女をとても慕っている。引っ掻き回して楽しむような性格さえ無ければ、とっくに結婚していたであろうとメンバー全員は口を揃えて語る。



 ◇ブレンドン・グラント

 チームブレンドンのリーダー。剣士(フェンサー)人種(ひとしゅ)のゴールドランク冒険者。二十五歳男性。身長百七十センル。濃い茶色の髪に、黒に近い茶の瞳。目つきは少々細めで彼を知らない者が見ると、まるで睨んでいるようにも見えるが、ただ目が細いだけでそういった事はしない誤解されやすい人物。

 身長百七十センル、軽さを重視した魔法銀製(ミスリル)金属製胸部の鎧(ブレストアーマー)、腕部、脚部に鎧を装備。二百三十センルはある大きな魔法銀製槍(ミスリルランス)の使い手。


 無口で無愛想だが、曲がった事は決してしない。基本的に自分からは殆ど喋らないが、人付き合いが悪いわけではない。どうやら彼の頭の中では言葉に出しているらしく、伝わらないだけのようだ。当然必要な事はしっかりと伝える。

 弱い者いじめにやたらと強い反感を持ち、そういった現場を見かけるとほぼ確実に仲介に入り、弱い者側に付いて止めに入る。その際決して武力で介入せず、話し合いで解決しようとする。

 どうしても解決できずに相手が襲って来た時には、出来るだけ怪我をさせないように取り押さえる。そんな姿に、多くの女性が黄色い声をあげるも、そういった女性にはあまり興味を持たないようだ。


 メンバーである三人はゴールドランク剣士(フェンサー)一人、シルバーランク盾戦士(フェンダー)斥候(スカウト)となる。攻撃よりのバランスのいいパーティーで、依頼達成率も九割を超えているため、ギルドからの信頼も厚い。



 ◇アルフレート・フォルスター

 チームアルフレートのリーダー。剣士(フェンサー)人種(ひとしゅ)、ゴールドランク冒険者。二十一歳男性。身長百七十四センル。アッシュゴールドの髪に、薄い青い瞳。百センルもある大きな魔法銀製長剣(ミスリルロングソード)と、胸部、腕部、脚部をしっかり護った、魔法銀(ミスリル)製ハーフプレートアーマーを装備。


 レナードのチームにいる剣士(フェンサー)オーランドと同じスタイルだが、こちらは冷静且つ慎重。潮時の見極めが抜群であり、深追いは決してせず、パーティーの安定性がとても高い。一瞬でも見誤ると命に関わる冒険者と言う職業に、最も必要なスキルかもしれないと言われるものを持っている人物。


 性格は至って真面目で穏やか。ロットほどではないが、優男というイメージが定着している。酒が入ると普段は見せないような陽気さを見せ、それが何とも言えず魅力的なのだと、彼を慕っている女性は言う。


 パーティーメンバーは四人の全てがシルバーランク冒険者。斥候(スカウト)魔術師(キャスター)狩人(ハンター)二人という、少々不思議な構成。これが彼らには相性が良いらしく、他のメンバーを入れないで済むほどの安定感を見せていた。

 ギルドの推察では、彼ら同士の連携の相性がとても良いのではと予測しているが、正直な所このパーティーで安定しているのも少々不思議と言わざるを得ない。



 ◇マリウス・ファルハーレン

 チームマリウスのリーダー。栗毛の髪に、胡桃の様な瞳の色のゴールドランク冒険者。身長百七十六センル。剣士(フェンサー)人種(ひとしゅ)二十五歳男性、既婚者。ザリガニが好物。


 装備は動き易さを重視した軽い魔法銀(ミスリル)製の胸部金属鎧(ブレストプレート)と戦斧。ただでさえ重い斧を持つのは、あくまでの彼自身に相性が良いというだけの理由で持ち歩いている。

 本来人種(ひとしゅ)は獣人と比べて腕力が低いと言わざるを得なく、重い斧なのど武器はあまり好まれない。だが彼にその理屈は通用しないらしく、本当に人種(ひとしゅ)か疑いたくなるほどの腕力を持っており、重斧であったとしても軽々と振り回すことが出来る。


 武器はあえて魔法銀(ミスリル)製では無いもので戦っている。これは斧の特性である、重さを力に加えて叩き切るような扱いをしている為、ある程度の重さが彼には必要なのだとか。

 それでも獣人種には腕力では勝てない彼が、ゴールドランク冒険者まで上り詰めた理由がその戦い方にあった。

 身体を回転させるようにしながら、遠心力を含んだ攻撃方法を取る事で、劇的に破壊力が増し、獣人並みの力を手に入れることが出来たようだ。

 当然そのリスクもあるのだが、しっかりと使う所を見極める事が出来るため、不用意に視界から相手が消える技を使ったりはしない。


 性格も良識的で、人を見下さないタイプ。

 何よりも仲間との信頼をモットーに、パーティーを組んでいる。


 パーティーメンバーは三人。ゴールドランクの剣士(フェンサー)、シルバーランクの盾戦士(フェンダー)、シルバーランクの斥候(スカウト)のバランスの良い構成。


 酒を飲むとやたらと眠くなるらしく、あまり飲まないようにしているのだとか。

 愛妻家で、いつも街中を妻シェリー(二十四)といちゃいちゃしているらしい。



 ◇ラウル・ラヴァッツィ

 チームラウルのリーダー。全身が白寄りの銀色の毛で覆われた、狼人種(おおかみひとしゅ)の獣人男性。二十三歳。身長百七十七センル。

 白狼(はくろう)族と銀狼(ぎんろう)族のハーフで、母寄りの毛色。どちらも戦闘に特化した種族と言われるが、白虎(はくこ)族と同じく穏やかでとても人当たりの良い種族。寧ろ戦いを好まない傾向にすらあるのだが、一度スイッチが入ると性格が変わった様に敵を攻撃する。


 彼は自由な冒険者というものに憧れが強いようで、十五歳を機にリシルア国に出て来て冒険者登録を済ませるも、すぐさま国を移動し、フィルベルグに落ち着いたようだ。血の気の多いリシルア国は少々彼に合わなかったようだ。


 百五十センルもある大槌を巧みに操る重戦士(ウォリア)魔法銀製(ミスリル)胸部金属重鎧(ハーフメイル)に、腕部、脚部をしっかりと護った重装備。全身魔法銀(ミスリル)製なのでとても軽く、速度を落とす事無く攻撃を繰り出す事が出来る。

 単純に振り回すことが無い槌捌きは、見事と言う者も多い。力任せに振り回すのではなく、しっかりと相手を見定めて振り下ろす一撃は、さすがはゴールドランク冒険者といったところ。


 目つきはとても鋭く獰猛な瞳に見えてしまうが、とても心優しき男性。基本的に争いごとが嫌いな性格だが、人から避けられ、子供に見られただけで大泣きされ、ガラの悪い連中は寄ってくるという悪循環に、ギルドでしょぼくれながら酒を飲んでいる可愛らしい一面を見せる。こんな目つきでなかったら、冒険者ではなく別の職についていたと、パーティーメンバーに愚痴を零している。

 普段の性格は大人しく、とても冷静で思慮深い。とてもそうは見えないと良く言われてしまう悲しい人。


 パーティーメンバーは五人。ゴールドランク剣士(フェンサー)二人、ゴールドランク冒険者盾戦士(フェンダー)一人、シルバーランク斥候(スカウト)一人、シルバーランク狩人(ハンター)一人の攻撃重視でバランスの良い構成。メンバーの一人である斥候(スカウト)人種(ひとしゅ)のパメラは、心優しい彼に惹かれ、いつも愚痴を聞きながら一緒に酒を飲んであげている。



 ◇リーサ・ローセングレーン

 チームリーサのリーダー。セミロングで金寄りのホワイトゴールドの髪、白に近い金の瞳。二十二歳人種(ひとしゅ)の女性ゴールドランク冒険者で、水属性魔術師(キャスター)。身長百五十八センル。


 白色の丈夫なワンピースに魔法銀製(ミスリル)胸部金属鎧(ブレストプレート)、プラチナ製のバングルに、水属性の威力を上げる魔石付きの鉄製の杖を装備。


 防御魔法を重視している彼女は、元々聖王国アルリオンに勤める女性神官(プリエステス)だったのだが、どうも冒険者の方が性に合っているらしく、転職してからは活き活きと毎日を過ごしている。最近では冒険者という職業に、遣り甲斐を感じなくなっていたが、同業者であるヴィオラの言葉により、再び何か遣りたい事を見つけられたようだ。


 柔らかく、おっとりとした表情でゆっくりと言葉にするその口調はとても優しく、透き通るような声を発する。その言い方と表情のせいで軽く見られやすいのだが、それは彼女を知らない者だけだ。状況判断と冷静な対応に長けた人物で、戦況を見極めながら戦う事が出来る立派なリーダーである。

 仕事内容だけでなく報告もしっかりとしており、彼女のチームには安心して依頼を任せられると、ギルドからの評判も上々である。


 メンバーは四人。防御寄りのゴールドランク剣士(フェンサー)、ゴールドランク盾戦士(フェンダー)、シルバーランク斥候(スカウト)、シルバーランク狩人(ハンター)の、バランスが良いパーティー。


 見た目からはとても想像がつかないが大のお酒好きで、良くギルドや酒場でお酒をメンバーと楽しそうに飲んでいる。今現在はパーティーメンバーを募集していないが、このメンバーが集まる際の加入条件の一つが『酒好きである』という、一風変わった募集をかけていた経緯がある。当然、酒好きばかりが集まったパーティーなので、しょっちゅう飲み歩いているようだ。



 ◇ヴァン・シュアリエ

 虎人種(とらひとしゅ)の男性で二十一歳。身長百八十センル。

 世界に二十人しかいないといわれるプラチナランク冒険者のひとり。


 白虎(はくこ)族と呼ばれるとても珍しい種族で、全身が真っ白な体毛と黒いラインが入った勇猛そうな男性。色鮮やかな金色の瞳をしていて、二十一歳の割りにとても渋い声をしている。白と黒の縞々の長い尻尾があり、感情によりぴょこぴょこしてしまう。


 胸部・腕部・脚部を護る漆黒のハーフプレートアーマーと、二メートラもある巨大な武器、戦斧(ハルベルト)を装備している。斧の先端にはダガーのような鋭い物が付いており、遠心力を使った薙ぎ払いや叩き切る以外に、槍のような刺突攻撃も出来る優れものらしい。防具は黒檀(こくたん)のような輝きのある漆黒でミスリル製。恐ろしいほど軽くて丈夫。


 元々戦斧(ハルベルト)は白虎族が独自に作り上げ使っていたものだが、その利便性から好んで使う人が多くいるようだ。当然、超重武器のひとつとされるほど重く、並大抵の力では扱うことすら難しいのだが、持ち前の腕力と重量がある武器を遠心力たっぷりで当てるため、途轍もない攻撃力がある。


 力強く静かな闘志を燃やし、勇猛果敢に戦う姿に冒険者の誰もが目を見張る。


 フィルベルグを襲った最悪の事件の最中に訪れた彼はそのまま本作戦に参加する。持ち前の気性からか、それとも以前凄まじい強さを誇ったガルドと対峙したせいかは今も判明していないが、眷族が放つおぞましく濃密な殺気にも耐える事が出来た人物の一人。この威圧と文献に書かれていた殺気に初対面で耐えられたのは、ヴィオラ、ブレンドン、ラウル、ロット、そしてヴァンだけである。


 眷属戦後、ヴィオラ達と共に女王から例の技術について学び、もう二度とあのような事のないように鍛錬を続けていった。今現在は眷族が出てきたとしても倒せると自負出来るほどの実力を、既に身に付けている。



 ◇ロット・オーウェン

 世界に二十人ほどしかいないと言われ、最高峰の冒険者の証であるプラチナランク冒険者のひとり。十七歳の人種(ひとしゅ)の男性でイリスの兄。

 左利きで利き手に盾を、逆の手に剣を装備し、盾を主体とする防御重視の戦い方を得意としている盾戦士フェンダー。


 美しくさらさらとした金色の髪に優しい眼差しの青い目をしており、性格は真面目で優しく前向き。驕ることをせず、力を誇示せず、努力を怠らない上に、思慮深く冷静で博識。


 白く輝く魔法銀ミスリル製の鎧を身に纏い、その風体からまるで物語の中から出てきた王子様か騎士様のように見える上に、その誠実で真面目な性格から多くの女性に黄色い声をあげられ、とても好意的な瞳で見つめられていたが、ネヴィアとの一件以降見つめられることは無くなっていった。


 フィルベルグ冒険者ギルドに所属している者の中で、今作戦唯一のプラチナランク冒険者として起用された。後に同じくプラチナランクであるヴァンが合流して貰えたお蔭で、更なる戦力の増強へと繋がる。


 少し前に女王から充填法(チャージ)と呼ばれる、フィルベルグ王家が秘匿し続けてきた技術を学び、その技を高めていく。眷属戦においてその絶大な力を振るい、チームを勝利へと導いた者の一人。だがその代償はあまりにも大きく、大切な妹を絶望させてしまう結果となる。


 以降ロットはその力を十全に使えるだけではなく、更なる高みを目指し、日夜訓練に励んでいる。苦手としていた魔法書を読みふけるようにもなり、イリスと図書館で会うことも多かったようだ。その際はお互いにするべき事の為に挨拶と軽い話程度で済ませていた。


 仲間を失う辛さを彼は人一倍知っていたつもりだった。だが、それ以上の悲しみを与えてしまった自分に苛立ちを覚えるも、それでも前へと進んでいくイリスを見つめ、自身のやるべき事がしっかりと見えたようだ。



 ◇ネヴィア・フェア・フィルベルグ

 フィルベルグ王国第二王女。身長百五十八センルの十六歳人種(ひとしゅ)女性。

 巷では白い妖精と呼ばれている。水魔法の使い手。防御魔法が得意で攻撃は苦手らしい。


 鎖骨辺りまで伸びたナチュラルストレートロング。前髪は右目の上辺りで横に分けられ、顔周りの内側に少しだけ頬を包み込むように切り揃えられていてとても清楚に見え、美しい黄金の髪と黄金の瞳が更に彼女を魅力的に魅せている。


 性格は真面目でお淑やかで慎ましやか。優しく澄んだ心の持ち主で、慈しみや思いやりに溢れ、悪口も陰口も言ったことが無く、権力を振りかざしたことなど一度たりとも無い、まさに非の打ち所がない品行方正のお姫様。その見た目だけではなく美しい内面に心を惹かれる国民はとても多い。


 フリルをとても上品にあしらわせた白のボレロに、白に黄色がほんのり入ったエレガントビスチェドレス。髪にとめてある黄色の花のコサージュが、彼女の白く透き通るような美しい肌と流れるようなさらさらとした髪をより惹き立てている。

 誰が見ても素敵で立派な淑女の美しいお姫様で、母に似ず本当によかったと、父であるロードグランツは真顔で語る。


 フィルベルグを襲った脅威、後に"眷属事変"と一般的に呼ばれた一件に一切関わる事無く、友人のイリスと似たような気持ちを抱く。その後、母から(もたら)された終結の知らせを聞くも、母の辛そうな表情から何があったのかを聞き、驚きの余り卒倒しかけた。


 教会裏で執り行われた大切な友人の葬儀に出席するも、自身より遥かに絶望に打ちひしがれたイリスを見て、悲しむことよりもイリスの方が心配になってしまう。彼女にかける言葉など見つからず、ただひたすらイリスを想いながら辛い時間をロットとギルドで過ごす。

 ようやく雨が止み、夜が明けた頃訪れたイリスの表情を見て眼を見開いてしまった。ついさっきまで少女だったイリスが急に大人の女性に見え、驚きを隠せなかった。そんなイリスにネヴィアは、たったひとりで考え、答えを見つけ、絶望という悲しみから乗り越えた彼女を尊敬し、また同時に自身が情けなく思ってしまう。


 後日、心を落ち着けるように姉とガゼボでお茶を飲んでいた所に母と騎士団長ルイーゼが訪れ、イリスが今何をしようとしているのかを知る。

 あれだけのことをした直後に決断したイリスに驚くも自身に何が出来るかを考え、母に師事することで強くなり、イリスの力になると心に固く誓った。だが、母とルイーゼから遠まわしに『止めた方がいい』と言われてしまう。イリスの覚悟は並大抵のものではなく、多少の覚悟では負い付けないとまで言われてしまった。

 それを簡単に受け入れることなど出来ない姉妹たちは、並みの覚悟でなければイリスに追いつけると考え、母に改めて師事を乞う。

 同時に姉と母に師事したネヴィアは、以降必死になりながらイリスの力になるべく修練に励んでいく。その様子は同じ場所で鍛錬をしていた騎士達から見ても壮絶と言えるもので、自分達の直属の上司がエリーザベトではなく、ルイーゼである事を心から喜び、夜には仲間内で涙しながら上司がルイーゼである事を語っていたという。


 イリスが十五歳になるまでの間、出来る事を弱音を上げずにただひたすら鍛え上げていく娘達の力は、あのオレストベアですら素手で倒せるようになったと母であるエリーザベトはルイーゼに語り、盛大に怒られていたという。



 ◇シルヴィア・フェア・フィルベルグ

 フィルベルグ王国第一王女。十八歳。シルバーブロンドの髪。銀の瞳。

 巷では赤い妖精と呼ばれてるらしい。


 ネヴィアの姉で妹思い。性格は明るく楽しい事と恋バナが大好き。

 大人びた顔立ちで、シックな赤いエレガントドレスが似合う女性。

 赤は彼女が好きな色らしく、好んで良く着ている。


 眷属事変以降、冒険者を目指すと言うイリスの為に自分が出来る事をしようとする。妹ネヴィアと同時に母へ師事し、イリスが十五歳になるまで厳しい修練に耐えていく。

 シルヴィアは修練前からシルバーランク冒険者程度の強さは持ち合わせ、自身でもそれなりに実力があると自負していた。だがそんな彼女の力など、イリスは半年もあれば超えてしまうという母の思わぬ言葉に驚きを隠せず、思わず聞き返してしまった。並みの覚悟では追いつけないから止めた方がいいと母とルイーゼに言われてしまい、へこむかと思いきや更に覚悟と情熱が増したようだった。

 以降は妹ネヴィアと共に、騎士団宿舎裏手にある訓練場にてエリーザベトの教育を受け続ける。その内容に周りは見るに耐えない壮絶なものとなり、騎士達は震えながら見ないように自己鍛錬を続けていった。


 いよいよ期限となる歳が明けた頃から、母エリーザベトは課題を出しただけで彼女達の訓練を見ることは少なくなっていく。本人は仕事が溜って大臣(政務官)であるロドルフの身が危ないから助けると言っていたので、それを疑う事無く黙々と目標に向かって進み続けていく。その間、イリスの元で入れ知恵をしていた事実を彼女が知ることになるのは、四月(よんつき)となってからである。


 ネヴィアと同じく強くなったシルヴィアは、これほど強くなった自分達がイリスに追い抜かれることはないと自負するだけの強さを手に入れることが出来た。それは母エリーザベトの教えがあったからであると、以前よりも更に尊敬し、憧れていくことになる。()しくもそれは、憧れ続けた母の背中が近付いていたという事実に、黙々と修練をし続けていたシルヴィアが気付くことはなかった。



 ◇ルイーゼ・プリシーラ

 フィルベルグ王国騎士団団長。三十五歳の既婚者女性。

 綺麗に切り揃えられたゴールデン・ブラウニッシュ・ブロンドのショートヘアに薄い青い瞳。騎士とは思えないような優しい瞳をしており、可愛らしいとも言える表情からは伺えないほどの実力者で、王族や部下達の信頼が厚い。


 自身の努力は怠らず、騎士育成に精力的に指導に当たる彼女の指導は、根性論ではなく理に適った育成法で、最近めきめきと騎士が強くなっているらしい。

 無理をさせない、怪我をさせない、怒鳴らない、確実にじっくりと、騎士それぞれにあった方法を考え育てるタイプで、才能なしと言われるような騎士でも決して見捨てない。それ故、部下からの信頼は絶大である。


 後に呼ばれる眷属事変にて、総指揮官として作戦に参加する。本来であれば後方にある安全圏内で指示をすればいいのだが、彼女は最前線に立ち続けた。それは命がけで戦っている騎士団や、力を貸してくれている冒険者に申し訳がないからと彼女は判断をしたからだ。ならばせめて場所だけは確実に見える位置にと彼女は最前線に立ち続け、その戦いの行方を見守り、指示を出していった。


 自他共に認める実力を持つ者であり、形だけで騎士団長になったわけではない彼女は、眷属戦において自身が参加するべきかもしれないと考えるも時既に遅く、大切な仲間をひとり失う結果になってしまう。

 その後、彼女は自身を責め続けながら仲間の葬儀に出るも、そこで初めて自身が失わせてしまった命の重さに気付かされる。絶望の底にいる少女にかける言葉など見つかる訳も無く、もう二度とこの様な事の無いようにと自身を鍛え、同じことが起これば必ず自分が戦うと心に決める。


 女王であり友人のエリーザベトと共に騎士団の訓練を見ていた時にイリスが訪れ、まさか騎士団宿舎裏で逢う事になるとは思いもよらず、驚きを隠せなかった。思わずあの時の彼女を思い出してしまったが、その瞳には確たる決意を含んだとても美しい色が見えており、少女から女性へと変わっていたイリスに思わず見蕩れてしまっていた。


 その後彼女から告げられた言葉は、とても力強く美しいものだった。イリスが望むのであれば何でもするつもりだったルイーゼに断るという選択肢は無かったが、身体を鍛えたいと言った彼女の覚悟を確かめるように、何の為に鍛えるのかという問いの答えに再度驚かされてしまう。

 彼女の探し求め、答えを出したその決断に、ルイーゼは全身全霊を以って応えていく。ルイーゼが華奢なイリスに無理なく出来るトレーニングメニューをイリスへと伝えた時、自身がどうありたいかという将来像をイリスに尋ねた際に返ってきた答えに思わず苦笑いが出てしまうも、意思が固いイリスの希望通りに彼女を目指すべき場所への道標(みちしるべ)になるべくメニューを考えていく。

 そんな時、女王エリーザベトにそれを見付けられてしまい自身も考えたいと申し出られ、イリスのための育成計画を共に考え、練りに練っていく。


 まずは基本的な身体能力を向上させることが必須だったイリスには、考えたメニューは少々早計だったかと思いながらも彼女に育成計画書を渡し、以降暫くは彼女の邪魔にならないようイリスに任せて、ルイーゼは騎士達の訓練を続けていく。

 一週間に一度のペースで確認はしていたものの、しっかりと無理なく修練に励んでいく彼女は徐々に体力も付き、並みの十三歳の体力を手に入れられたと確認が取れた頃、ルイーゼは本格的な訓練を始めていった。その内容は基礎訓練ばかりの単純なものであったが、イリスはひたむきにそれをこなしていくも、やはり問題は基礎体力を含む身体能力の方らしく、そちらも怪我をしないように注意してトレーニングを積ませていった。


 季節が変わる毎に変化が見られるイリスに頼もしく思える一方で、短期間で剣術と盾術を学んでしまった事に驚きを隠せなかった。技術に関しては凄まじい速度で学ぶイリスに末恐ろしく感じてしまうルイーゼだったが、修練終盤では何でも吸収してしまうイリスに面白さを感じ、エリザと二人で楽しみながらイリスにあれこれ仕込んでいった。

 全て自分の為に力を貸してくれていると思っていたイリスであったが、実際はエリーザベトと悪乗りしてイリスで遊んでいたようにも騎士達には見えてしまい、彼女の隠された一面を垣間見たような気持ちにさせられていたようだ。


 三月(さんつき)下旬となり修練も大詰めとなった頃、エリーザベトや衆人観衆の中、ルイーゼは愛弟子であるイリスとギルド地下訓練場にある模擬戦場にて対峙する。卒業試験と銘打っているがこれは口実であり、実際はイリスの成長が見たいだけという単純なものであった。それで言うなら既に卒業出来るほどの強さを手に入れることが出来たイリスであったが、愛弟子がどれほどまでに成長したのかを自身の肌で感じたいだけのようだった。そんな彼女が見せてくれた凄まじいまでの成長振りに、思わずうれし涙が込み上げてしまったルイーゼであった。


 以降は楽しくエリーザベトを加えた三人で"森の泉"まで向かい、レスティを連れて食事会を開いて、とても楽しくお喋りしながら食事を楽しむルイーゼだった。


 ルイーゼにとってイリスとは愛弟子であり、大切な家族を失わせてしまった人であり、そして娘のような子であった。子供に恵まれない彼女にとってイリスという少女はとても大きく、大切な存在となっていた。



 ◇エリーザベト・フェア・フィルベルグ

 フィルベルグ王国の現女王。三十六歳。金の髪、金の瞳。

 先王であるクロード・フェル・フィルベルグのひとり娘で、おてんばという言葉が生ぬるい豪快な人。


 眷属事変において、第二防衛線まで後退し戦い続けていた者達を遠くから見ていた彼女は、彼らの士気が下がると分かるやそれを瞬時に行動に移し、自身の檄と共に士気を上げていく。行動と言葉で見せた彼女の檄は絶大なものであり、その様子を見ていた待機組ゴールドランク冒険者すらをもドン引かせる効果を与えてしまった。この件を切欠に彼女は"鮮血の戦姫(ブラッディプリンセス)"から"鮮血の女帝(ブラッディエンプレス)"と呼ばれるようになった。新しく伝説が生まれた瞬間である。その後ルイーゼに、女王である者が最前線で何をしているのかと怒られるも、しれっとその言葉を受け返すエリーザベトだった。


 眷属戦後イリスに与えてしまった衝撃に、己の不甲斐なさに腹立たしく思うも、イリスであれば必ず乗り越えられると信じ、自分に出来る事を続けていく。


 後日イリスが見せた輝きに見蕩れてしまうほどの美しさを見出したエリーザベトは、イリスの為に力を注ぎたいと思うも娘達にそれを阻止されてしまう。というのは表向きの話であり、実際はルイーゼと共に画策し、王女達へイリスがしようとしていることを伝え、あえて辛辣な言葉を告げて王女達を焚き付けた(・・・・・)。後に、その行為はやり過ぎではないかとルイーゼに言われるも、エリーザベトにはそれでも恐らくイリスには届かないと予想していた。それほどの覚悟と意思がイリスにはあり、友人の為にという気持ちではとても届かないだろうと思っていた女王だった。


 無理なく育成計画通りに修練していくイリスとは違い、エリーザベトは彼女達に厳しく接していく。それくらいであってもイリスが上り詰めるであろう世界まで辿り着けないと予想していた女王であったが、イリスが十五歳となる年が明けた際に彼女の成長具合を楽しみにしながら彼女の元まで向かうエリーザベトは、あまりの想定外の事態に思わず口をぽかんと開けてイリスを見つめてしまう事となる。

 恐らくその時点で女王の力すらをも超えた強さにまで到達していたと思われるが、それに甘んじる事無くイリスは更なる高みへと進み続けていく。そんな様子にエリーザベトは娘達ではなく最初から彼女に付いていれば、どれほどの高みに登っていったのかと思いを馳せずにはいられなかった。当然、娘達にしていたような厳しいことなどするつもりもないが、その急成長していく姿を間近で見ることが出来なかったのは、人生最大の過ちだったかもしれないと思えるほど後悔してしまっていた。


 それから一月ほど経った頃、王女達の訓練もそれなりに終わりつつあったエリーザベトは、彼女達に課題を提出し、その時間を仕事に当てると伝えながらイリスの元へと向かうようになっていた。初めは基本的にもう教えることがなくなってしまった彼女達よりも、イリスがどのように成長しているのかを確認するつもりだったのだが、そのうち娘達そっちのけでイリスに教えることが面白くなってしまったようだ。

 そのイリスも目標となる技術の習得を済ませてしまい、さてどうしようかと思っていた矢先、面白半分で槍術を教えた所これを短期間で習得されてしまい、以降はルイーゼと楽しみ(あそび)ながら数々の技術をイリスに教えていく。恐らく使わないだろう技術ですら早々に習得されてしまった彼女たちは、本当に教えることがなくなってしまい、苦肉の策としてエリーザベトは礼儀作法などの一般的な教養にまで手を出していってしまった。イリスとしては誰かに教えを乞うこと自体を楽しみながら修練していたと後に語っている。


 イリスとルイーゼの卒業試験という名のルイーゼの遊び(・・)に、かなり羨ましく思うもエリーザベトはそれを堪え、後にイリスの食事会をレスティとルイーゼを含めた四人で慎ましく楽しみながら過ごしていった。当然娘達は未だ修行中である。

 尚、ロードグランツをこの中に入れてしまうと娘達娘達と騒ぎ立ててしまうために内緒で執り行われていったという。


 エリーザベトにとってイリスとは、愛弟子のひとりであり、未だ嘗て無い程の出来の良い生徒であり、娘達の友人であり、そして三番目の末娘のような存在となっていた。



 ◇ミレイ・ミルリム

 兎人種(うさぎひとしゅ)の女性でイリスの大切な(かぞく)

 身長百六十二センルで真っ白でさらさらなセミロングストレートヘアと鮮やかな赤い瞳に、透き通るような白い肌のとても美しい女性。


 楽天家でとても明るく前向きで面倒見の良い性格。フィルベルグに訪れた危機の際、その凄まじいまでの聴覚を使いこなし、多くの命を救った。


 眷属戦においてその凶悪な殺気に当てられてしまい戦線を離脱するも、大切な妹の為にと立ち上がる。その際、以前から鍛えていた技であるクロスボウに魔力を纏わせて発射するという強大な攻撃を放ち、戦闘に参加していた者達を驚愕させた。

 唯一ロットだけは以前見ていたため驚くことはなかったが、その威力は以前のそれを遥かに超えており、眷属に対し大ダメージを与えることに成功する。


 カーネ村の少女が眷属に狙われた際に身を挺して守るも、彼女自身が瀕死になるまでの重症を負ってしまう。リーサのお蔭で一命を取りとめたものの、既にクロスボウが使い物にならなくなった現状で出来ることは限られてしまっていた。


 それでも皆の力になりたいとミレイは望み、更なる力を手に入れるべく自分に出来る事をする為に決意する。修練をして間もなくリーサはある真実に辿り着く。それは眷属の不死身と思える程の強大な存在として君臨していた秘密の答えだった。

 そして更なる高みに技を昇華させる事が眷属戦における切り札になる、というリーサの考えを体現する形で、凄まじいまでの進化をミレイは見せた。


 目にも留まらぬとは良く言ったものだが、ミレイが見せた技は誰の目にも映らない速度を手に入れてしまった。それは魔力適性がないと本人でも思っていたミレイの力が開花した瞬間だった。


 眷属戦において、その凄まじいまでの実力を見せつけ討伐するまでに至り、仲間を勝利へと導いた者達の中でも中核をなした人物。


 その後、謎の現象により闇の世界と言えるようなおぞましい場所に引きずり込まれるも、自身の力でそれを打ち倒し、彼女を引きずり込んだ原因と思われる現象は完全に消滅するまでに至る。その時の事を知る者は誰一人としていなかった。


 その際の影響か、そのダメージなのかは分からないが、直後急激な速度で瀕死の状況にまで追い込まれ、急ぎフィルベルグまで戻り、薬師で博識であるレスティに助けを求めるも、原因も状況もまるで理解出来ない状態で彼女が出来ることなど殆どなく、レスティの治療も空しく大切な妹の目の前で眠りに就いた。


 彼女が最期に(のこ)した言葉は自分のためではなく、大切な妹に向けてのものだった。


 最期の最期まで戦い抜いた彼女の功績は、後の世にまで語り継がれていき、巨悪と対峙し、臆しても尚立ち上がり戦った勇敢な英雄として、大切な家族を守る為に戦った誇り高き勇者として、そして多くの人命をも救った心優しき救世主として永遠にその名を残した。


 享年十七歳。



 ◇イリスヴァール

 魔法薬店"森の泉"売り子。調合師兼薬師。

 十五歳、人種(ひとしゅ)女性。身長百五十四センル、体重四十二リログラル。ほんのりと青みがかった銀色に輝く美しい髪に少しだけ青の入った銀色の瞳。前髪は眉にかかる程度、左目の真ん中くらいから分けてサイドは耳が隠れ、肩に触れる程度の短さのナチュラルミディアムボブ。とある事件以降、愛の聖女と呼ばれている。


 フィルベルグを襲った眷属事変の最中、自身に出来ることは何も無く、歯痒く辛い日々を過ごす。自分に出来る事を精一杯し続けて来たつもりであったが、その無力さと浅はかさを思い知る結果となる。


 大切な姉を奪ったこの事件に深く関わる事が出来ず絶望に打ちひしがれ、自分に出来た事、出来る事を真剣に悩み考える。降りしきる冷たい雨に打たれながら一晩中考え抜いて出した答えは、結局分からないというものだった。それでも前向きに自分に足りないもの、手に入れるべきものを見据え、絶望の底から立ち上がることが出来た。


 それは()しくも、大好きな姉が最期に残した言葉を追う形となる。


 この事件を機に、イリスは目標となるものをはっきりと見えるようになり、ひたすら前に進む決意をする。背中の真ん中まで伸ばした美しい髪をばっさりと短く切り、心機一転自身を鍛えていく事を強く願う。

 身体を鍛える事については素人のため、フィルベルグ王国騎士団長であるルイーゼ・プリシーラに師事し、その知識と技術を学びながら鍛えていく。ルイーゼから言われ、姉にも言われていた"なりたいもの"という未来の自分の姿を目指しながらその目標の下、ルイーゼとエリーザベトに考えられたイリスの為の訓練法を、日々無理をする事無く繰り返しながら強くなっていく。

 魔法に関しては図書館にある魔法書から独学で学びつつ知識を深めていく。そしてある真実にイリスは辿り着くこととなる。これについては現在まだ仮説の段階ではあるが、イリスは確証を持っているようだ。

 薬師である祖母レスティに教えを乞い、その豊富な薬学と調合学についての知識と技術を学び、次第にそれを習得していったイリスは、調合師と薬師を名乗れるだけの力を得るまでに成長していった。



 十五歳となる年が明けた頃、その片鱗を掴むまでに魔法と技術を開花させ、リーサ曰く、強化型ブーストを既に会得して使いこなしていたルイーゼすらをも驚愕させ、凍りつかせるまでにその能力を昇華させていった。


 以降は剣術と盾術(じゅんじゅつ)を主とした技術を高めていくも、それを早々に会得してしまうと、今度は体術も学んでいく。吸い込む様に技術を吸収していくイリスへ、半分面白がってエリーザベトとルイーゼは、槍術、棒術、混術、杖術(じょうじゅつ)投擲術(とうてきじゅつ)など、あらゆる技術を学ばせていくも、それを真面目に次々と習得していったイリスであった。

 エリザは娘達へ課題を出すとイリスの下に来て、色々と入れ知恵をしていた様だ。その時の時間はとても至福の時間でしたと、夫であるロードグランツに語っている。


 流石に訓練を騎士の宿舎裏でしてしまうと娘達にばれてしまうので、わざわざギルドの訓練場にまで足を運んでイリスを見ていた。

 ギルドの地下に何故かいる女王と騎士団長の姿を見た冒険者たちはびびり、二人から訓練を受けていたイリスの恐ろしい速度で学んでいく姿にびびり、イリスが軽々と手に入れてしまった技術にびびるという光景が二ヵ月ほど続いていくこととなる。


 目標であった四月(よんつき)に入る手前には、イリスは既に並みの冒険者のそれを大きく逸脱する存在となっており、その姿を見続けていた冒険者達は、達観したようにイリスを見つめるも、イリスがまだ本気でなかった事実を知り、その片鱗を見せ付けられた多くの冒険者は、完全に凍り付いてしまった。

 その立派に成長したイリスを満足げにルイーゼとエリーザベトは見つめていた。二人に駆け寄るイリスの姿は、まるで師匠を信頼しきった弟子と、愛弟子を優しく見つめる師匠のそれであった。


 イリスがどれほどまでに強くなったのかをシルヴィアとネヴィアが知ることになるのは、もう少しだけ先の話である。



 年齢表記は眷属戦直後のものになります。今回は討伐組である冒険者達の"その後"のお話は書きませんでした。一人ひとり書いていくと、普通に三話分はお話になってしまいますので端折ったというのが理由の一つです。それでも相当の文字数となってしまいましたが。

 もうひとつは、それぞれ微妙な違いを書いていくと物凄く時間がかかる為に断念しました。四章の時の様な書き方をするとなると、それこそ数日お休みを頂く事になりそうなので、流石に諦めました。

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