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この青く美しい空の下で  作者: しんた
第二章 想いを新たに、世界へ
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"冒険者"というお仕事

 木製で両開きの扉を押して開くと、がやがやとした賑やか声が聞こえてきた。


 室内は木を基調とした落ち着いた造りになっていて、右側に大きい掲示板が3つ、左側は飲食できる場所になってるみたい。トレイを持ったウェイトレスのお姉さんが、笑顔でお酒や食べ物を運んでいる。

 掲示板を前に張り出された紙をじっくり見てる人も多かった。正面に受付が5つ並んでいたので、そのうちの一つに行ってみよう。


 受付にいくと赤い髪にロングのお姉さんが話しかけてくれた。


 「こんにちは。はじめましての方ですか?」


 「あ、はい、そうです。冒険者登録をお願いしたいのですが」


 「かしこまりました。失礼ですが15歳未満の方でしょうか?」


 「はい。13歳になったばかりです」


 「となりますと、仮登録という形になります。いくつか制限はつきますが、特に悪い事もありませんのでご安心ください。それではこちらの用紙に必要事項をご記入していただきたいのですが、文字の読み書きはできますか?」


 「はい。大丈夫だと思います」


 言われたまま用紙を受け取り必要事項を書き込んでいく、とはいっても、書くこと少ないのね。名前と年齢と職業くらいだった。


 「これでよろしいでしょうか」


 と私はお姉さんに紙を渡し、しばらく見つめていたお姉さんが問題ないようですね、と笑顔で返してくれた。職業は無記入だったけど大丈夫みたいだ。


 「イリスヴァールさんですね。はじめまして、本日イリスヴァールさんの担当を勤めさせていただきます、フィルベルグ王国冒険者ギルド職員のシーナと申します。よろしくお願いいたします」


 お辞儀をされたので、こちらこそよろしくお願いいたします、イリスヴァールと申します、長いのでイリスで結構ですよ、と私もお辞儀をしました。どうやらお互いにお辞儀をしてたのを、他の受付のお姉さんたちに見られていたらしく、くすくすと笑われた。かわいいって声が聞こえたので、悪い意味ではなくてよかったです。


 「それではイリスさんとお呼びさせていただきますね。冒険者カードが出来るまでご説明させていただきます。


 冒険者にはランクが設定されており、下から順に、アイアン、 ブロンズ、 シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリルと分けられておりますが、イリスさんは15歳未満の未成年ということですので、先ほども申しました通り仮登録扱いとなります。

 お渡しする冒険者カードは特に変わりはございませんが、ランクを昇格することはできません。これは無理な依頼を受けさせない為の処置とお考えください。15歳になりましたら本登録とさせて頂き、改めて説明をさせていただきます。


 他にも仮登録では受けられる依頼内容に制限がございます。それではあちらにあります掲示板をご覧ください。3つある掲示板は入り口側から、


 『採取依頼・配達依頼・雑用系依頼』

 『護衛依頼・探索依頼・雑用系依頼』

 『討伐依頼・討伐手配依頼』


 となっており、それぞれ別に依頼書を分けさせて頂いております。詳しく説明いたしますと、


 『採取依頼・配達依頼・雑用系依頼』とは、

 薬草・キノコなどの素材を採取して納品したり、王国内で軽い荷物や手紙などを配達したりするものが主になります。その他の雑用系依頼として、店番、飲食店での皿洗い、掃除などの家事手伝い、生産の手伝いなど、力をあまり使わない仕事がこちらにも張り出されます。


 『護衛依頼・探索依頼・雑用系依頼』とは、

 他の街まで対象人物を護衛したり、洞窟やダンジョンと呼ばれる場所の探索、構造などを調査、魔物の生息状況調査などを調べるのが主となり、その他の雑用系依頼として警備、建築物の修理、修繕の手伝い、馬車を使うような重い荷物運びなど、体力や技術が必要とされるお仕事となります。


 『討伐依頼・討伐指定依頼』とは、

 討伐依頼は、フィルベルグ王国周辺で確認された魔物の駆除が主で、常に命の危機に晒されるとても危険なお仕事となっております。無論、報酬金額も跳ね上がるため、とても人気のお仕事ではあるのですが。

 イリスさんはまだ未成年者なので、討伐依頼の受注は出来ない様になっております。同様に護衛依頼やダンジョン探索など、冒険者としての技量が問われるものも、今現在では受注出来なくなっています。


 それと討伐指定依頼ですが、これは魔物の中でも国が定めたとても危険な魔物の討伐のことです。

 これが発令されると緊急討伐対象となり、討伐が確認され安全が確保されるまでは、目撃された付近一帯を封鎖いたします。街に入ることは可能ですが、出ることはしばらく出来なくなります。それほどに危険な魔物が現れた、と認識いただいてかまいません。

 滅多には起こらない事態ではありますが、これが発令されますとギルドや城門の兵士から確認できますので、ギルドで情報を毎回確認しなくても大丈夫です」


 そんな危ない魔物もいるんだ、とイリスは若干青くなってると、街にいれば安全ですよ、と笑顔でシーナさんは言ってくれた。


 「ここまでで何かご質問はございますか?」


 ちょっと気になったことがあったのでシーナさんに聞いてみよう。


 「薬草などの採取は森や草原で見つけてくるようなお仕事ですよね?となると、魔物に対処できないと危ないと思うのですが」


 「はい。魔物を一人で倒せない強さですと、危険かもしれません。お仕事中に後ろから襲われることも考えられますし、街の外でのお仕事はやはりどれも危険はつきものです。

 もし戦闘に不安を感じるようでしたら、護衛を雇って依頼を受けるか、お手伝い系の依頼がお勧めですね。これなら未経験でも受注できますが、生産系のお手伝いなどはちょっと特殊で、ある程度製作のお手伝いが出来ないとお金にならないことも多いです」


 「なるほどわかりました」


 「受付の方もご説明させていただきますね。5つ受付があるうち、この右端の受付から左3つまでが依頼受注と依頼報告の受付となります。掲示板に張ってある依頼書をこちらに持ち込み、冒険者カードを提出していただければ、こちらで受注契約をさせていただきます。依頼書の左上にギルドが推奨するランクが記載されておりますので、それをご参考の上こちらまでお持ちください。

 3つより左の2つは買い取り用の受付となります。爪や牙などの魔物素材を鑑定した後、買取となります。その他不明な素材やアイテムがありましたら鑑定させて頂きますので、もし不明なアイテムがありましたらお持ちください。」


 「不明なアイテム、ですか?」


 「はい。例えばそうですね、ダンジョン探索中に手に入れた装備品、古い時代の遺物、古文書などでしょうか。内容や状態により変わりますが、かなりの高値になる場合もありますよ」


 「面白そうだけど、私戦えないのでちょっと難しそうです」


 「こういったアイテムの入手も危険が付きまといますから、現在のイリスさんにはあまりお勧めできないです」


 と、申し訳なさそうにシーナさんに言われた。私自身戦うことはなるべく避けて行きたいです。そんな事を思ってると、シーナは思いついたようにイリスにある提案をしてくる。


 「そうだ。もしよろしければ魔法適正も見てみますか?どんな魔法が使えるかがわかれば、魔法使いの道も見えてくるかもしれませんよ」


 「魔法、ですか?」


 この世界には魔法が存在するらしい、とは聞いていたけれど。ちょっと興味あるなぁ。


 「魔法については何かご存知ですか?」


 「えと・・・ふしぎなちから?」


そう言って指をあごに当てて首をかしげながら答えるイリスを、シーナはくすくす笑いながら答えた。


 「なるほどわかりました」


 シーナは受付の下から15センルくらいの透明で丸い玉を取り出してきた。台座が微妙に禍々しいんですけど、これ触っても悪いこととか起きない、ですよね?


 そう思ってるとシーナが魔法の説明をしてくれた。


 「魔法には火・水・風・土の4属性があります。適正の属性があれば、それぞれ赤・青・緑・黄の4色で、そのうちのどれかがこの水晶の中で光るんです。

 極々稀に何にも光らない方もいらっしゃるので、そういった方は魔法に適正がないとされています。何らかの色が光れば訓練次第で強い魔法も使えるようになるそうですよ。ささ、イリスさん、こちらに手のひらを乗せてみて下さい」


 どきどきする。私はどんな魔法適正があるんだろう。ゆっくり手のひらを水晶に乗せる・・・が。


 「・・・あれ・・・なんにも現れない?もしかして適性ないのかな」


 と嘆いたところ、シーナさんが水晶をじーっと見てた。


 「あ、ちっちゃいけど、緑色に光ってますよ!イリスさんは風属性ですね!」


 んんー?っと目を細めて見てみるとほんとに小さい、今にも消えそうな緑色があった。


 「わぁ、やったぁっ」


 と喜んでると、他の受付から拍手が聞こえた。ありがとうございます、でもすごく恥ずかしいです。


 「風魔法は攻撃魔法だけでなく、自身を高める補助魔法も使えるそうですよ。時間があったら図書館で調べてみても良いかもしれませんね。ちなみに図書館の場所は冒険者ギルドから噴水広場に出てそのまま真っ直ぐ進み、しばらく行った場所にありますよ」


 図書館なんてあるんだ。暇になったら行ってみよう。



 そんな話をしていると、出来あがったばかりの冒険者カードを、シーナさんは他の女性職員さんから受け取った。


 「さて、冒険者カードが出来あがったようですね」


そう言いながらシーナさんは話を続ける。


 「こちらが冒険者カードとなります。このカードはギルドが保障する身分証であると同時に、フィルベルグ王国が保障する身分証にもなっておりますので、無くさないようにお願いいたします。

 もし紛失された場合は再発行となり、その場合は申し訳ございませんが、大銀貨1枚をいただく事になりますのでご注意下さい。書かれている内容はお名前と職業になります。

 イリスさんのご職業は未記入でしたが、何かご希望のお仕事がございましたら、この場で何か斡旋させていただきますが、ご興味のあるお仕事とかはございますか?」


 「未経験で申し訳ないのですけど、お薬を作ってみたいのですが、そういった内容のお仕事はありますか?」


 「ポーション製作ですね。今調べさせていただきます。」


 とシーナさんが言ったところに、隣にいた受付のお姉さんがシーナさんの肩をちょんちょんして、これなんかいいんじゃないかなと言って紙を渡してきた。


 その紙を見たシーナさんは、うん、と納得したみたいに隣の受付のお姉さんにありがと、とお礼を言ってた。


 「イリスさんにぴったりのが見つかりましたので、こちらをご紹介させていただきますね。」


 見せてくれた紙は依頼書で、



 『 魔法薬製作の為の店番募集


   年齢性別不問、未経験者歓迎


           レスティ 』



 と、きれいな字で書かれていた。レスティさんという方が募集をしてるらしい。


 「レスティさんの所なら安心した職場なのでお勧めですよ」


 と笑顔で言われた。私もすぐに『お願いしますっ』と笑顔で返し、この依頼を受けることにした。


 「レスティさんのお店はギルドを出て右に進み、左側にある"森の泉"というお店です。出てすぐなので迷うこともないと思いますよ。何か他にご質問はございますか?」


 「いえ、大丈夫だと思います。色々ありがとうございました」


 「こちらこそ長時間お付き合いいただきありがとうございました」


 再びお辞儀のし合いと聞こえる小さな笑い声。そしてシーナはこう締め括った。


 「それでは、イリスさんの行く先が輝かしい未来への礎となる事を、心よりお祈りいたします。担当はシーナが勤めさせていただきました」


 お辞儀をするシーナさんに、ありがとうございますとお礼とお辞儀をして立ち去る。


 手には依頼書、ここから私は頑張っていくんだと気合を入れなおし、私はギルド扉を開くのだった。



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