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第七話 侯爵令嬢、魔族軍と相まみえる!?


 翌日、朝早くに私たち5人は北東へ向かって旅立った。

 魔族軍が侵攻してきたノースエンド地方を奪還するためである。

 基本的に私一人で大丈夫だと思うが、勇者や悪魔女あくまおんなが出てくるとやっかいだ。


 5日間ほど馬を飛ばして移動すると、最前線の地域に到達する。

 現状、我が軍は魔族領との境界から50キロほど内側に侵攻されており、途中にあった村や町は全滅し、住民は間に合った者だけ避難したという。


 目標はこれらを元の境界まで押し返し、二度と侵攻されないようにすることだ。



 私たち5人は、最前線の兵士から説明を聞きながら、今もにらみ合いが続いている最前線に立つ。


「ペリーヌ様、ここから見える1キロほど向こうの丘が、敵の最前線です。

 ただ今膠着状態です」


 見ると小高い丘の上に布で覆われた野陣があり、槍の穂先などが見え隠れする。

「あれを叩けば、敵は後退するのですね」

 私が確認すると、説明の兵は丁寧に答えてくれる。

「いえ、あの陣の後方により多くの本隊が控えています。

 本体にダメージを与えなければ敵は撤退しないでしょう」

 ちなみに、敵の本隊はここから10キロほど奥に陣取っているそうだ。


「なるほど……。

 あれは敵の前線基地と言うことですね」

「そうです」

「それならば私が、前衛基地を叩きましょう」


 私は一歩前に出ると敵基地の宝庫上向けて光り魔法『イレイザーブライトフィールド』を発動する。

 この魔法は、邪悪な魂を消滅させると言われているが、どうやら邪悪でなくても生命体から生命力を消し飛ばす効果があるようで、以前召喚前の世界で畑の作物を食い荒らす害獣の鹿に使ったところ、魔物でないにもかかわらずその場でピクリと痙攣してすぐに動かなくなった。

 あとから肉や素材を取るには最適な魔法であるが、消費魔力が大きいため、今まで大規模殲滅に使わなかったのだ。

 しかし、今の魔力量ならあの前衛基地程度は軽く殲滅出来るだろう。


 私の前方60°の角度に渡って展開された光り輝くエリアは、そのまま死の光線となって敵前衛基地を包み込み、そのまま遙か彼方まで拡散しながら進んで行く。


 しばらくすると、敵基地からは生き物の気配が消え、静寂だけが訪れた。



 私たちは早速、敵基地内の捜索に赴く。

 そこには多くの魔物や魔獣が死屍累々のていで転がっていた。

 全滅である。


 素材のはぎ取りは、後続の部隊に任せることにして、その先の敵軍に向かったのだが、『イレイザーブライトフィールド』の効果は私の予想を大きく超えており、その先の敵軍も更に先も、全て全滅していた。


 結局、私の魔法一発で魔族軍は完膚なきまでに壊滅したのである。


 しかし、この魔法に耐えたものが2人だけいた。

 そう、勇者ことアホ王子のヘンリケ・ゴードリアと悪魔女のキャンディー・コルベート男爵令嬢である。


 私たちが国境付近の敵基地を調べているとき、突然二人が斬りかかってきたのである。

「おのれアルテーシア、どこまでも僕たちの恋を邪魔するお前は、この場で剣のさびとなれー!」

 叫びながら突撃してきたのは、身も心も悪魔に感化されたヘンリケ王子その人だった。

 肌の色はキャンディーと同じ青色に変わっており、目は狂人の妖しい光を宿している。


 私はとっさに鑑定する。


 名前 ヘンリケ・ゴードリア

 称号 悪魔のしもべ 落ちた異世界の勇者 落ちた異世界の王子

 レベル 151(成長性A)

 体力  941(成長性B)

 筋力  939(成長性B)

 魔力  481(成長性C)

 速力  935(成長性B)

 知力  145(成長性E)

 スキル 剣技(S段階) 魔法(A段階) 収納(B段階)


 大幅なレベルアップとスキルが強化されている一方で、知性の成長性が著しく下がっているのは、何も考えずに悪魔側についたためだろうか。


 何にしても今の私の敵ではない。

 一応、元の国に帰ったときに、私の冤罪を晴らす貴重な証人なので、死なない程度に痛めつけることにする。


 王子の放ったファイヤーボールをグレイトウインドで吹き飛ばし、上段から斬りかかってくる王子の剣を下段から切り上げて剣をはじき飛ばす。


 あっけにとられる王子のがら空きボディーに正面から回し蹴りをたたき込み、うずくまる王子の顎を下からの掌底付きでかち上げ、脳震盪のうしんとうで王子の意識を刈り取る。立っていられなくなって崩れ落ちる王子の後ろから、悪魔女(悪魔女)が暗黒魔法を放ってきた。


 ダークグレイトボール。

 直撃すれば精神が崩壊し、皮膚は闇に侵食されて崩壊していくという悪逆非道の魔法だが、光魔法を極めた私にはどうと言うこともない。

 無詠唱でアルティメットシャインスパークを放つと、暗闇のボールは消滅し、勢いを失わなかった光線はそのままキャンディー嬢の右腕を直撃して蒸発させる。


「おのれ!

 これでどうだ」

 キャンディー嬢は左手に持ったまがまがしい黒刀を私の右から袈裟切りに振り下ろしてくるが、私は右手のエクスカリバーで簡単に受け止める。


「なぜだ。レベル200を超え、最強の力を手に入れた私が、なぜこんなに簡単に押し込まれる!!」

「あなたが弱いからじゃないかしら」

 キャンディー嬢の問いに端的に答えてあげると、真っ青な顔が紫色に変色していく。

 お怒りのようだ……。


「おのれ、貴様だけは、貴様だけは殺す!!」

 そう叫ぶとキャンディー嬢の中で魔力が爆発的に高まっていく気配がする。


 これは自爆呪文を唱えるつもりか!?


 しかし遅い。

 私は空いた左手で思いっきりキャンディ嬢のみぞおちを正拳突きした。


 目玉がぐるんと裏返り、白眼を向いたキャンディー嬢はそのまま仰向けに倒れた。

 どうやらもくろみ通り気絶したようだ。


 私はポケットから思い出の魔力封じの腕輪二つを取り出すと、二人に1つずつはめて、厳重に縛り上げたのである。







ご愛読ありがとうございます。

次回は帰国予定です。

次回更新は来週の土曜日の予定です。

よろしくお願いします。


ブックマーク、評価いただいた方、ありがとうございました。

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