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第一話 侯爵令嬢、召喚される!?


「アルテーシア、お前との婚約を本日ただ今を持って破棄する」

 現在私は、卒業式に続いて行われるパーティーの会場で、同級生にして私の婚約者、ヘンリケ・ゴードリア第一王子から、婚約破棄を言い渡されている。


 この婚約は、親同士が勝手に決めた婚約であり、当家としては乗り気でなかったが、我がウィンザー侯爵家の剣と魔法の力を王家に取り込みたかった現王室が熱望して実現した約束でもある。

 私個人としてははっきり言って自由が利かない王室に入ることは乗り気ではなかったのだが、理由も分からず婚約を破棄されるのは釈然としない。


 今現在、ヘンリケ王子に愛情を感じているかと問われれば、答えは『ノー』である。


 しかしながら、それとこれとは話が別。

 我が侯爵家の名誉のためにも、私自身の今後のためにも、はっきりさせておかなければならない。


「理由をお聞かせいただけますか、ヘンリケ様?」

 私は落ち着いた声で王子に問う。


「白々しいぞ、アルテーシア!

 お前が嫉妬に狂ってキャンディー・コルベート男爵令嬢に数々の嫌がらせをしていたことは明白だ。

 王家にお前のような悪女を入れるわけにはいかない」


 王子は全く身に覚えのない罪で私を怒鳴りつける。

 ちなみに、キャンディー・コルベート男爵令嬢とは、ただ今王子の影に隠れて絶賛いい子ブリッ子を演じている、ピンクブロンドの小動物的愛らしさを持つ女の子だ。

 その瞳は涙でうるみ、怖がっていることを周囲にアピールするかのようにぷるぷる震えている。


 とは言っても、私はこのキャンディー・コルベート男爵令嬢とほとんど面識がない。

 確かに、同じクラスに在籍しており、名前すら知らないと言うようなことはないが、いつも行動をともにするグループが違うこともあり、会話した記憶すらほとんどないのだ。 もちろんいじめた記憶もない。


「何のことか全く分かりませんわ。

 私がキャンディー・コルベート男爵令嬢に何をしたというのですか」

 私が問うと、王子はさげすんだ目つきで私を見下みくだし、憎々(にくにく)しげに口を開く。


「この期に及んで、まだ認めないのか!

 お前は、私がキャンディー・コルベート男爵令嬢と仲良くなったのに嫉妬し、キャンディーの鞄を傷つけたり、ノートや教科書に落書きしたり、体育館シューズを隠したりしただろう。

 しかも、会うたびに嫌みを言い、手下の令嬢を使って嫌がらせもした。

 そしてとうとう、昨日はキャンディーを階段から突き落としたのだ」


 全く身に覚えがないので正直に言う。

「全くあずかり知らないことばかりですわ。

 証拠はございますの?

 それに、私がヘンリケ様のことで嫉妬するなど、天地がひっくり返ってもあり得ません」


 私が聞くと、王子はあきれたというような表情でいう。

「白々(しらじら)しいにもほどがあるぞ。キャンディー自身が、お前の犯行の証人だ。

 被害者の証言と、昨日階段から落ちたときくじいた足の診断書もある。

 もはや言い逃れはできんぞ。

 衛兵!この不埒者ふらちものを引っ捕らえてこの会場からつまみ出せ。

 アルテーシアには自宅にて蟄居を申し渡す。

 その後、余罪よざいことごとく吟味ぎんみの上、厳しく罰を申し渡す。

 者ども、ひったてい!!!」


 最後の方など、まるでどこかの世界の時代劇のような台詞だ。

 もしかして王子の背中には桜吹雪が舞っているのではなかろうか。

 私はついつい変なことを考えてしまう。


 しかし、事態じたいは思いもかけない方向へと転がり始める。


 王子がそう宣言したのと、王子の足下そっかに巨大な魔方陣が現れたのが同時だった。


『はい!?

 何でしょうか、この展開は……』

 私は全く状況が分からず、動転してしまう。


 私を取り押さえるためこちらへ向かおうとした衛兵も、輝く魔方陣に目を奪われ、完全にフリーズしている。

 もちろん、王子本人もその後ろで震えていた男爵令嬢も、あまりのことに固まっている。


 まばゆい光に囲まれ、目を開けていられない。


 しばらくして、閉じたまぶたを通しても感じられるほどの光が落ち着いたのを確認し、私は怖ず怖ずと目を開ける。


 そこは見知らぬ石造りの大部屋だった。









【後書き】

 読んでいただきありがとうございます。

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