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00. 極秘会談

二章開始です。よろしくお願いします。

 御神竜弥がリディガルードで『存在しない結社』の襲撃を受けていた頃。

 場所は変わって、とある国の小都市。そこに存在する国有建造物の一つで、海外諸国の代表者たちによる極秘会談が行われようとしていた。


 大きな会議室に集まったのは、各国の代表と議事録を書く書記のみ。最低限の人数で秘密裏に進行することになっている。


「それでは、日本国土変異現象国際特別対策会議を始めます」


 議長らしき男が丁寧な口調で、会議の開始を告げた。


「その長ったらしい会議名はどうにかならないのかね? 今聞いたばかりなのに、もう復唱できないのだが?」


 皮肉気にそう鼻で笑ったのは、全世界にその存在感を示している大国の代表だった。すでに首脳同士による緊急電話会談は異世界転移現象が起こった当日に行われており、ここにいるのは、実務を担当する人間たちだ。


「そんなことはどうでもいいでしょう。さっさと本題に入ってください」


 大国の代表に不快感を示したのは、アジアの巨大国の代表である。日本に近い分、事態に対し、より緊張感を持っているようだった。議長は会議室に沈黙が生じた一瞬を見逃さず、会議の進行を再開する。


「みなさんご存じの通りですが、先日、日本の国土の一部が変異現象を引き起こしました。今日はその問題についての対策を検討できればと思います」


 議長の言葉に、他国の代表の質問の手が挙がる。


「日本の行政を遂行する中心地が変異し、日本政府の機能が実質的に消滅したというのは本当でしょうか?」


「ええ。そのような情報が確かに入っています。日本国土が変異した時刻には、ちょうど国会が行われておりました。国会議事堂に議員たちは集結しており、その国会議事堂は変異によって消滅、それはこちらでも確認済みです。また、行政機関の大半とそこに出勤していた職員、および行政を動かす立場の人間たちは軒並み、変異に巻き込まれ消失。現在は変異による消滅を免れた政治家たちにより、臨時政府の設立が行われていますが、なにぶん特別なケースですので、誰が主導権を取るかが法的に定められておらず、指揮系統は未だ乱れております。そのため、自衛隊による国民の救助活動もなかなか進んでおりません」


「この問題を解決するのは簡単だよ、議長。我が大国が救助部隊を派遣しよう。聞けば、国土の半分ほどが変異しているらしいじゃないか。これは大問題であり、早急な対応が必要だ。我が国が日本の臨時政府設立を手助けし、場合によってはその業務を巻き取ることで、事態の収束を図ろう」


 議長の説明に対し、両手を広げてそう誇らしげに言うのは、大国の代表である。

 だが、アジアの巨大国がそれを許さない。


「救助活動については賛成ですが、日本臨時政府の設立にまで口を出すのは内政干渉にあたるのではありませんか? それでは弱体化した日本を乗っ取っているのと変わらないように思いますが」


「人聞きの悪いことを言わないでくれたまえ。私たちは善意で協力を申し出ているのだよ。そちらこそ、私たちが臨時政府設立に関与することを嫌がることで、間接的に救助の遅延を招いているのだと気付いてもらいたいね。いくら私たちの国が日本と友好関係にあるからといって、政治的組織への報告、承認を一切せずに派兵することは叶わないのだから」


 直接殴り合うわけではない。しかし、テーブルの上では確かに戦いが起きていた。海外諸国にとって、ここで立場を明確にし、騒動の最中にある日本にどう関与していくかは大切な問題だった。


「そう言えば、知っているかね? 日本の埼玉という場所も変異をしたらしいのだが、そこには全く別の国家、その王都が存在するようだよ。煉瓦造りの家の数々や王城も存在し、現地人との会話も成立するようだ。そして、その国はリーセアと名乗っている」


 このままだと押し問答になると思ったのか、大国の代表はそうして話題を切り替えた。しかし、アジアの巨大国はその部分をつつく。


「ずいぶん詳しいことまでご存知ですね。日本変異後、現地であなたの国の諜報部員を見かけたという情報が度々ありましたが、どうやら本当のようだ。どこよりも早く、変異した土地の情報を得ようとしているのですね」


「何を仰られる。そんなことはしませんよ。もし変異した土地の近くで、不審な動きをする我が国民を見つけたのなら、それはただの野次馬根性を持っている困った友人です」


「それは大変ですね。では、その詳細な情報はどこから?」


 追撃を緩めないアジアの巨大国。それに対して、大国は余裕の表情で言う。


「私も、野次馬根性のある困った友人を持っているものでね」


 戦いはその後も、緊迫感に満ちたまま続いていった。

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