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俺たちの国に異世界が転移してきた日。  作者: 月海水
第一章 異世界が転移してきた日。
34/59

33. 化け物の集合地点

今回、ちょっと短いです。

その分、明日は長い……! 期待していてくれ……!

「着いた……! 中央管理塔……!」


 息切れを起こしながら、中央管理塔正面玄関をくぐり抜けた竜弥は、運んできたテリアをその場に下ろすと、動悸を整えるため胸に手を当てて、ゆっくりと深く呼吸をする。


 ここ数日、お姫さまだっこで鍛えられたとはいえ、混乱状態の街の中を、テリアを抱えて走り抜けるのは容易なことではなかった。

 錯乱した市民と何度かぶつかったし、近くの建物が崩れてきて道が塞がることもあった。竜弥はテリアを置いた後、すぐにでもユリファを探しに行こうと考えていたのだが、現実的に考えると、ここで休息を取らずに外へ出ていくのは無謀だ。せめて、呼吸くらいは正常に戻さなければ。


「ありがとー。竜弥。助かったよ」


 間欠的に続く激しい揺れ。中央管理塔だけを視界に入れて、ひたすら走っていたため、外が具体的にどうなって、どんな化け物が襲ってきたのかを竜弥は理解していない。

 中央管理塔の一階には、すでに避難した後なのか、職員の姿はなく誰かに状況を聞くこともできない。


 だが、彼が状況把握に動く必要はなかった。


「ウルゥ! ウーウー! キュピッ!」


 竜弥たちが入ってきた自動正面玄関。

 その強化ガラスの向こうには、忘れるわけもない化け物が立っていた。しかも、二体。

 それは、王城魔導品保管庫で遭遇した悪夢の兵器『無邪気な箱』、その胴体部である。


「な、なんであれがここに……?」


「ふぅん。そっかー。敵は『無邪気な箱』を投入してきたんだね」


 床にぺたんと女の子座りをしたテリアは、化け物の姿を見て呑気そうに言う。


「そっか、じゃねえだろ!? ってことは、街の人たちは――」


 竜弥がテリアの方に視線を向け、意識を逸らした瞬間。


「ウルゥ! ウルゥウルゥ!!」


 中央管理塔から少し離れたところに立っていた二体の『無邪気な箱』胴体部は、地面を楽しそうに蹴ってこちらへと走ってきた。その様子は遊び相手を求める幼児のよう。だが、踏み込まれた足は地面を激しく抉り、筋肉質の大脚の瞬発力によって、胴体部は弾丸のように急加速する。


 そして、中央管理塔の正面玄関に激突した。


 ものすごい衝突音がして思わず竜弥は目を閉じたが、建物が破壊された気配はない。おそるおそる目を開けると、正面玄関前に青色の魔魂シールドが発生し、二体の胴体部の体当たりを止めていた。


 竜弥はほっと胸を撫で下ろし、改めて胴体部に目をやって。

 彼の呼吸が止まる。


 すぐ目の前で停止した胴体部。その至る所に、大量の返り血が付着していた。あまりにも多量。まるで何かを踏み潰したような。


 それが示す事実は、一つだ。


 一瞬、頭が真っ白になって、それでも竜弥は意識を保った。いつまでも狼狽えているわけにはいかないのだ。ここは異世界。そして、竜弥は決心した。


 ユリファに守られるお荷物ではなく、一人でも戦えるパートナーになると。


「…………」


 だが、竜弥と違い、テリアは『無邪気な箱』胴体部の大量の返り血を目にして、黙ってしまった。表情は笑顔。だが、硬直したようにまるで変化がない。


「テ、テリア……?」


 竜弥が心配して声をかけても、微動だにしなかった。彼はテリアに近寄ろうとしたが、新しい衝撃が中央管理塔を襲う。先ほどの体当たりとは違う、連続した打撃音だ。


 竜弥が素早く周囲を見回すと、塔外部の地面から隆起した太い腕が、中央管理塔をぐるりと囲み、その全てが展開した魔魂シールドを高速で殴り続けていた。衝撃の間隔は極度に短くなり、そしてただの振動と変わらなくなる。竜弥はその場に立っていることもできずに、大きく尻餅をついてしまった。


「な、なんだ? 中央管理塔を集中攻撃しているのか?」


「……おそらく、敵の狙いは魔魂誘導砲とその設計図ってとこだと思う。だから、中央管理塔を攻めるのは必然だね」


 テリアは静かな口調で竜弥の疑問に答えた。


「なっ……! 知ってたのか、テリア! なら、なんで早く言わないんだ! ここに逃げ込んだらまずいのはわかってたんだろ!?」


 竜弥はいよいよテリアの思惑がわからなくなって、混乱したように叫ぶ。だが、テリアは首を振った。


「ううん。いいの。これで合ってる。私はここに来る必要があったんだよ」


「なに、言ってんだ……?」


 呆然とする竜弥に、テリアはその場にそぐわない、ふんわりとした優しい笑顔を浮かべた。


「本当にありがとね。竜弥」

昨日、気合入れた長めの活動報告書きましたので、そちらもご覧ください。

もし需要があれば、設定についての解説とかもそちらでしたいと思いますので、

何か要望があればどこかへメッセージ残してくれると嬉しいです。

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