全国放送生中継で彼女は歌う。
題名は「放映」だと映画のニュアンスが強くなるので「放送」に改変いたしました。
歌手になる。そう決めたのは、彼が転校して間も無かった。
私は決断したら、歯止めが効かない。
すぐに、ボーカル教室に通いだした。
全ては、彼への「メッセージ」を歌にして、届けたいがためだった。
••••••
夢一途に追いかけ、やっと、メジャーデビューできた。
そして現在、長椅子に座り、特徴的なメガネをかけた名物司会者に質問を受けている。
「高校生の時に好きな人がいて、でも、彼にはそのことを告白できずに他県へ転校して行ってしまったんです。この曲はそんな彼への思いがつまった大切な歌詞が随所に挿入されています。ぜひ、聞いてください」
フレームが黄色いハート形の額縁メガネは、ゆっくりな動作で相槌を、うってくれた。
「それでは、デビュー曲を歌っていただきます。曲名は…
【ポニーテールがエンドロール】」
私は自身の心臓の鼓動がどうなっているのか、気になった。あの別れの夜空を思い出し、胸が苦しくなってはいないだろうか?
左手はマイクを持ったまま、右手はなだめるように胸部をさすってあげた。
大丈夫。苦しくはない。希望が溢れ、力がみなぎっている。心臓が躍動を示すように、ポンプが血液の流動を速めているのが全身の感覚で伝わってくる。
今から、伝えるよ。
あの夜空で、伝えたかった、私の大切な思い。
聴いていて、くれたなたら、嬉しくて、また泣いてしまうかもしれない。