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序
「幸せ」とは何か?
食事を摂ること、友だちと遊ぶこと、言葉を交わすこと、愛する人と共に在ること、趣味に没頭する時間……。その定義は、人によって異なるだろう。
「彼」にとってそれは、「愛する人と共に在ること」だった。
「彼」の愛するその人が存在するという事実、ただそれだけで、「彼」は生きていけるような、そんな心地さえしていた。
――そんなある日、彼らを、ある出来事が見舞った。
それは、広く大衆的には「幸せ」なことであるとされるもの。しかし「彼」にとってそれは、決して「幸せ」なことではなかったのだ。
そうして、「彼」の「幸せ」は、崩壊した。
「彼」は恨んだ。そして考えた。
――自らの「幸せ」を奪うものなんて、すべて壊れてしまえばいい。
「彼」はそうして、胸の内に巣食う「怪物」を解き放った。




