第一話 密室の殺人
ストーンハート領、領主館の最も奥まった場所にある重厚な執務室。
朝日が豪奢なステンドグラスを通り抜け、床に色とりどりの光の模様を描いていた。
それは、英雄ガレスの竜討伐の物語を描いたもので、灰色の石造りの床を鮮やかに照らし出していた。
書斎の壁は、天井まで届く本棚で埋め尽くされ、革の装丁が施された無数の書物が整然と並んでいる。
その光景とは裏腹に、部屋の中は死のように冷たい空気に包まれていた。
暖炉の火は消え、灰だけが虚しく残っている。
空気がひどく淀んでいる。
鉄と血の、そして消えかけた高級な酒の匂いが混じり合っていた。
竜殺しの英雄として大陸中にその名を知られた領主、ガレス・ストーンハートが、冷たく横たわっている。
冷たい床の上に倒れた彼の背中には、鋭利な刃物で一突きにされた、痛々しい刺創が明確に残されていた。
着ていた豪奢な執務服は、流れ出た血でどす黒く染まり、硬直した指先は、何かを掴もうとするかのように歪んでいた。
部屋は、完璧な密室だった。
内側から掛けられた鍵。
ドワーフの工匠が特別に作ったという、複雑な機構を持つ錠前も、しっかりと施錠されている。
分厚い合わせガラスの窓も固く閉ざされ、その錠前にもこじ開けられた形跡は一切ない。
そして、ガレスの傍らの床には、彼自身の血で書かれたと思われる、奇妙なルーン文字が残されていた。
苦悶の中で指先を這わせたように歪み、走り書きされたそれは、朝の光に鈍く、生々しく反射していた。
「ガレス・ストーンハート様が……」
早朝、領主の姿が見えないことに不審を抱き、執務室の扉を合鍵で開けて踏み込んだ治安維持部隊の隊長、ゲルハルトが、青ざめた顔で執政官アルベリヒに報告した。
その声は震え、表情には英雄の死という現実を受け入れられない恐怖と混乱が浮かんでいた。
「馬鹿な……。誰が、一体どうやって……」
アルベリヒは言葉を失い、その場にへたり込んだ。
彼の脳裏に、まず王都への救援要請が浮かんだ。
しかし、その思考は即座に絶望によって打ち消された。
数日前から、王都方面から届く定期報告や商人たちの情報が、この国の惨状を告げていたからだ。
王都へと続く主要街道沿いの複数の州では、原因不明の悪疫「灰涜病」が大流行し、王都は事実上の半封鎖状態にあるという。
さらに、西方の三国同盟との間には紛争が頻発し、王国の精鋭部隊はことごとく西部国境に貼り付けられている。
急使を送ったところで、援軍が来る見込みは万に一つもなかった。
この辺境の領地は、完全に孤立している。
アルベリヒは、この城内で、自分たちの力だけで、英雄殺しという前代未聞の事件を解決しなければならないという、重い現実に打ちのめされた。
アルベリヒは、自らの執務室で一人、頭を抱えた。誰にこの前代未聞の事件を任せるべきか。
(ゲルハルト隊長か?…いや、彼は勇猛で忠義に厚いが、思考が直線的すぎる。この不可解な密室は、彼の手に余るだろう。魔法使いの仕業だと決めつけて、無用な魔女狩りを始めかねん…)
彼の脳裏に、次々と候補者の顔が浮かび、そして消えていく。
この領地には、この難事件を解決できるような人材はいない。
そう、一人を除いては。
アルベリヒの脳裏に、あの冷たい鳶色の瞳が浮かんだ。
カイル・ヴァーミリオン。
(あの男しかいない…)
アルベリヒは、この辺境に左遷されてきたあの若き捜査官が、この一年で解決してきた数々の難事件を思い出していた。
悪霊の呪いに見せかけて、風向きと特殊な香の燃焼速度を計算し尽くした連続放火事件。
施錠された金庫から忽然と消えた遺言状を、インクの成分分析だけでそのありかを突き止めた貴族殺し。
誰もが超常的な力や政治的な陰謀を疑う中、彼だけは常に、現場に残された冷たい「事実」だけを頼りに、人の心の奥底に潜む澱んだ動機を暴き出してきた。
特にアルベリヒの記憶に強く残っているのは、半年前の裕福な商人の密室死事件だった。
内側から鍵のかかった自室で死んでいるのが見つかり、部屋には荒らされた形跡もない。
誰もが「商人に恨みを持つ森のエルフの呪いだ」と騒ぎ立て、無用な種族間の緊張が高まりかけていた。
その時、カイルはただ一人、事件の真相を喝破したのだ。
彼は、誰もが気づかなかったドアの天辺、その僅かな隙間に残された、埃の微細な跡から、犯人が被害者の商う最高級の絹糸を使い、扉の上を通して閂を外から掛けるという、神業のような物理トリックを使ったことを見抜いた。
彼の報告書はいつも、一切の感情や憶測を排し、冷たい事実と論理だけで構成されていた。
アルベリヒは、その人間性を無視したかのような冷徹さに一抹の不安を感じつつも、その底知れぬ頭脳の鋭さに戦慄したのだ。
(カイル・ヴァーミリオン…エレジア王国の士官学校を首席で卒業しながらも、有力な後ろ盾がないために辺境に追いやられた不遇の天才。その出自を揶揄する者も多い。協調性がなく、貴族社会に馴染もうとしない態度は、確かに扱いづらい。だが…)
アルベリヒは決意を固めた。
(常識が通用しない事件には、常識外れの男をぶつけるしかない。これは賭けだ。だが、このストーンハート領の未来を賭けるなら、あの男の頭脳に賭ける以外の選択肢はない)
「カイル・ヴァーミリオンを呼べ!今すぐにだ!」
アルベリヒは側近にそう命じた。
カイルが現場に到着した時、執務室はすでに大勢の者たちでごった返していた。
動揺する衛兵、指示を飛ばす執政官、泣き崩れる使用人。
誰もが英雄の死という衝撃的な事実を前に、冷静さを失っていた。
「全員、部屋から出ろ」
カイルの静かだが、有無を言わせぬ声が響き渡った。
「なんだと、若造!」隊長のゲルハルトが、カイルに食ってかかった。
「貴様、何様のつもりだ!こちらは英雄様の死に…」
「だからだ」
カイルは、ゲルハルトの目を冷たく見据えた。
「敬愛する領主の死に動揺した君たちが、これ以上重要な証拠を破壊する前に、ここから出ていってもらう。これは捜査だ。感傷に浸る場ではない」
「貴様…!」ゲルハルトの顔が怒りで赤く染まる。
「英雄様への忠誠も、悲しむ心もないのか!」
「感傷は真実を曇らせるだけだ、隊長。あなたのその英雄を思う心が、すでに多くの証拠を汚染している」
その冷徹なまでの言葉に、ゲルハルトはぐっと言葉を詰まらせた。
アルベリヒが、疲れたように手で制した。
「…ゲルハルト隊長、彼の言う通りにしてくれ。今は、カイル捜査官の指揮に従うんだ。お前は、その経験で彼を支えてやってくれ」
カイルが何事もなかったかのように冷静に言う。
「現場を荒らすな。これより、私の許可なくこの部屋への立ち入りを禁ずる。アルベリヒ執政官、検死官のエミール、そして…」
カイルは、部屋の隅で小さくなっているリィナに目を向けた。
「君、記録係として残ってくれ。他は全員、外で待機だ」
その手際の良さに、誰もが息を呑んだ。
カイルの登場によって、混乱していた現場の空気が、一瞬にして張り詰めたものに変わった。
カイルはまず、部屋全体をゆっくりと見渡した。
血溜まりの中に横たわる、かつての英雄。
それを見た瞬間、カイルは眉をひそめた。
鉄と血の匂いが混じり合った空気が、彼の記憶の底にある何かを刺激する。
床に広がる血溜まりと、そこに横たわるガレスの姿が、今朝見たばかりの悪夢の中の光景と一瞬重なった。
彼は無意識にこめかみを抑え、その不快な感覚を振り払うように深く息を吸った。
リィナはそんな彼の様子に気づき、心配そうに声をかけた。
「カイルさん、大丈夫ですか?顔色が……」
「……なんでもない」
カイルは短く答え、いつもの冷静な捜査官の顔に戻った。
「リィナ捜査官、些細なことでもいい。気づいたことは全て記録してくれ」
リィナはこくりと頷き、手帳とペンを構えた。
彼女の緑色の瞳は、恐怖を押し殺し、懸命に職務を果たそうとしていた。
カイルの冷たい瞳の奥に、一瞬だけ、深い悲しみのようなものがよぎったのを、リィナは見逃さなかった。
カイルが密室の物理的な検証を始める傍らで、リィナは部屋の中心に立ち、そっと目を閉じた。
彼女には、時折、他の誰にも感じられない、場所そのものが持つ「声」のようなものを感じ取ることがあった。
それは、故郷の農場で、土や作物の機嫌を感じ取っていた頃からの、彼女だけの特有の感覚だった。
今、彼女が感じるのは、この部屋そのものの、深い悲しみだった。
豪華な調度品は、恐怖に凍りつき、石でできた床は、主を失った哀しみに、冷たく沈黙している。
そして、床に広がる血溜まりからは、声にならない、か細い呻き声のようなものが、絶えず響いてくるように感じられた。
「カイルさん…」
彼女は、恐る恐る口を開いた。
「この部屋…なんだか、とても、悲しんでいるみたいです…」
「悲しみは証拠にならない、リィナ」
カイルは、ドアの鍵を調べながら、冷たく言い放った。
「見たものを、ありのままに記録しろ。感傷は不要だ」
その言葉に、リィナは唇を噛み、自らの感じたことを、胸の奥へとしまい込んだ。
カイルは、まず密室の検証から始めた。
「窓は内側から完全に閉まっているな」
彼は窓枠に指を滑らせ、微細な傷やこじ開けようとした痕跡がないかを確認する。
「錠前にも細工の跡はない。このドワーフ製の合わせガラスは、攻城槌でもなければ破壊は不可能だ」
次にドアを調べる。厳重な鍵に不審な点はなく、侵入の痕跡はない。
「暖炉の煙突も、煤で汚れてはいるが、人が通れるほどの大きさではない。壁の石材にも、動かされた形跡はない。床板も…軋み一つないな。人が隠れるような場所も……ない」
彼は部屋の隅で震えている検死官エミールに声をかけた。
「結果は?」
「は、はい」
エミールは臆病な男だったが、検死官としての腕は確かだった。
「ガレス様は背中を、おそらく心臓に達するほど深く一突きにされて、即死です。刺創の角度から見て、犯人はガレス様より背が低いか、あるいは跪いた状態で刺した可能性があります」
「即死、か…」
カイルは呟き、床のルーン文字に視線を落とした。
エミールの言葉に、彼の思考が一瞬停止する。
即死。
ならば、この血文字は何だというのだ。
死者がペンを、いや、自らの指を走らせることなどできるはずがない。
リィナは遺体に近づき、ガレスの指先に視線を向ける。
乾いた血痕が不自然に伸び、床に刻まれたルーン文字へと繋がっている。
「このルーン文字……やはり、ガレス様ご自身が書かれたのでしょうか?」
「その可能性が高い。だが、なぜだ?」
カイルは膝をつき、文字を注意深く観察する。
「エミール、君は先ほど『即死』だと言った。致命傷を負い、即死だったはずの人間が、どうやってこれだけの文字を残せる?もう一度よく調べてくれ。本当に即死だったのか?わずかでも、時間があったのではないか?」
エミールは慌てて遺体を再調査し始めた。
しばらくの後、彼は青い顔で報告した。
「…信じられませんが、刺創の位置が心臓から僅かに、本当に僅かにずれています。常人なら即死ですが、ガレス様ほどの強靭な肉体であれば、あるいは…数十秒、もしかしたら一分近く、意識があった可能性も…」
「一分…」
カイルの目に、鋭い光が宿った。
一分あれば、この文字を残すことは可能だ。
だが、なぜ犯人の名ではなく、この不可解な文字を?
ルーン文字は苦悶の中で指先を這わせたように歪んでいる。
アルベリヒが呼び寄せた領内の解読士も、首を傾げるばかりだった。
「古代エルフ語のようでもあるが、どの文献にも該当しない」
「ドワーフの秘文字にも似ているが、全く違う」
「これは文字ではない、何かの模様ではないか?」と、専門家たちの意見は割れるばかりだった。
カイルは、呼び寄せた捜査員たちに部屋の隅々まで徹底的に調べさせたが、凶器は見つからず、物理的な侵入の痕跡も皆無だった。
彼の眉間に、深い皺が刻まれる。
この密室は、まるで人間の知恵を超えた何者かによって作り出されたかのようだった。
城塞での初動捜査を終え、陽が宙に高く昇った頃。
捜査本部に戻ったカイルとリィナは、壁の地図の前に立っていた。
「……それにしても、完璧な密室でしたね」
リィナが、疲労の滲む声で言った。
「ああ。だが、完璧な密室ほど、裏があるものだ」
カイルは、事件現場の状況を書き出した羊皮紙を見つめていた。
「血で書かれたルーン文字…なぜガレス様は、犯人の名前を書かなかったのでしょう。一分も時間があったのなら、十分書けたはずです。それに、なぜ解読できない文字を?」
リィナは、手帳にびっしりと書き込んだメモを見返しながら、素朴な疑問を口にした。
カイルは腕を組み、思考を巡らせた。
「考えられる可能性は三つだ。一つ、犯人が目の前にいて、名前を書かせなかった。だが、それなら文字自体を残すことも難しいはずだ。二つ、犯人の名前を知らなかった。これも考えにくい。密室状況から考えて、犯人はガレスが心を許した人物である可能性が高い。そして、三つ目…」
カイルはそこで言葉を切り、リィナの方を向いた。
「犯人の名前を書くよりも、もっと重要なメッセージがあった。そして、そのメッセージは、特定の誰かにしか分からないように、暗号化する必要があった」
「暗号…」
リィナは息を呑んだ。
二人はしばらく、これまでに掴んだ情報を整理していた。
カイルは論理的に事実を並べ、リィナは現場で感じた人々の「感情」――ゲルハルト隊長の怒りに満ちた悲しみ、使用人たちの怯え、エミール検死官の専門家としての恐怖――を報告する。
昼時になり、リィナは腹の虫が鳴るのを感じた。朝から何も口にしていなかったのだ。
「カイルさん、少し休憩しませんか? 食堂で何か温かいものでも…」
「必要ない。俺はこれで済ませる」
カイルが懐から取り出したのは、固い携帯食ビスケットだった。
リィナは呆れたように肩をすくめた。
「そんなもので済ませるんですか? こんな大変な日だからこそ、ちゃんと食事をとらないと頭が働きませんよ!」
「食事は生命維持のためのエネルギー補給だ。味や食感は…」
「二の次、ってことですか?」
リィナはぷいっとそっぽを向くと、自分の鞄から母親が持たせてくれた弁当を取り出した。
中には、まだシチューの壺と、黒パン、そして彼女の好物であるベリーのパイが入っている。
シチューのいい匂いが、張り詰めた捜査本部の空気を少しだけ和らげた。
「…仕方ないですね。私の分、少しだけ分けますから。ちゃんと食べてください。これは命令です、カイル捜査官!」
リィナはそう言って、少し乱暴にシチューの皿とスプーンをカイルの前に置いた。
その有無を言わせぬ態度に、カイルは一瞬驚いた顔をしたが、やがて諦めたように小さく息をついた。
「…君の命令権限はどこから来ているんだ」
文句を言いながらも、彼はスプーンを手に取り、ゆっくりとシチューを口に運んだ。
野菜の優しい甘みが、疲れた体にじんわりと染み渡るようだった。
「……悪くない」
その小さな呟きを聞いて、リィナは満足そうに微笑み、自分のパイを頬張った。
その日の帰り道、カイルの少し後ろに付き添うようにリィナは歩いていた。
「カイルさん、今日はありがとうございました」
リィナが、小さく声を絞り出す。
「私、まだ未熟で、現場では足手まといになってばかりで……」
カイルはふと立ち止まった。
振り返った彼の瞳が、リィナをまっすぐに見つめる。
(足手まとい…? 違うな。むしろ…)
彼の脳裏に、現場での彼女の姿が浮かぶ。
怯える検死官エミールに、そっと温かい茶を差し出す姿。
それは非効率で、捜査の本筋とは無関係な行動のはずだった。
だが、その一杯の茶がエミールの心を解き、結果として「ガレスには死の直前に一分間の時間があった」という決定的な証言を引き出した。
論理と威圧だけでは、あの臆病な男からあれ以上の情報を得ることはできなかっただろう。
(なぜこの娘は、こんな状況で他者を気遣える? 俺がとうの昔に捨ててきた感情だ。非効率で、無意味な…だが、そのおかげで重要な証言が得られたのは事実だ。これは…利用できるのか? いや、違う…そういうことではない)
カイルは自分の中に芽生えた奇妙な感覚に戸惑った。
彼女の行動は、彼の理解の範疇を超えている。
だが、否定できない結果がそこにあった。
「君は足手まといではない。むしろ、君の視点には助けられている」
彼の声には、偽りのない響きがあった。
「君は今日、エミール検死官が怯えていることに気づき、彼に温かい茶を差し出して落ち着かせた。そのおかげで、我々はガレスにわずかな時間があったという重要な証言を得られた。私にはできないことだ。感謝する」
リィナは、パッと顔を輝かせた。彼女の表情は、まるで咲き始めたばかりの花のように、明るく変化した。
「本当ですか!? 役に立てましたか?」
「ああ。私は物事を疑い、分解して考えることしかできない。だが君は、人を信じ、繋ぎ合わせようとする。捜査には、その両方が必要だ。これからの捜査でも、君のそういう強みはきっと活きる」
カイルは、小さく頷いた。
そして、ほとんど無意識に言葉を続けた。
「我々は良い相棒になれるだろう」
(…相棒?なぜ俺は、そんな言葉を…)
口にしてから、カイルは自分自身に驚いた。
人を信じないと誓ったはずの自分が、出会って間もないこの娘に、仲間意識に近い感情を抱き始めている。
その事実に、彼はわずかな動揺と、これまで感じたことのない居心地の悪さ、そして奇妙な温かさを感じていた。
カイルの不器用ながらも誠実な言葉に、リィナははにかんだ。
「はい!私、もっと頑張ります!」
その夜、カイルは宿舎の自室に戻ると、簡単な食事を済ませ、再び事件の資料を広げた。
しかし、疲労と、慣れない感情の高ぶりからか、集中力は続かず、彼は知らず知らずのうちに机に突っ伏して眠りに落ちていた。
そして、またあの悪夢がやってきた。
今回は、少しだけ違った。
燃え盛る炎の中、誰かの腕が、必死に彼を何かの下へと隠そうとしていた。
その腕の温もりを、微かに感じた気がした。
カイルはうなされ、汗びっしょりで目を覚ました。
彼の捜査は、まだ始まったばかりだった。