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 ののかが「暑い! 疲れた! もう歩けない!」と癇癪(かんしゃく)を起こしてからは、統吾が背負って歩いた。余りの暑さにスマホを確認すると42度だった。遠くの景色が歪む。

 

 大きな公園が見えてきた。ワックスをかけたようにツヤのある滑り台とブランコがある。それらの近くには大きな噴水がある。まっすぐ伸びる歩道の先には、巨大なスタジアムが聳え立つ。緑色の壁は草木に覆われ、屋根は透明なドーム型をしている。

 

「早く! 早く!」

 ののかは興奮した様子で、統吾の肩を揺する。

 統吾も一気に色めき立つ。撮影したら、ばえるに違いない。


 どこからともなく、男の声が聞こえてくる。毅然(きぜん)とした口調だ。

「こちらは、新人類ユートピア地球共和国です。地球民登録がない方は、これより先には入れません」

 統吾はビクッとして辺りを見渡した。声の主が見つからない。


 統吾は、ののかを背中から下ろした。

「やばっ……戻った方が良くない?」

「ダメ。ママを見つけるの」

 ののかは、仏頂面で答える。


 統吾は腕を組んでいたが、恐る恐る左足を前に踏み出す。安堵の息を吐くと次に右足を動かした。

 爪先(つまさき)に強い電流が流れ、統吾は「ギャーー」と叫び尻餅をついた。「進入禁止」「WARNING」と赤字で書かれた立体映像が現れた。映像が左右に長く連なり、壁のようになっている。


 またしても男性の声がする。

 「繰り返しお伝え致します。地球民登録がない方は、これより先には進めません。更なる侵入を試みる場合は人体に危険な電流を流します。地球民登録の手順はインターネットからご確認ください」


 

「統吾、どうしよう」

 後ろを振り向くと、ののかは溢れんばかりの涙を目に溜めている。

「無理ゲーだろ。これ。」

 統吾は全身を震わせた。


  突然、耳をつんざく怒声が聞こえる。二人は反射的に手で耳を覆う。

 「新人類ユートピア地球共和国は、脳内チップと人類最適化プログラムの義務化をやめろ!」「人類最適化プログラム非適応者への人権弾圧や排除をやめろ!」

 スタジアムに向かい大人数のデモ隊からシュプレヒコールがあがる。

 デモ隊の頭上には巨大な立体映像があり同じ内容が書いてある。デモ隊員達はメタボ体形や白髪の中高年が多く「反UTOPIA」と書かれたヘルメットやゼッケンを身につけている。

 

 デモ隊の行進も壁に阻まれる。どうするのだろう。

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