クローラに会う
ー翌々日ー
昨日は丸一日軽いリハビリをした。(おかげで今日は軽く筋肉痛になっていることは秘密だ)というか昨日に返す約束では?
そして本日帰宅した。お父さんは出張に行っているから迎えがなく、ちょっと寂しい。
で、クローラがものすごく心配していたとお母さんから聞いた。なので早めにクローラに会いに行こう。
* * *
というわけでクローラの家の前までお母さんと来た。その家は私たちが住んでいる家より一回りほど小さく、かなり古そうだ。
お母さんは現在玄関の前に立っている。ただ立っているだけでドアをノックする様子もない。
何やっているの?とか思っていたらドアが開き、アデーラさんが顔を出した。
「あら、珍しいわね〜アリアさんがここに来るなんて。ハンナちゃんはどうなったの?」
「一昨日起きて今ここにいるよ」
アデーラさんはお母さんの指をそって私に視線を落とした。その瞬間顔が明るくなり弾んだ声で言った。
「そう、無事だったのね〜! じゃあクローラを呼びましょう」
「お母さん、呼んだ?」
奥から幼い声が聞こえるとこちらに来る足音がした。
玄関から入る光がその子にあたり、姿が鮮明になる。
女の子は栗色の髪がふわっと肩ほどまで、瞳は少し暗めだがあざやかな青系の色でパチリとしている。身長は私より少々上だがそんなに変わりはない。
彼女がクローラだ。
「ハンナちゃんが来たよ~」
「……ハンナちゃん?」
一歩一歩近づき、クローラの足が止まる。
「幽霊じゃないよね?」
勝手に殺すな!と言いそうになったが飲み込んで「ちゃんと実体だよ」といった。
「よかったあ!」
「イッ!」
クローラは私に抱きついた。かなり絞めてきているので結構痛い。この子こんなに力あるんだ……。思わず「イッ!」と言ってしまったじゃん……。
* * *
少し家に上がらせてもらったのでクローラと遊ぶ。
そんな時クローラは私に言った。
「ねえハンナちゃん、なんか雰囲気変わった?」
「……え?」
突然言われたので私は動きを止める。
「なんかねえ、明るくなったのかな」
「明るく? そうかな」
ははははと軽く笑い、少し考える。
そうか少し明るくなったのか。多分前はもっとしゃべらなくて、今はよくしゃべっているからだろう。
それにしても私は転生者といっていいのだろうか? 断言するにもいろいろ不可解なことがある。私は俺だしわたしであり僕だ。最低でも三人が一人になっていることを単なる転生といってもなんかおかしいと思う。
つまり、私は誰? ということだ。
まあそんなの考えたって答え出ないからどうでもいいか。
昼の鐘が鳴りクローラの家からさよならする時、クローラが私の肩をトントンと叩いた。
「ハンナちゃんハンナちゃん、お昼ご飯食べたあとクラリの店へ来れる?」
首を傾げつつ、クローラは私に聞いてきた。
それは私独断では決められないな。お母さんに聞いてみるか。
「お母さん、午後にクラリの店の行ける?」
お母さんは私に振り向き、「うん、いいよ」と答えた。
「ということだから行けるみたいだよ」
「よかった、じゃああっちで待ってるね」
私は「うん、じゃあまた午後に」と返して自分の家へ帰った。
……ちらっと聞こえたけど、クローラがアデーラさんに”午後って何?”て聞いていた気がする。
* * *
というわけで午後にクラリの店へ訪れた。クラリさんは店前を掃除していた。
「んっ、お帰り(笑)。クローラちゃんはもう来ているよ」
「笑わないでください!」
確かに起きてからの時間の割合考えるとクラリの店が一番長くいたけど家じゃないわ!
店の中に入るとクローラがペタンと女の子座りして待っていた。
「クローラ、来たよ」
クローラはこちらへ振り向き私を見ると、ぱあと顔を明るくさせて返事した。
「ハンナちゃん! ……いまあたしをなんて呼んだ?」
「え? クローラって呼んだ……」
あっ。普通に呼び捨てにしちゃってるじゃん。
てか、倒れる前はちゃん付けじゃん。
……まあ、しゃあないか。今クローラのジト目がすごく刺さって痛いけど。あ、そうだ!
「じゃあクローラも私をハンナって呼んで?」
「えっ、すごくなんて言うか……」
背徳感があるんだね? わかるよ? 小学校から中学校に上がって異性の子呼ぼうとしたときとかすごく悩んだし、背徳感味わったからね。( 藤音 と 会 は田舎育ちで小学校から中学校はほぼエスカレート)
「なれたら気にならないし私が良いて言っているんだからまずは一回やってみて?」
クローラは小さな声で「ハンナ……?」と言った。うん、かわいい。
「って、そんなことはどうでもよくて、ほら一緒に行くよ!」
クローラは勢いと大きな声でごまかした。そして私の手を取り、そのまま引っ張ってクラリの店をあとにした。
「ねえ、どこに行くの?」
「近くの広場でみんなが待ってるから!」
近くの広場で……みんな?