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7歳の誕生日に

 魔法の基礎を教えてもらった日からだいぶ経った。といっても季節が変わるほどは過ぎていい。今は冬の寒さのピークが過ぎるだろうかというところだ。特に変わったことはなくいつも通り(毎日どこかの家が燃えつつ)日常が過ぎていく。


 だが、今日は特別な日だ! 私の誕生日なのだ!


・・・・・・本当に正確かどうかは知らないが。一日が長いからみんなアバウトなんだよなあ。


 この世界の暦はどれほど正確なのか気になるところだ。(魔術があるしそこそこ正確だと思う)

 ついでに言っておくと今日は地球の二月くらいだと思う。南半球だと八月くらいだろうか。たまたまだと思うけど藤宮(ぼく)と同じ月なんだよなあ・・・・・・。(二月生まれ)


 この世界は人の生誕をかなり重要視する傾向がある。・・・・・・が、私の住んでいる地方は例外に入る。



 例外に分類される。うん。



 以前クローラが誕生日だった時、クラリさんと私が「誕生日プレゼントに何が欲しい?」と言ったらクローラが「えっ、誕生日プレゼントって何?」と言われた。


 これは誕生日プレゼントという言葉がわからないのではなく、誕生日プレゼントをするという習慣がないからだと後で判明した。



 誕生日なんて祝わず働けということだろう。私の両親はこの地域出身じゃないのでちゃんと祝ってくれると思うが・・・・・・。





 *  *  *





 と、つらつら述べているがこれは朝に目を覚ました瞬間に考えていたことである。つまり朝食を食べていないどころか今はベッドから体を起こしていない。


 なのでサクッと起きて顔を洗って髪をちょいちょいっとしてからリビングダイニングに出る。


「おはよう、それと誕生日おめでとう」


「おはよう」


 すでにキッチンにはお母さんがたっており、忙しなく朝ご飯を作っていた。暖炉には火が入っており、ぱちぱちとはじける音が聞こえる。


 私は暖炉に手を向けて温まる。あまり寒く感じていなくてもやはり火のぬくもりは気持ちいい。

 そんななか、私はちょっと考えていた。(というか考えていることしかすることがない)


 ・・・・・・これはTS転生でいいの? でも藤音(わたし)にとってみれば性別変わってないし。・・・・・・そもそも転生してこの体に宿ったなら、もともと宿っていた自我はどこ行ったの?


 もしさ、もともとの自我が、私という存在を自分で認識する前に死んでいるなら、とっても申し訳ないなって思う。


 吉松(おれ)藤音(わたし)藤宮(ぼく)も死を経験しているから言えるけど、自分のもともとの体が死んだはずなのに誰かに代わって勝手なことしているとか、宿っている人がちょっと許せないもん。安らかに眠らせほしいって言いたくなる。


 そんなこといちいち考えていたら生活できないけど。考えではそう思って、心では思っていない、私の中ではよくあることだ。


「ご飯できたよ」





 *  *  *





 朝ごはんを食べ終わってすることした後、お母さんに言われてクラリの店に行った。


「ハンナちゃん誕生日おめでとう!」


 入った瞬間、”パーン” とクラッカーと共にクラリさんに祝われた。ってこの世界クラッカーはあるんだ・・・・・・。



 と思ったが魔術で爆発していたらしく周囲に魔術使用後の特徴的な魔素が残っていた。世界を超えても爆発音は祝いに使われるんだね。



「というわけでプレゼントだよ。エルザ」


 クラリさんに呼ばれたエルザさんは小さめの包みを持ってきて、私にくれた。


「中見ていいの?」


 クラリさん、エルザさんそろってコクリとうなずいたので、丁寧に包装を解いていく。




 あ、マフラーだ。しかも手編みっぽい。(いや、この世界じゃ手編みしかないか)


 実際に使われるかどうかわからないけど、人からプレゼントをもらうって心温まるなあ。


「クラリさん、ありがとう!」


 私がお礼を言うと二人とも微笑んだ。



  *  *  *



 クラリの店から自宅に帰る途中でルカくんを見つけた。向こうが先に見つけたらしく、目が合うと「ハンナちゃん?」と呼びかけられつつこちらに近づいた。


「ハンナちゃんここで何やってるの?」


「何って、お使いに行っていただけだよ」


「へえー」


「あと、私今日が誕生日だからマフラーをもらったよ」


「ふーん」


 うん、やっぱり反応薄いよね。駄目だよ? 女の子の誕生日大切にしようね?


「そっちは何してたの?」


 私がそう聞くと少し間を開けてルカが、


「・・・・・・実はかくかくしかじかで」


「それ通じると思った?」


 私たちはクスクスと笑う。現実でやられると実に滑稽だ。



 私は目を瞑って笑っていたのでそっと目を開けてルカを見ると、

「・・・・・・」

 彼は優しく、明るい顔になっていた。

 そしてその奥に見え隠れする切なさに私は言葉を失った。


「おれ、引っ越すんだ。だから会えるのは多分・・・・・・三回くらいかも」


 登場回数は少なかったが、一応半年くらい(?) の付き合いだ。そのことを突然言われるとやはり心にくる。


「・・・・・・そっか、じゃあ・・・・・・」


 その先の言葉が出てこない。“またどこかで会えるといいね” とか “いつか会おうね” とか寂しいことを言うのはなんか気が引ける。かと言って味気ないのもいやだ。



 しかし決める前に口は反応する。



「死なないでね」


「戦いに行くわけじゃないのに何言ってんの?」


 その通りだ。なんでこんなこと口走るんだよ。拳銃があったら自分の口を撃ちたい気分だ。私もどうしてこう言ったか知りたいよ。


 だが自己嫌悪で悶絶している私の心はそう簡単に折れたりしない。私は図太さが売りだと思うからだ。





 そして必死に考えて返したルカの言葉はこうだ。




「再び会う時までに死ぬなんてありえないよ」


おまけ1

作者:「う〜ん、ルカ引っ込ませるか。今まで何回登場していたっけ」

    カチッカチッ(クリック音)

   「あれ一回もしゃべってなくね?」


と、言うことでしばらくは全面改稿で新規投稿をお休みします。

魔術教室の部分が増えると思います。ケイドロ1話に収められるかなあ・・・・・・



おまけ2

登場人物の誕生日(12,1,2()3,4,5()6,7,8,()9,10,11())

冬:ハンナ、エリサ、

春:ライタル、

夏:マリオ、ルカ、クローラ

秋:フリップ、ハルトムート、ルッツ


思い出した順で書いています。書かれていない人は不詳、もしくは未確定です。

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