魔術教室
翌朝、練習していた場所の隣にある建物に入った。味のあるログハウスで平屋建てになっている。街の端っこに存在することもあり、かなりの敷地面積で建物が大きい。
昨日確認したがあの建物は先生の家も兼ねているらしい。なので今後はこの建物を先生の家と呼称することにした。
で、どっちから入るの?
先生の家には玄関が二つある。おそらく一つのほうがこの魔術教室の玄関だろうがどちらもドアの大きさやデザインは同じ。わかりやすい看板もないので本当にややこしい。
そう悩んでいると後ろからドンと押された。
振り返って押した人をよく確認するとクローラだった。
「クローラ?」
「もう!なんでびっくりしないの?」
ごめんごめんと謝る私。それに対して”次は驚いてよ?”とクローラは言う。
そういわれても驚かないものは驚かない。しかもさっきはクローラの体の一部が視界に入っていたので来るなと予測していた。
ふっふっふ、詰めが甘いよ?クローラ。
「で、ハンナはここで何してたの?」
「いや、あのドア、どっちから入ればいいのかなって」
私はそう言って先生の家のドアを指差す。
「ああ、左だけd・・・・・・あれ? もしかしてハンナも魔術習うの?」
「ってことはクローラもここで魔術をやってるんだ」
へぇーと同時につぶやく私たち。その後ろからタッタッタッタッと軽快な足音がこちらに来る。
振り返ると手を振って近づく黒髪の男の子がいた。
「よお、クローラちゃん。そいつは誰だ?」
「おはようマリオくん。この人はハンナ、あたしらと魔術をやるんだって」
クローラがそういうと男の子が私の肩に腕を回して言った。
「そうかそうか! おれぁマリオっていうんだ。仲よくしような!」
割とノリが良いらしく、性別関係なくかかわれるらしい。(幼いねえ)
いつも一緒に遊んでいるライタルたちにこういう雰囲気はない。なのでマリオくんといるとライタルたちとは違う楽しさがありそうだなと思った。
「こんなところで話さずに中で話そうぜ!」
マリオくんはそう言って先生の家の左のドアへ向かった。
* * *
中に入るとすぐに香ばしい木の匂いに包まれた。内装も木の味を存分に生かしたデザインをしている。
「まだだれも来ていないみたいだね」
クローラがそう言った。教室内は閑散としており、入ってくる光も今日は少ないので暗い。
直後に扉が開き先生が入ってきた。
「お、来たか。あと来てないのは・・・・・・2人かな」
「あ、先生今日はルカくん来ないってさ」
マリオくんが適当なようにいう。
それに対し先生はふ〜んとうなずいて続けて言った。
「じゃあ、あとはエリサだけだね」
ちょうどドアが開き女の子が入ってきた。
「これで今日は全員だな、それじゃあ今日の魔術教室を始めるぞ。まず新入り、ハンナだ」
すっと私に視線が集まる。
この感覚になれないなあ。前世も同じことをやったことあるけど・・・・・・。
「というわけで、新入りもいるし復習からするぞ。まずは・・・・・・」
* * *
この世界の魔術には四つの属性がある。
昔は五つあったらしいが、140年程前に現代魔術の基礎を作り上げた魔術の母 エレナ・ミスレイ が空と風の属性を一つに統合し四つにしたらしい。
それが四大元素だ。前世のルネサンス期 以前に主流となっていた四元素と理論はほぼ変わらない。
私たちの時代では魔術にこの四大元素を使う。(様々な物質にも四大元素を使う)
例えば土壁を立てる・像を魔術で立てるとき、まず地面に水属性の魔術を与え湿らせる。造形した後は火属性の魔術で乾燥させ固める。 このように複合的にいろいろ属性を組み合わせていくとほとんどのことができるという。
それでは次だ。
魔術の発動に必要な情報は二つ、術式と演唱だ。それぞれの特徴はこう。
術式:円と何かしらの図形(六芒星など)
演唱:特殊な言語
それぞれは話すか描くかの二つの違いしかない。
そのため、やろうと思えば演唱全振りにしたり出来る。ただ最速の発動をするなら両方やってしまう方がいい。現在の基本的な発動方法も両方を混ぜるのが常識となっている。
* * *
「・・・・・・とこんな感じだが、やらなきゃ始まらないので今日は実践の日だ」
といって連れて行かれた場所は先生の家の裏庭だ。
・・・・・・いや、訓練所と言った方が正確だろう。ところどころ庭らしさがあるが奥に的がある。
「ハンナちゃん、今日から覚えてもらうのは数個の術式だ。一つ一つ見せるから覚えてくれ」
いきなり見て覚えろと言われましても・・・・・・
そして全員に向き直し爆弾を落とした。
「それと、来週は模擬戦をやるからしっかり練習しろよ」
「「・・・・・・え?」」←私とクローラ
「まじか」←マリオ
「そんなの聞いてないですよ⁉︎」←エリサ
「今言ったからなあ」
先生ってこんな一面あったんだ・・・・・・と思った次第だ。