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め ん ど い

1ヶ月がたった。と言ってもほとんど変わらない生活だ。

変わったといえば・・・


「・・・あっつい」


夏が到来である。

この土地の気候を補足すると基本的には地中海性気候と言っていい。が湿度が一定以上あり石に囲まれた家でも少々“もわ〜ん”となんてしまう。ついでに言うとこれは感覚になってしまうが地球より1日が長い。

つまり加熱される時間も長いので・・・


「・・・あっつい」


「文句言ってもしょうがないよ」


お母さんから突っ込まれたがそう言われてもとしか思えない。

まだ太陽は上り切っておらず、洗濯を今やり始める人もいるくらいだ。

なお私たちは室内に水を持ってきて室内で洗濯をしている。水がこぼれても問題ないところが家の中にあるって楽だね。


全てのものを洗い終え、外に洗濯物を干す。

外に出た瞬間にヒリヒリと皮膚を焼き付けていく。


「ぐへぇ〜、あ〜ぢ〜」


軽く通勤通学しているだけで真っ黒になりそうな日差しだ。これが遅めの朝の時間帯だと言う事実にさらなる憂鬱を感じた。

さっさと干し終わって室内に戻りたいが動こうとするたびに手足に重りが追加されていくように感じる。


なんとか干し終え、室内に戻るとお母さんが、


「ふー、あついねぇー」


と言った。

しかし、助けになってくれるものはうちわみたいなもの程度。こうゆうときに野良で氷の妖精が見つかればいいのに。

・・・馬鹿でいいから。


「お母さん、魔術でなんとかできないの?」


「できるけど?」


「・・・え、できるの?」


「できるよ?」


できるんだ。

さっさとすればいいのに。


「なんでしないの?」


「一つは国が止めているんだよ」


なぜ国が止める!?


「やっぱりそうゆう顔になっちゃうよね。ほらほら眉間に皺が寄っているよ?」


お母さんは私の眉間を広げようとグリグリしつつ説明をし始めた。


「温度を下げる魔術は最初のほうでやる簡単な魔術なんだけど魔素をかなり使う。魔術があること前提の生活をしている私たちには影響が出る可能性がある。ていうことを国が説明しているよ。でも・・・」


「でも?」


お母さんは半目で視線を横にずらしつつ言った。


「魔道具を販売するためにやったって言っている人が多いよ」


ああ、なんかよくありそうなことだなあ。


「そして二つ目」


膝を折り、視線を合わせて言った。


「 め ん ど い 」


これでもかというほどの笑顔でそう言われたので、すぐに反応できる人はそういないだろう。

スローペースで強調されているのでなおさら私の思考を停止させた。

数秒ほど沈黙が続き、その間にもドンピシャで虫の鳴き声が響くので完全に雰囲気が完成している。


「・・・めんどい?」


我慢できなくて切り出した弱々しい声で私が言うと、「そう」とお母さんが返事した。


「だってずっと魔術を維持しなきゃダメじゃん。めんどいに決まってるでしょ?」


その逆ギレに近いような言葉に私はなんともいえなかった。



──────────────────────────────────



この世界にもシエスタが文化として根付いている。ていうか昼休憩の時間は長いのにその上で夏はさらに長い時間は外に出るなと国に言われている。(昼休憩が普段2時間ほど。夏場は移動規制で4時間に)

これを地球のブラック企業の人に見てほしいと思うところだ。


その休み時間を過ぎた後はクラリの店へ行った。

ドアを開けるとクローラが女の子座りで人形遊びをしている。


「やっほークローラ」


「あ、ハンナ!」


「最近魔術の勉強は捗ってる?」


するとクローラが口を尖らせて、


「あんな難しい物できないよ。毎回毎回術式と理論しか叩き込まれなくてもう、うんざり」


と言った。

術式があって成立する物なのにそれを拒否しちゃあ元も子もないじゃん。


「でも基本的なものはできるからそこまで困らないと思うけどね」


するとクラリさんが、


「基本的な生活でも魔術の基礎がしっかりできていたらあっという間にお金を稼げるけどね」


と笑いながら言った。


「今日も何か一つ見せてよ」


わかったとクローラが言うとうーんと考え始めた。


冷却魔術(冷たくするヤツ)でいいんじゃない?今日は暑いし」


ちょっと待ってね、とクラリさんが言うと奥に引っ込みしばらくして木桶の水を持ってきた。

水に触れたところかなりぬるかった。


「これを冷やすのね?」


それじゃあいくよ?とクローラが言うと水に手をかざす。

水面上では始めは円、その次に幾何学模様と段々と映し出てきて魔法陣のような図になる。

そこに吸い寄せられるように、陽炎(かげろう)のようなものが集まった。


以前にもクローラの魔術を見たが、どんなものにもこの陽炎(かげろう)見たいのが出ていて術式(魔法陣みたいなもの)に吸い込まれていた。

そしてケイドロの時、フリップが足元にもやもやを出していたがそれと同質のものに感じる。

おそらくこれらが魔素と呼ばれるものなのだろう。


数秒ほど経過し、映し出ていた術式が消滅。

水に触ってみると程よく冷たいものになっていた。


・・・が表面上だけで深いのところは冷えておらず、かき混ぜると本当に微妙なぬるさ冷たさになってしまった。


頭の中でお母さんの声が再生される。

『 め ん ど い 』

使い勝手の悪さも含んでいたかと肩を落としながら思った。

ハンナの母:マリアは実は専業主婦ではないが事実上専業主婦。

というのも1日が長いので専業主婦になっても暇。この世界にいる子持ちの女性は基本的に働いている。

(つまりこの世界の住人から見るとマリアは無職)


《データ》

1日28時間 睡眠時間は9時間が普通 朝昼でそれぞれ4時間ほど

(現地の人はとてものんびりですねぇ)

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