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出張先での話

心が死ねばやがて身体も後を追うのだろう

作者: 穂高貴志

詳しく書くと特定されるので、色々丸めてあります。

タイトルが意味不明と不評だったので変更しました。

「……そう言えばKさんの話は聞いた?」

 しばらく縁の無かった客先で、数年ぶりに会った担当者が雑談に紛れて訊いてきた。


 Kさんは数年前、奥さんの浮気が噂になっていた人だ。

 浮気の現場をKさんの同僚に見つかってしまったのだ。

 しかも運の悪い事にそいつは考え無しの馬鹿だった。

 馬鹿は誰彼構わず言いふらした。

 皆はKさんが会社を辞めてしまうのではと心配したが、Kさんは辞めなかった。

 逆に会社から帰らなくなった。

 奥さんが来ても面会を拒否し電話にも出ず、会社の仮眠室に泊り込み、会社に引きこもってしまったのだ。

 家族縁の薄い人だったので辛過ぎたのかもしれない。

 当時、Kさんは家に帰れなくなってしまっていた。


「……そんで会社から仮眠室追い出されて、最初ビジホ泊まってたんだけど、金かかるからって☓☓町のネカフェから通ってたんだけど。

 去年の夏にネカフェで孤独死だよ」

「うわぁ、それは……」

「朝、店員が見つけて、会社に連絡来たけど御遺体は奥さんが引き取った」

「Kさん御両親もういらっしゃらないとか聞いた様な……」

「うん。

 親戚もいなかったらしくて、奥さんが喪主やったらしい」

「らしいって……」

「家族だけで葬式出すから 弔問は遠慮してくれって会社に連絡あって」

「家族だけったってKさん子供いませんでしたよね?」

「それでよ、後で部署の連中と墓参り行ってみたらよ、お墓にKさんの名前無いのよ」

「はあ?」

「いつの間にかアパートも引払われちゃってるし、奥さん連絡取れないからもう何がどうなったんだか」

「え?

 奥さん引っ越してなかったんですか?」

「ここいらど田舎だから相当肩身狭かったと思うんだけどな」

「パートとかも厳しそうですよね……」

「Kさん給料家に入れていたらしい」

「……独身の俺には色々解んないです」

「俺だって解んねえよ」

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