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67.就寝

 入室の許可を出すと、ドアを静かに開けて姉さんが入ってきた。


 姉さんは自室で寝るときはちゃんとした寝巻に着替えるようで、いつもはサイドにあげてあるかポニーテールにしている髪も下ろしており、服装も風呂上がりのゆったりとした格好ではなく、薄ピンク色をした薄着のシャツと短パンという格好の寝る準備が整っている状態だった。


 ――両親の部屋に来るときは風呂上がりの格好だったんだけど、自室ではちゃんと着替えてたのか。まぁ父さんも風呂上がりのラフな格好で寝るし、俺もそのつもりだったんだけど、母さんは別の寝巻に着替えてる時もあったしな。俺がいるから際どすぎる薄着なものは流石に着なかったが、子供たちがいないとなったら着てるだろうな……まだ小さい頃に俺を抱いたままクローゼットに行くから、その中にあったの見ちゃったし……


「なんかカーリーンの部屋涼しいわね?」


「さっきリデーナが空気の入れ替えしてくれたからじゃないかな」


 姉さんはキョロキョロとまだなにもない俺の部屋を見ながら、先程使った冷却魔法の影響で少し下がっている室温を不思議に思っているようだ。


「そう? 私の部屋もやってもらったけど、こっちの方が涼しい気がする」


「ね、姉さんは一度廊下を通ってきたから、そう感じてるだけじゃないかな?」


「それもそうね?」


 ――あぶねぇ……魔法の練習してたこと自体は姉さんにバレるのは別にいいんだけど、まだ教えてもらってない冷却系の魔法を使ったってバレると面倒だもんな……


「それでどうしたの?」


「え、カーリーンが1人で寂しくないかなぁって思って」


「別に平気だけど……」


「それならなんでまだ起きてるのよ。部屋の照明もつけたままだし」


「それは~……」


 魔法の練習をしていたと言っていいものかと悩んでしまい、返答が遅れる。


 ――正直に言ってもいいんだけど、自分の部屋を貰った初日からそんなことをしてたと知られたら"やんちゃな子認定"される可能性があるからなぁ……まぁすでに魔法関係ではやらかしてるから手遅れかもしれないが、あんまり心配はかけたくない……


「ほら、寂しくて眠れなかったんじゃないの?」


「そ、そうかも……」


 確かに1人になった瞬間、思ってた以上に静かに感じてしまったので、寂しいという感情が皆無だったとは言えない。


「ふふ~ん。やっぱり寂しかったんじゃない。仕方ないわね~」


 姉さんはすごく上機嫌になってニマーっと笑うと、ソファーや椅子を素通りして、俺のベッドに腰かけて隣に座れとばかりにポンポンと布団を叩く。


「いや、本当に1人で大丈夫だって」


「遠慮しないの、ほらおいで。今日は一緒に寝てあげるから」


「遠慮なんて……」


「ほ~ら!」


 こうなってしまった姉さんは俺だけだとどうしようもないので、諦めて隣に座る。


「えへへ~。寂しくなってすぐに私の部屋に来るかもって待ってたのに、カーリーンったら来ないんだもん」


 隣に来た俺に抱き着いてきた姉さんは俺より身長も高いため、顎を俺の頭の上に乗せた状態で少し拗ねたように文句を言う。


「いや、寂しくなったとしたら母さんの所に行くよ……」


「え~、なんでよ。私と寝ようよ。カーリーンと寝るためにお母さんたちの部屋にちょくちょく行ってたのに~」


 ――姉さんがたまに両親の部屋に寝に来てるのは、そんな理由だったのか……アリーシアさんが来てからは、俺にくっつくことも減ってきたと思ってたのに……


「しょうがないなぁ……そこまで言うなら今日は一緒に寝ようか」


「やった! ってあれ? 寂しくなったカーリーンが私と一緒で喜ぶはずが、なんで私が喜ぶ側に? 立場変わってない?」


「変わってない変わってない。ライト消すよー」


「は~い」


 今から姉さんを自分の部屋に帰るように説得するよりは、今日は一緒に寝た方が気力を削らずに済むという結論に至った俺は、部屋のライトを消して姉さんの隣で横になる。


 ――う~ん。姉さんが来ちゃったし、今日は魔法の練習は無理かなぁ。まぁ出来るだけ魔力は消費しておくけど。


 そんなことを思っていると、姉さんが掛けてある布団をめくってバサッと掛けてくる。


「ほら~、風邪引くよ」


 夏場でも掛け布団は欲しいタイプなので、かけられた薄手の布団を顔にかからない程度に下げて整える。


 ――まぁ、枕は取られてしまったが……多分この先も姉さんは来るだろうし、抱き枕が欲しいとか言って、もうひとつ用意してもらおうかな。


 モゾモゾと頭の位置を調整していると、姉さんが俺の頭部を抱きしめるように引き寄せる。


「ムガッ。姉さん、流石に苦しい」


「えへ~。久しぶりにカーリーンを抱いて眠れる~」


「俺は抱き枕じゃないんだけど……」


「知ってるわよ?」


 時々両親の部屋で一緒に寝ていた時も、間に子供たちが挟まれる並びだったため、たまに抱きつかれていた。


 しかし姉さんが来たときは母さん側に姉さん、父さん側に俺が寝ていて、母さんも姉さんと寝られるのが嬉しいからか、よく姉さんを抱いて寝ていたので、毎回俺が抱きつかれていたわけではなかった。


 ――この抱き癖は母さん譲りなんだろうなぁ……ベビーベッドから解放されて、一緒に寝るようになってからは結構抱きつかれてたし。母さんや姉さんにこそ抱き枕が必要か?


 なんとか姉さんに力を緩めてもらい、苦しくないように顔を離すと、いつも見ている元気いっぱいの笑顔ではなく、母さんのような優しい笑みを浮かべた顔が見えて、少しドキッとした。


 姉さんの目つきは母さんより父さんの方に似ているが、親子なだけあって同じような表情をするとやはり似ている。


 もしも記憶が戻ったのが最近だったら、今以上にドキッしていて、悟られないように平常でいられなかったかもしれない。


 ――目元が父さん似だからか、年齢より大人っぽく見える時があるもんなぁ……まぁ3年近く一緒に暮らしてるし、前世を含めると娘くらいの子にどうこう思うことはないが……姉さんは姉さんだし。


「もう寝ようよ」


「え~、もうちょっとお話ししたい」


「それはまた今度ね」


「やった。またカーリーンが一緒に寝てくれる」


「うぐ……おやすみ……」


「うん。おやすみ」


 なにも考えず出た言葉で、また一緒に寝ることが確定してしまったが、今から訂正し始めるとまた長くなると思い、諦めて眠ることにした。




 瞼に光を感じるとともに、鳥の鳴き声が聞こえた気がして、ゆっくりと目を開けると同時に意識が覚醒する。


 目を開けると、俺に抱きついた時の姿勢で眠っている姉さんの顔が見えた。


 ――うぉ!? そ、そっか、昨日一緒に寝たんだったな……それにしても寝る直前と姿勢が変わってないように見えるけど、寝返りとかしなかったの? 腕枕状態だけど、まだ俺が軽いからしびれたりしないのか?


 普段の姉さんの様子からして、寝相はそこそこ悪いのではないかと予想していたが、そんな事はなかったようだ。


 ――両親と寝てるときは母さんに抱かれてたりするから、そのせいで大人しいんだと思ってたけど、もとからこんな感じなのか。起きてる間は元気いっぱいに動き回るから、寝るときくらいは本能的に全力で休んでるのかな……


 姉さんは俺を抱いた状態で寝ているため、起きるには腕をどうにかしないといけないのだが、気持ちよさそうに寝ている姉さんを起こすのもなぁと考えていると、ドアがノックされたので、あまり腕を動かさないようにしつつドアの方を見る。


「失礼します。カーリーン様」


 起こす際は許可なく開けてもいいと言ってあったので、リデーナは一声かけたあと部屋に入ってくる。


「おや、エルティリーナ様もこちらでしたか」


「う、うん」


「カーリーン様は起きていらっしゃったのですね」


「見ての通り、動かしていいものかと悩んでた」


「もう起床の時間ですので、構わないかと。私に起こされるより、カーリーン様に起こされたほうがエルティリーナ様も喜ばれると思いますので。エルティリーナ様はお任せしても構いませんか? ライニクス様を起こしましたら戻ってまいりますので」


「うん、わかった」


「それでは、よろしくお願いします」


 そう言うとリデーナは兄さんの部屋へと向かったので、俺は姉さんを起こすことにした。


 ――姉さんと一緒に寝てる事に対してなにか言われるか思ったけど、よく考えたらまだ子供だし別にいいのか? まぁそのあたりに厳しそうなリデーナがなにも言わないならいいんだろうな。


 そう結論づけると姉さんの腕から這い出て、体を揺すって起こし始めた。

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なんか姉とのイチャイチャっぽくなったけど、小さい弟を構ってから寝たいだけの姉です。

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