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65.ワインそしてお風呂

 今日は誕生日という事で昼からの稽古や授業もなく、両親と祖父たちに加えてアリーシアとのんびりと遊んですごし、夕食の時には昼に食べきれなかったケーキがそれぞれに切り分けられた状態で出てきた。


 ――おぉ……お昼に出たケーキは、丸々のホール状態で綺麗に余ったわけじゃなかったからそれぞれに切り分けたんだろうけど、そのうえで綺麗に追加のトッピングで飾りつけされてる……


 食後のデザートとして出されたケーキは、新しく作ったかのように飾り付けられていて綺麗だった。


 ――ぎりぎりまで冷暗庫に入れていたのか、まだヒンヤリしているし美味しい。よく考えたらこのケーキもドラード達が作ってるんだよな……普段の料理からこの手のおやつまで完璧に作れるってすごい……


 前世で1人暮らしの期間が長かったためにそれなりに料理もしてきた俺は、そんな尊敬の念を覚えながら美味しくケーキをいただいた。




 夕食後それぞれがお風呂に入る時間になったのだが、アリーシアが来てからは俺は()()()()()()で入っている。


 というのも普段は姉さんが俺と入ると宣言してさっさと俺を引っ張っていくのだ。


 俺もまだ幼いため一緒にお風呂に入る事を両親達も気にしていないようで、そのせいでまだ母さんや姉さん達と入ることの方が多い。


 そんな姉さんだが、アリーシアが来てからは彼女と仲良くなったためか、俺を引っ張っていくことはなかった。


 ――まぁ母さんも、父さんが娘とお風呂に入るのは別にいいみたいなんだけど、兄さんがそろそろ恥ずかしがってきてるから男性グループに混ざることはないだろうな……単に兄さんが恥ずかしがりやな性格なのか、俺と入るときも目をそらしてるし……俺が女顔だからじゃないよな?


 俺は女性陣がリビングから出ていくのを見送りつつそんな事を考えていた。


「さて、夕食の時にも出たが、一杯飲むか?」


「そうだな」


 父さんがそう言うとロレイナートがあらかじめ準備しておいたであろう晩酌用のワゴンをリビングに持ってくる。


 そのワゴンにはワインの瓶と、つまみになる燻製肉などが乗せられていた。


 ――そういえば父さんはこの時期はワインばかりだな。まぁ夏場だし短期間でも常温で置いておくならその方が良いか。ビールとかの場合はキンキンに冷えたものが良いもんなぁ。


 ロレイナートが父さんとヒオレスじいちゃんにお酒を用意している姿を見ながらそんな事を思っていると、俺と兄さんの前にもグラスを置いて、父さん達の前にあるグラスの中身と同じ色の液体を注いだ。


 俺と兄さんが驚いた表情で注がれたグラスを見ていると、ロレイナートが何かの合図をするかのようにウィンクをした。


 ――うん、似合ってるよ……でも、父さんは結構寛容だから兄さんには少しくらいって飲ませるかもしれないけれど、さすがに俺には飲ませないよな? 何よりヒオレスじいちゃんやロレイナートがそれは許さないだろうし……


 この世界では一応成人は15歳とされており、お酒も基本的にはその年以降にたしなむようになる。


 怪訝な表情でグラスに顔を近づけると、甘いブドウのいい香りがした。


「よかった、ブドウジュースだ……」


「ふはははは! 当たり前だろう。ライはともかく、カーリーンにまで飲ませようものなら、さすがにカレアにも怒られる」


「だが、色合いも似ているし、同じような気分を味わえるだろうと思って買ってきておいたのだ」


 いたずらが成功したかのようにニヤリと笑う父さんとヒオレスじいちゃんは、俺と兄さんの正面に座りなおしてグラスを向けてくる。


「ほら、乾杯だ」


「か、かんぱい」


 俺がそう言いつつ父さんのグラスと自分のグラスを軽く触れ合わせてキンッときれいな音を出すと、じいちゃんと兄さんも同じようにそれぞれとグラスを合わせてから、飲み始める。


 ――うおぉ!? 濃い! それにさっきまで冷やしてくれていたのか、まだヒンヤリとしていて美味しい!


「美味しいです!」


 兄さんも同じことを思ったようで、少し驚いた表情をしながら感想を言っている。


「はははは。それは良かった。結構な数買って来てあるから、気にせず飲むといい」


 じいちゃんは俺たちが喜んでくれたことが分かると、上機嫌に笑いながら自分のワインを飲む。


「……そういえばお風呂の前にお酒飲んじゃっていいの?」


 ふと思ったことを口に出すと、大人2人がピタッと一瞬止まり、後ろでロレイナートが少し笑っているようで口元を隠す。


 ――普段も飲むときはお風呂の前にも飲んでるし大丈夫なんだろうけどね。


「よく知ってるな……カレアに言われたことあるのか?」


「……いや、カレアは俺が酒に強いことを知っているし、そういうことは言われたことがないが……」


「となるとリデーナか」


「あぁ……言われたことはあるかもなぁ……まぁ泥酔するようなことはないし、大丈夫だぞ。それにカレアたちが帰ってくるまでの間に飲める量なんてそこまで多くないからな」


 父さんは苦笑しながらそう言うと、再びワインをひと口飲む。


「まぁ、一応ほどほどにね?」


「「う、うむ……」」


 まさか俺からそのようなことを言われると思ってなかった2人は、母さんたちが戻ってくる間に最初の1杯をチマチマ飲んでいた。


「あら、まだ1本も空いていないなんて珍しいわね?」


「いや、カーリーンに風呂の前に飲みすぎるなと言われてな……」


「うふふふ。なるほどね。カーリーンに言われたらそうなるわね」


 母さんが笑いながらそう言うと、俺の後ろに来たリデーナがこっそりと「よくやりましたカーリーン様」と耳打ちしてきた。


 リデーナは母さんたちと入浴を済ませるため、その際に石鹸のいい匂いがして少しドキッとしてしまった。


「あぁー! カーリーンもお酒飲んでる!」


「ふふふ、あれはブドウジュースよ、出してもらいましょう」


「そうなの? うん、飲む!」


 父さん達が先に浴室へ向かった後、ロレイナートから乾杯した話を聞いた姉さんはもちろん「私もやる!」と言ってきたので、2杯目のブドウジュースで乾杯をした。


 その際にアリーシアもしたいと言ってきたので2人と乾杯した後、遅くならないようにブドウジュースを飲み干して風呂場へ向かった。




 服を脱いで浴室へ入ると、父さんと兄さんが身体を洗っているところだった。


 ロレイナートはリデーナとは違って俺たちと入ることはないので、3人だけとなる。


「お、エルにつかまってたか?」


「乾杯してきて2杯目飲んできた」


「ははは。そんなことだと思った。もう少し待ってくれ、洗い終わったら髪を洗ってやろう」


 俺の髪は長くて今の身体だとどうしても時間がかかるしうまく洗えないので、普段から両親やリデーナ、姉さんに洗うのを手伝ってもらっている。


 ――まぁ姉さんも長いから、リデーナに洗ってもらうことがほとんどだけどな……母さんもリデーナも髪は長いけど、リデーナは使用人の仕事優先で自分の事は後回しだからなぁ……


「それじゃあ背中洗ってあげるよ」


「お? それじゃあ頼もうか」


 すでに頭は洗い終わっているようなので、洗身用の布に石鹸を付けつつ父さんの後ろに立つ。


 ――うん。今の身長じゃ背中でギリギリだもんな。むしろ肩甲骨くらいまでしか届かないし……頭を洗ってもらうからこっちもって言っても届かないもん……


 2メートル近い身長の父さんの頭には、低めの椅子に座っている今でも俺には手が届かない。


 それを分かっている父さんは床に直接胡坐をかいて座ってくれるが、それでも背中でギリギリだ。


 それも分かってくれている父さんは自分で肩の後ろなどを洗ってくれたおかげでもあって、()()()()()は時間はかからなかった。


 ――体つきがいいから面積も広いしな……


 そんなことを思いつつ、せっかくだから兄さんの背中も洗ってあげようかと見てみると、急いで洗って泡を流していた。


「そ、それじゃあ先に浸かってるね」


「そんな恥ずかしがらなくても……」


「別に恥ずかしがってないよ!? 兄弟でそんな、しかも弟のカーリーンにそんなことあるわけないだろう!?」


「う、うん、わかったよ」


 普段は大人しめな兄さんの勢いに負けて返事をすると、父さんが笑いながら俺をヒョイッと抱き上げて椅子に座らせる。


「ははは、お前はカレアたちと入ることが多いからなぁ。まだ慣れていないだけだろ」


「俺だって好きであっちに行ってるわけじゃないのに……」


「まぁエルが半分攫ってるようなものだからな。2人ともまだ子供だし()()別にいいんだが、少しずつエルには言い聞かせないとな」


「そうだねぇ。辺境伯のご令嬢が姉弟とはいえ異性と入浴なんて、外聞が悪いもんねぇ」


「どこでそんな知識を得てくるんだか……まぁまだ幼いからそこまで気にすることでもないぞ」


 そう言いながら洗髪剤を手に取った父さんに「目をつむれー」と言われてなされるがままに洗われる。


 普段撫でてくれる時もワシワシと力強さを感じさせる撫で方をしてくる父さんだが、髪を洗ってくれる時の手先はとてもやさしい。


「……ねえ、父さん」


「なんだ? どこかかゆいか?」


「母さんの髪も洗ったことあるでしょ?」


「……なぜだ」


「いや、前から思ってたけど、ずいぶん慣れてるなぁって」


「い、いやいや、エルともたまに入ってるからな?」


「別に隠さなくてもいいのに……父さんと母さんが仲睦まじいことは、一緒の部屋で生活してた俺は知ってるし」


「"仲睦まじい"って……ほんとお前はどこで知識をつけてくるんだか……」


 その後、父さんはどうにかして話を変えようと必死になったので、その別の話題に乗っかることにした。


 ――別に無理にでも聞き出そうとは思ってないし、両親が2人きりの時は結構糖度の高いイチャイチャしてるの知ってるから、兄さんが生まれるまでは母さんと一緒に入ることも多かったんだろうな……


 などと考えながら、父さんの優しい手つきで髪を洗われた。

ブックマーク登録、評価やいいね等ありがとうございます!


 兄姉の年齢に関して少し修正入れました。

 と言っても半年くらい前後した程度で、カーリーンとは大体3歳差というところは変わっていないので、影響はないと思います。


 現状だと、兄は年明けに9歳になったくらいで、姉は冬になれば6歳になる5歳という感じです。(ストーリー上姉は来年7歳のお披露目会で王都に行くのでそうなってます。

 一応これまでの投稿で年齢を書いている個所は計算しなおして書き直しましたが、抜けがあるかもしれません……

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