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64.ランプの機能・厨房での話

 リビングのドアをリデーナに開けてもらうと、父さんが声をかけてきたので返事をして部屋に入る。


「お。渡せたようだな」


「えぁ、は、はい……」


 じいちゃんが俺がつけているリボンを見てそういうと、アリーシアは渡したときの事を思い出したのか、顔を赤らめてうつむいた。


「ふふふ。似ているから本当に姉妹みたいに見えるわね~」


「っ! カーリーンは私のだもん!」


「あらあら。そうね、エルはいいお姉ちゃんだものね」


 ばあちゃんが俺とアリーシアを見てそう言うと、姉さんが取られまいとするように横から抱き寄せてきた。


 ――ここでは対抗心を見せてくるのか……というか早く座ろう?


 まだ身体の大きさ的にも負けている俺は、勢いよく姉さんの腕の中へつかまってしまうが、何とか放してもらって自分の席へ向かう。


 ――まぁ成長して姉さんより大きくなったとしても、力で敵うようになるとは思えないけどな……


 などと思いながら席に座って用意してもらったお茶をひと口飲むと、じいちゃんに声をかけた。


「ねぇ、じいちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「ん、どうした?」


 姉さんが"聞かないのか"という風にチラチラ見てきたので、仕方なく尋ねてみることにしたのだ。


 ――あとでこっそりヒオレスじいちゃんだけに聞こうかと思ってたんだけど、ここで聞いとかないと結局姉さんが言っちゃいそうだしなぁ……


「あのランプの魔道具って魔法が使いにくくなる効果もあるの?」


「……あぁ。そういう機能も付いている」


「すぐに気づかれてしまったわね? 魔法を使ったの?」


「どれくらいの明るさなのか見ておきたくて……その時に比べてみようって話になっちゃって使ったんだけど、いつもより暗かったからなんでかなぁって」


「普通に使えたのか……」


「姉さんも発動自体は出来てたけど、やっぱり暗い、というか姉さんの場合薄かったんだよ。それで廊下なら部屋よりは暗いから、ちゃんと使えてるかの確認ができるんじゃないかなぁって思って廊下で使ってみたら、いつも通り使えてたからあのランプが原因かなぁと」


「なに? エルまで使えたのか?」


「すごく薄かったから"使えなくなったかも"って慌ててたけど」


「そ、それは言わなくてもいいでしょ!?」


 俺の隣に座っている姉さんが恥ずかしがって小突いて来るが、ちゃんと手加減はしてくれているようでそこまで痛くはなかった。


「うーん……そうか。カーリーンの魔力操作の感じを見ていると、意味はないかもしれないとは思っていたが、エルもか……」


「もしかしてあの魔道具って"魔法を使いにくくする"というよりは、"子供が魔法を使えない"ようにするレベルの物?」


「あぁ、その通りだ。子供と言っても個人差はもちろんあるから絶対ではないし、いざという時に大人たちも魔法が使えないと逆に危ないこともあるから、強力なものではないがな。王都では"子供だけの時に危険にならないように、子供の魔法を使えなくする魔道具"として販売されているんだがなぁ」


「まぁそれだけカーリーンたちが優秀ってことなんだからいいじゃない。カーリーンもエルもいい子だし、大丈夫よ」


「……それはそうだな。一応その機能は切ることができるが、どうする?」


「カーリーンはどうしたい? 自分の部屋のものだし、遠慮することはないわよ?」


 暴発を抑えるような機能だから俺にではなく保護者である母さんに聞いているが、母さんは俺に判断を委ねてきた。


「俺はそのままでもいいよ。あの状態でちゃんと使えれば、もっと魔法がうまくなってるってことでしょ?」


「そ、それはそうなんだが……子供用のとはいえあの手の魔道具の影響下にある負荷を、あえて練習に使おうというのか……まぁすでに使えた以上、カーリーンがそれでいいならいいんだが……」


 ――せっかく俺の事を思ってプレゼントしてもらったんだから、そのままでいいって思ってただけなんだけど……


 じいちゃんは何かを諦めたように息を吐いた後、仕方ないという風な穏やかな表情で俺を見ていた。






 トイレにいって戻っている途中で、リビングの近くにある厨房から話し声が聞こえてきたので、ちょっと立ち寄ってみることにした。


 1人で歩けるようになってからはリビングから近いこの厨房へ行く回数も増え、ドラードもベルフも優しく構ってくれるので楽しいのだ。


 厨房へ入るとドラードとベルフそしてロレイナートが、俺たちの昼食の片づけを終えて少し遅めの昼食をとっている最中だった。


 ロレイナートかリデーナは常に両親と一緒にいるため、こうやって交代で食事などを済ませている。


「んぐ。おう、カー坊。誕生日おめでとう」


「これはカーリーン様、誕生日おめでとうございます」


 今日はまだ顔を合わせていなかったドラードとベルフが誕生日を祝ってくれるので、笑顔で返事をする。


「ありがとう。ご飯食べてるのに邪魔しちゃってごめんね」


「邪魔などとは思っておりませんよ。それで、いかがされましたか?」


 ロレイナートが食器を置いてから、わざわざ席を立って俺の傍まで来てくれる。


「ちょっとお手洗いに行ってたんだけど、声が聞こえたから顔を出しただけだよ。ロレイも食事続けていいよ」


「そうですか。かしこまりました」


 ロレイはそう言うと元の席に座った。


 ――この辺りはリデーナと違って聞き入れてくれるよなぁ。リデーナだったら、俺がリビングに戻るまで自分の食事とかは後回しにしそうだもん……


「今日の料理すごくキレイだったし美味しかったよ。ありがとう」


「おうおう、そうかそうか! あれが俺たちからの誕生日プレゼントのようなものだしな、気に入ってくれたなら何よりだ」


「わざわざ昼食直後にお礼をいただけるとは、ありがとうございます」


 あの料理を作ったのはドラードとベルフなので、2人にそう言うと嬉しそうに笑う。


「そういやケーキが余ったんだったな? 今出すか?」


「いやいや、お腹いっぱいで食べられないからまた夜に出すってことになったんだよ? 今そんなにたべられるわけないじゃん」


「そりゃそうか」


「それではお茶でもお出ししましょう」


「うん。お願い」


 ベルフがお茶を用意してくれている間に、空いていた椅子に座る。


「今日もそれなりに暑いけど、夜まであのケーキもつの?」


「ん? あぁ、すぐに冷暗庫に入れたから大丈夫だぞ」


 ――あぁ、あの食糧庫になってる部屋は夏場でもひんやりしてるもんなぁ。ドラードが魔法で調節してるんだろうけど、あれなら大丈夫か。


「それにしても、今日もまた()()()()してんなぁ?」


 用意してもらったお茶をひと口飲みながらそんなことを考えていると、ドラードが髪をまとめているリボンを見て、ニヤニヤしながらそう言ってくる。


「うぐ……アリーシアさんに誕生日プレゼントで貰ったんだよ……」


「はははっ。いいじゃねぇか。似合ってるぜ?」


「ドラード、なんかからかってない? 普段から"カー()"って男の子だと分かるように言うのに、こういう女の子っぽいものを"似合ってる"って……」


「いやいや、そんなことはないぞ? 別に男だろうが飾り気の多いリボンで髪を結ってもいいだろう。カー坊は容姿が可愛らしいから、そういう可愛いリボンも似合ってるからそう言ってるだけだ」


 ――ぐっ……真顔でそういうことを……


 顔がいいドラードに面と向かって真顔でそう言われると、同性の俺でも気恥ずかしくなって目を背けてしまう。


「嘘じゃないみたいだし……一応ありがとう……」


「しかし、そのリボンの模様は……アリーシア様のものと似ておりますな?」


 ロレイナートはアリーシアからプレゼントされた時や、先ほどのリビングでの出来事の時にはいなかったため、おそろいだとは知らない。


「よく見てるね……」


「まぁ執事ですから、お客様の事もきちんと把握しないといけないのですよ」


「アリーシア本人が選んでくれたプレゼントなんだけど、じいちゃんから話を聞いても模様の好みまでは分からないから自分の好みで選んだんだってさ。ついでに言うと、じいちゃんと一緒に来ることになってから時間があんまりなかったらしく急いでしまった結果、色違いのおそろいの模様になっちゃったらしい」


「それはそれは……エルティリーナお嬢様が拗ねていそうですね」


「はっはっは。見た目も似ているって話だし、いいんじゃねぇか?」


「ドラード達は見てないの?」


「おいおい、俺とベルフは使用人扱いだが料理人だぞ? 客の前にでることなんてそうそうないだろ」


「でもヒオレスじいちゃんはドラードの事知ってるみたいだったけど?」


「まぁ会ったことはあるが、今は立場的にも会う理由もないだろ」


「それもそっか。んじゃあ、あまり遅くなると姉さんかリデーナが探しに来そうだから、そろそろ戻るね。お茶ありがとう」


「おう、またいつでも来いよ」


「いえいえ。またお越しください」


「それでは私と一緒に参りましょう」


 ドラードとベルフにお礼を言うと厨房を出て、ロレイナートと一緒にリビングに戻った。

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第1巻
― 新着の感想 ―
[一言] 自分でランプ有る状態で魔法使えれば、もっと魔法の扱い上手くなると言った後に、爺さんのコメント受けてそんな練習法に使えるのかという台詞は微妙に違和感が… せっかく貰ったからという意味らしいの…
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