63.プレゼント
連続で投稿したのでご注意を。
それぞれのプレゼントをもって自室に戻った俺たちだったが、付いてきたアリーシアはなぜか姉さんじゃなくて俺に付いてきた。
「ここがカーリーン君の部屋になるんですね」
「そうだね。隣が姉さんで更にその隣が兄さんの部屋みたい」
「そ、そうなんですね」
タメ口で話せるようになっていたアリーシアだが、今は緊張しているのか敬語口調に戻ってしまっている。
――まぁまだ何もないとはいえ、一応異性の部屋だもんなぁ……ていうかなぜ俺の方に付いてきたのだろうか……姉さんとかなり打ち解けてる感じだったんだけどなぁ。
会話が途切れて少し気まずい空気のなか、机の上に置いたデスクランプの位置を微調整して気にしない様にしようとするが、何もない部屋ではそんなことすぐに終わってしまい、再び気まずい空気が流れる。
「あ、あの、カーリーン君」
「う、うん?」
何を話そうかと考えていたところに、アリーシアから声を掛けられて反応する。
「こ、これ! 誕生日プレゼント、です!」
「へぁ?」
予想外の言葉に間抜けな声で反応してしまったが、アリーシアが恥ずかしがりつつ両手で持って差し出している小さな紙袋を受け取る。
「あ、開けてもいい?」
「は、はい!」
すごく緊張しているようなので、一応目の前で開封していいか聞いてから紙袋を開ける。
中には赤色の生地に金色の刺繍がされている紐が入っていた。
「これを俺に?」
「う、うん! お爺さまから、カーリーン君は前にリボンをエルから貰ったって聞いて、丁度王都を出る前日に色違いで買ったから……あ、違くて! おさがりとかじゃなくて、一度も使ってないものだから! そ、それに自分用に買ったものじゃなく、ちゃんとお爺さまからカーリーン君の髪色とかを聞いて選んだの! カーリーン君の好きな模様とか分からないから、私が気に入った模様になっちゃって私のと一緒だけれど……」
顔を真っ赤にしながら説明するアリーシアの髪は、同じ金色の刺繍がされている青色のリボンでまとめられている。
「お、落ち着いてアリーシアさん」
「あ、あうぅ……」
まくしたてるように話していたアリーシアは、恥ずかしくなって顔を赤くしてうつむいてしまう。
俺は紙袋から出したリボンを手に取って、長めな髪をうなじあたりで縛ってまとめる。
「どう? 曲がってない?」
「え、あ。か、かわいい、です」
――可愛いかぁ……ヘアバンドじゃないし、ちゃんと縛れてるか自分じゃ分からないから聞いたんだが……
それこそ可愛い笑顔で褒めてくれるアリーシアだったが、リボンを見て曲がっているのが気になるらしく、俺の後ろに回って調節してくれた。
「これくらい長めに縛った方が前からもリボンが見えるから、いいよ?」
「まだ自分じゃ結ぶのは難しいからなぁ……」
「カーリーン君ならすぐにできるわ」
なぜそう言い切れるのだろうかと思いつつ、なされるがままで調整してもらっていると、姉さんが俺の部屋に入ってきたところで、アリーシアがなぜか固まった。
「2人ともなにしてるの?」
「リボンがうまく結べてなかったからアリーシアさんに直してもらってるとこ」
「ん? それ新しいやつ?」
「アリーシアさんに今もらったやつ」
「ち、ちが! くないですけど! こ、今回私が来る時にはカーリーン君の誕生日って聞いてたので、カーリーン君のは用意したんですが、ライお兄さまとエルの事は聞いてなかったというか、お爺さまは渡したのに私はおふたりには何も用意してないので……」
「お、おちついてアリーシア。大丈夫だから、気にしてないから」
徐々に泣きそうになっていったアリーシアをなだめるように姉さんが言うと、返事をして息を整える。
「あ、あの、色々ごめんなさい……」
「いいのよ、気にしないで? それにしてもいい模様ね?」
「う、うん。雑貨屋で見かけて気に入ったから買ったの。あまり時間もなかったから私のと一緒の模様になっちゃったけど……」
「あなたたちは似てるからねぇ。可愛いわよ?」
――姉さんも同じ感想かぁ……姉さんは俺に対してちょっとブラコン気味なことがあるけど、俺が異性からものを貰うのは別にいいのか。アリーシアが俺と似ているからだろうか? 姉さんの判断基準が分からん……
「こ、今度エルにもちゃんと用意するから!」
「あ、それじゃあ、春になったら王都へ行くと思うから、その時に一緒に買いに行きましょ?」
「あ、そうね。お披露目パーティーの時に王都にくるものね!」
なんとか落ち着いたアリーシアは、姉さんとの買い物の約束ができて嬉しそうにしていた。
「そういえば、お爺ちゃんにもらったランプってどれくらい明るいの?」
「まだ確認してないね」
「つけてもいい?」
「うん」
そう言うと姉さんは魔道具のスイッチ部分に触れて明かりをつける。
「結構明るいわね」
「昼間でこれなら、夜は眩しいくらいじゃない?」
「カーリーンの魔法の方が明るいでしょ」
――それはそうだ……明るくなるように魔力込めたりもしたし。というか明るければいいってものでもないしな。
「比べてみましょ? お母さんにも【ライト】とかなら部屋で使ってもいいって言われてるし」
「しょうがないなぁ……【ライト】」
姉さんの提案に乗っかって魔法を使う。
――保護者がいないところで魔法を使うのは初めてだけど、ちょっと悪い事してる気分になるのは何だろうな? 赤ちゃんの頃から目を盗んで気づかれないように魔力を放出とかしてたから今さらだけど……あれ、なんかちょっと暗いな?
「ねぇ、カーリーン、ちょっと暗くない? 昼間だからそう見えてるだけ?」
「う、ううん、暗いと思う」
ライトの魔道具の横に浮かべた俺の魔法と見比べて、姉さんも同じように思ったらしい。
――なんか無駄に魔力だけ抜けてる感じがするんだが……え、今までこんなことあったっけ……本当になんか変な病気とかじゃないよな?
「部屋だと明るくてそう見えてるだけじゃないのかな? 廊下でやってみればわかるんじゃない?」
アリーシアも俺の魔法と見比べているが、あんまり差が分からないようでそのような事提案してくるので、3人で廊下に出る。
こちらの廊下には光の魔道具は設置してあるが窓がないため、部屋に比べると薄暗い。
「確かにこれくらいなら分かるかな……【ライト】」
部屋で使った時と同じくらいの感覚で魔法を唱えると、目を細めないと直視できないほどの光の球が出現した。
「ま、眩しい」
「ちょっとカーリーン、強くしすぎ!」
「さ、さっきと同じくらいのはずなんだけど……」
「そんなわけないでしょ。どうみても明るくなってるわよ」
「わ、わたしもそう思います」
「だよねぇ……なんだろ……」
再び部屋に戻って同じ感覚で魔法を使うが、また少し暗くなっている。
「姉さんもやってみてよ」
「いいわよ? 【ライト】……あ、あれ?」
姉さんが出した魔法は目を凝らさないと確認できないほどに薄く、本人も不思議に思っているようだ。
「廊下だとどう?」
「そ、そうね。ここが明るいだけかもしれないものね……【ライト】!」
速足で廊下に出るとすぐに魔法を使う。
「廊下だとちゃんと出来てるね?」
「よ、よかったぁ……今まで出来てたのに、出来なくなってたら魔法の勉強増やされるところだったぁ……」
心底安心したように息を吐くと、魔法を解除して部屋に戻ってくる。
「……そうなると、じいちゃんからもらったこの魔道具のせい?」
「かもしれないわね……」
「でも、どうして?」
「まぁカーリーンは小さい頃……こ、子供だから魔法で危険な事をしないようにじゃないかしら!」
アリーシアが不思議そうにつぶやくと、姉さんは思い当たることがあるようで言いかけるが、すぐに別の言い訳を口にした。
――あぁ……なるほど。みんな俺が病気だったことは秘密にしてるもんな……となると、本来の魔漏病だと、魔法が暴発する可能性があるから、それ対策にヒオレスじいちゃんが用意してくれたってところか。
「まぁリビングに戻ったら聞いてみよう?」
「そうね。でもこれだと私はカーリーンの部屋で魔法の練習できないな~」
「なんで俺の部屋でやろうとするのさ……」
「え~。せっかく練習するならカーリーンと一緒がいい~」
「というか姉さんあまり魔法は好きじゃないでしょ?」
「そうだけど……」
グデーっともたれかかりながらそう言う姉さんを支えて話していると、兄さんも剣を置いて一緒に行っていたリデーナと俺の部屋に来たので、みんなでリビングに戻ることにした。
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髪を縛る紐ってなんて表現したらいいのか悩んでます……"リボン"だとなんか可愛らしすぎる気がするし、"紐"だと今度は飾り気が少ない気がして……
まぁカーリーンの容姿は可愛いので、可愛らしくて問題ないですが。