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45.イヴラーシェ

 固まっていたイヴラーシェが、少しして聞き返してくるのでもう1度同じことを言う。


 ――願いを理解するのに時間がかかってるが……もしかして難しいことなのだろうか? 神様が地上に()()()で遊びに来てるのに、会いたいって言われればそりゃ困るか。


「え、そんなのでいいの?」


 そう思っていたが、イヴラーシェから出てきた言葉で別に問題ない行動だという事が分かる。


「もっとすごいお願いでもいいんだよ?」


「すごいお願いってなんだよ……」


「うーん……ボクから提案するのは何か違う気がするから言わないけど、他に何かあるでしょ?」


「無尽蔵の魔力が欲しいとか、使いきれないほどのお金が欲しいとか?」


「ま、まぁそういうもの可能だけど……そういうのがいいの? キミが欲しいならボクはそれでもいいんだけど……」


「いや、魔力は今から鍛えれば問題ないだろうし、お金も細々とスローライフできる程度あればいいしなぁ。持ちすぎてても、いざこざに巻き込まれるだけだろうし」


「まぁそうだね。安心したよ、キミが欲に溺れるような願いを本気でしなくて……でも本当に会いに行くだけでいいの?」


「それだけ渋るってことはやっぱり地上で会うのは難しい、というより何かまずいのか?」


「いやいや! そんなことはないよ。たまにだけど降りてるんだから、会うくらいなんの問題もないよ。キミに関していえばこうやって話もした仲だし、むしろ言われなくてもひょこっと会いに行くつもりだったんだけど……」


 ――問題はないのか……よく考えれば、神様にお会いしたいってすごいこと頼んでないか?


「一応理由を聞いてもいいかな?」


「んあー……ほら、創造神だから何でも知ってるだろうし、会った時にも色々話を聞けたらなぁと。も、もちろんお祈りにも来るよ?」


 ――貴族という立場だし、頻繁に会えて気楽に話せる友達が出来るか分からないからって、神様に対して"友達になって欲しい"とか、さすがにストレートには言えないよな……


「あはは。なるほど、友達になってほしいと?」


 急に神様が拍子抜けしたような表情で笑いながら、俺の考えていることを当ててくる。


「んえ!? あ、うん……」


「これでも創造神なんだよ? 思考くらい読めるよ。ただ本当は読むつもりはなかったんだけど、キミが何か隠してる雰囲気あったから一応ね……まぁ全然やましいことじゃなくて安心したよ。キミに来てもらったのは大正解だったね」


 直接言うのを避けていた内容を読まれていた俺が、気まずいやら恥ずかしいやらで言葉を失っていると、イヴラーシェはそのような事を言いながらほほ笑んでいる。


「そういう事ならその願い聞き入れるよ。まぁ確かにあの地域だと、前の世界と比べると身近にいる友達の数も少なくなるだろうしねぇ」


「王都までかなり距離があるみたいだもんな」


 気を取り直した俺は、何もなかったかのように会話を再開する。


「そうだね。まぁキミの両親を見てたら分かる通り、あの領は治安がいいし町の人と仲良くなりやすくて、友達もできるだろうから安心していいと思うよ?」


「う、うん……」


 ――なんか友達ができるか不安な子に言い聞かせてる親みたいに感じて、ちょっと気恥ずかしいな……俺を転生させてくれたんだから、立場的にはあまり変わらないから間違ってはないか。それに神様がそういうなら安心もできるな。


「まぁ会いに行くにしても、まだ1歳のキミの所に行っても怪しまれるだろうから、キミがもうちょっと成長してからにはなるけどね」


「神様なのにか?」


「そりゃあ地上に行く時は力は封印してるようなものだし、普通の人間と変わらないんだよ? いくら少女だとはいえ、急に貴族の子どもに会いたいとか怪しいでしょ」


「確かにそれはそうだな……そういえば神像の事なんだけどさ」


 この白い空間に来る前に見た、3柱の神たちの像を思い出しながら話題を変える。


「うん、ボク達の像がどうしたの?」


「イヴは創造神で真ん中にあった像なんだろうけど、立派な長い髭のあるおじいちゃんの像だったんだが?」


「あはは、威厳があったでしょ? 前にも言ったけれど、()()()固定の見た目を持っていないからねぇ」


「そういえばそんな事言ってたな……でも、前も今回もその姿なんだな?」


「かわいいでしょ?」


「……うん、可愛い……」


 目の前で優しく笑いながらくるりと1回転して見せるイヴラーシェは、どこからどう見ても美少女なので素直に答える。


「ありがとう。まぁこの姿はボクが話をするのが好きだから、相手が話しやすいようにって考えた結果なんだけどね」


「という事は俺以外にも話をする人間が来るのか?」


「……来ない……というより来れないかな。教会や神殿にいる神官ですらここには来られないし、前に神託をした時も直接姿が見えるほどじゃなかったかな。大昔に姿が見える神官がいた時はあのおじいちゃんの姿だったから、今もその時の姿の神像が残ってるんだよ。まぁ創造神という神々の中でも1番上のボクが少女の姿で神託をあたえるより、あの姿の方が威厳もあるしねぇ」


 そう言いながら困った表情でイヴラーシェは笑う。


「という事はその姿は俺しか知らないし、俺と話すためなのか?」


「あはは、そうだよ! 何なら別の世界からキミを呼ぶならこうやって話を出来るだろうという事で、この姿になったといっても過言ではないね!」


 からかうつもりで言ったが、少女は笑顔で肯定する。


「それで、どう? 話しにくく感じる?」


「いや、全然そんなことはないぞ?」


「それなら成功だね。ボクがこういう感じだからさ、おじいちゃんの姿でこんな話し方は合わないでしょ?」


「……確かに、あの神像の姿でその口調は流石にな……」


 教会で見たイヴラーシェの姿で今の話し方をしているのを想像して苦笑する。


 ――慣れれば受け入れられるだろうけど、あの見た目で"ボク"は流石に似合わないしな……


「そういえば、イヴは固定の姿じゃないって言ってたけど、他の神たちは違うのか?」


 他の神像の事を思い出し、イヴラーシェの言葉から推測して他の神はあの像の姿なのか気になって聞いてみる。


「そうだね。ボク以外は神像の見た目と大差ないよ」


 ――イヴの両サイドに祀ってあった生命神と豊穣神は両方胸がすごかったな……


 などと不敬な事を考えていると、イヴがムスっとした表情になりジトーっと睨んでくる。


「ライチもグラルートも胸はすごく大きいけどさ、ボクだって大きくは出来るしこの姿であのレベルで大きいのは不自然だと思うんだ?」


「また思考を読まれた!?」


「いや、なんか話してる時に感じてた視線が、身体の方にいったからそんなことを考えてるんだろうなぁと」


「ご、ごめんなさい」


 今は光の球状態だから視線なんて分からないだろうと思っていたが、イヴラーシェが言うのだから確かに感じ取ったのだろう。


 ――実際チラっと見ちゃったしな……申し訳ない……


「しかし神像と姿が一緒なら、お忍びで遊びに行っても"神様に似ている"って騒がれそうだな」


「まぁ実際そういう騒動が起きたこともあるね。だから多少認識をずらす力を使うのは許可してるんだよね」


「そういうことをしなくていいイヴは気楽なわけだ」


「あはは。そうだねぇ。まぁここ最近は遊びに行ってなかったけど、キミもいるしまた遊びに行くつもりだったんだよ」


「そうか、それじゃあ地上で会うのを楽しみにしていよう」


「うん。ボクも楽しみにしてるよ。それじゃあそろそろ今日はお別れかな? 他に聞きたい事とかない?」


「特に思いつかないな。それにまた教会に来られるようになったらちゃんとお祈りはするから、その時に聞かせてもらうよ。イヴにとっては()()になるかもしれないけどな」


「あはは、それも楽しみにしてるね。それじゃあ今さらになるけれど、1歳の誕生日おめでとう。これからも健やかに成長することを願うよ」


 創造神に誕生日を祝ってもらうなど、人によっては"もう死んでもいい"と思えるレベルの言葉を貰いながら、俺の意識は遠のいていった。

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