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209/211

209.シラヒメと

少し遅れましたが、あけましておめでとうございます!

今年もよろしくおねがいします!!

 予定通り稽古の時間は短めで終わった。


 魔法組は特にいつもと変わらない感じだったが、剣組は普段見ないような父さんの技を見て満足したようだ。


 稽古が終わったあとは、シラヒメと一緒に遊ぶことにした。


 2日目ではあるが、シラヒメのテンションは相変わらず高いようで、外だから遠慮をしていないのか屋敷で遊ぶときと比べると、パッと見ただけで走る速さも飛ぶ高さも上がっているのが分かる。


「速いなぁ……」


 前世の感覚があるので、速度がでる乗り物自体には慣れているが、それが生き物となると話が変わってくる。


 ――移動速度だけみても、バイク並みにでてるだろうし、それをフェイスガードとかゴーグル無しはなぁ……しかも、上下にも揺れるし……。


 そう思いながら見ていると、シラヒメが高々とジャンプする。


 ――うん。アレに関しては体感したことないだろうし……いや、ジェットコースターとかの感覚と似てるかもな……ただ、シートベルトや安全バーがないけど……。


「……さすがに今の状態のシラヒメに乗るのは怖すぎるなぁ……」


 そもそも絶叫系アトラクションが苦手だった俺がそう呟くと、隣にいたアリーシアが「そ、そうだねぇ」と同意してくる。


 先ほどまでは、土魔法で作ったボールを使って俺やアリーシアも一緒に遊んでいたのだが、途中で姉さんがボールを投げ、それをシラヒメが体で受け止めるという遊びに変わった。


 姉さんは投げて落ちたボールを取ってこさせるような遊びをしたかったらしいが、今のところシラヒメはすべてを途中で受け止めている。


 さっき高くジャンプしたのも、姉さんが上に向けて投げたボールを受け止めるためなのだが、シラヒメは今まで見せたジャンプの最高記録を軽々塗り替えるような高さまで跳び、余裕で受け止めていた。


 ただ、姉さんもそれはそれで楽しんでいるようで、興奮した様子でシラヒメに声をかける。


「すごいわね、シラヒメ。もう一回いくわよ!」


 シラヒメももちろん楽しんでいるようで、『うん!いいよ!』と返事をしながら尻尾をブンブン振っている。


 しばらくの間そのような遊びを続けていると、その身体能力を見ていた姉さんが乗りたいと言い出した。


 シラヒメも断ることはなく、むしろ喜んでいたのでみんなで交代で乗ることになった。


 まずは姉さんが乗ることになり、さすがにボールを受け止めたときのようなジャンプは危ないので許可が下りなかったが、走るだけならOKと言われた。


「それじゃあシラヒメ、いつもより速く走って!」


『うん!』


 姉さんのお願いに返事をしたシラヒメは、歩き出したあと徐々に加速していく。


 その速度は姉さんの注文通り、屋敷で見る速度とは比べ物にならない速さで進んでいる。


 しかし、どういうわけか、姉さんの姿勢はあまり上下に動いていない。


 ――というより、シラヒメの体もそこまで上下に動いてるように見えないな……。


「シラヒメも人を乗せるのに随分慣れてきているようだな」


 近くにいたじいちゃんが、シラヒメの走りを見ながらそう言う。


「あぁ、あれなら走っていても騎乗者の負担は少なくなるな。頭がよく、人の言葉が分かるうえに、あの身体能力があるからこそか」


「とはいえ、あの速さでしっかり姿勢を保っているエルもさすがだな……」


「ははは。エルもシラヒメに乗るのは好きだから、頻繁に乗ってはいるからなぁ」


 父さんとじいちゃんの話を聞きながら見ていると、シラヒメの体が少し沈み、姉さんがそれに合わせて踏ん張るような姿勢をとる。


「あ、跳んだ」


 ボールを受け止めたときのような、上へのジャンプではないので高さはそこまででもないが、跳躍距離はかなりある。


 それでも屋敷の壁くらいは飛び越せそうな高さだったのだが、シラヒメはもちろん、乗っている姉さんもなんてことないようにキレイに着地の反動を消し、そのままの速度で走り続ける。


「あんなにキレイに乗りこなすか……」


 それを見ていたじいちゃんは複雑そうな表情でそう呟いていたが、アリーシアは目を輝かせて興奮気味に声を出した。


「わぁ!エル、カッコいい!!」


 いつも活発な笑顔を見せて遊ぶ姉さんだが、今はそれに真剣な表情が混ざっており、あのようなジャンプもキレイにこなす姿はたしかにカッコいい。


 そのあと少しして戻ってきた姉さんは、満足そうな表情でシラヒメから降りる。


「すごく気持ちよかったわ!」


「ジャンプはダメって言われてたのに」


「アレくらいなら問題ないでしょ? ちゃんと乗れてたし」


 俺にそう言いながらチラッと父さんの方を見ているが、父さんから何も言われないので許容範囲だったのだろう。


「エル!カッコよかった!」


「ありがとう! アリーシアも乗ってみようよ、気持ちいいわよ」


「え、で、でも1人だとまだ怖くて……」


 アリーシアはそう言いながら、あれだけの走りを見せた姉さんや、しっかり支えてくれそうな兄さんではなく、なぜか俺をチラっと見る。


 ――え、俺? いやまぁ、アリーシアさんよりは乗り慣れてるし、俺もあまり速く走られると怖いからアリーシアさんと一緒に乗るのはちょうどいいのかもしれないけど……。


「それじゃあ、俺と一緒に乗る?」


「う、うん!」


 嬉しそうに返事をしたアリーシアと一緒にシラヒメに近づき、体をなでながら声をかける。


「それじゃあシラヒメ、よろしくね」


『うん。いいよ~』


 シラヒメの返事を聞いて、父さんとじいちゃんにそれぞれ乗せてもらう。


 俺の方が小さいので前に座り、アリーシアが後ろから俺の腕の下を通して手綱を握る形だ。


「シラヒメ、分かってると思うけど、まずはゆっくりね? 危なそうだったら言うから、ちゃんと聞いてね?」


『うん。大丈夫だよ~』


 そう言って歩き出したシラヒメは、徐々に速度を上げていく。


 体に受ける風でいつもより速度が出ていると感じるが、不思議と上下の揺れは少ない。


「おぉ~。さっき見てて思ったけど、これならもう少し速くても大丈夫そうだなぁ。アリーシアさん、もう少し早く走ってもらう?」


「う、うん。カーリーン君が大丈夫なら」


 アリーシアがそう言うと、彼女の手綱を握っている手に力が入るのが分かる。


「シラヒメ、あまり揺れないようにしながら、もう少し速く走ることってできる?」


『分かった~。少しずつ速くするから、言って~』


 シラヒメがそう言うと更に速度を上げていく。


 平坦な道を走る自転車並みの速度を超え、今は下り坂をノーブレーキで下るように徐々に加速していき、速度もそれ以上に感じる。


 自転車であればちょっとしたミスで横転して怪我を負いそうだが、この速度を出しているのがシラヒメなので安心感はある。


 ――でもこれ以上速くなると、受ける風強くなりすぎて強張りそうだな。


 そう思った俺は、加速を止めるように伝え、その速度で走ってもらう。


「風が気持ちいい~」


「そ、そうだねぇ。さすがにこれ以上速いのは怖いけど……」


 今でも馬車と比べると速い速度で移動している。


 普段は馬車の方に乗っており、しかも全速力の馬車には乗ったことのないアリーシアからすれば、これでも速すぎると感じるのかもしれない。


「シラヒメ、ジャンプはなしね。さすがに怖い」


『うん、分かったよ~』


 その速度で走っているうちに、アリーシアも徐々に慣れてきてかなり楽しめたようだ。


 みんなの所へ戻ったときに、じいちゃんは少し不安そうな表情をしていたが、アリーシアが楽しんだと分かってホッとしていた。


 最後に兄さんも乗ったのだが、姉さんと同じようにジャンプまでしており、キレイに乗りこなしていた。


 ――乗る前は少し緊張してたみたいだから、もともと挑戦するつもりだったんだろうなぁ……妹に負けたくないのか、見ててやってみたくなったのか……。


 そんな感じでシラヒメとしばらく遊んだのだが、ずっと走り回っていたシラヒメは疲れている様子もなく、むしろ"まだ走り回れる"と楽しそうに言っていた。

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