200.水中を散歩
とうとう200話目です!
1話1話はサッと読める程度に短く投稿頻度も不安定ですが、皆様に読んでいただき、それがやる気に変換されて続けてこられました!
これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!!
母さんたちと一緒に子供たちが泳いでいるのを見ていると、兄さんが潜っていたらしく水面に顔を出した。
それを見て、本来聞きたかったことを思い出し、母さんに話しかける。
「ねぇ、風魔法とか使って、水中ゴーグルみたいなものってできる?」
「あ~、さすがにゴーグルは用意してないものねぇ……うぅ~ん……どうかしら……」
「母さんは旅してたころに、そういう魔法は使わなかったの?」
「そうねぇ。港町やこういう湖とかには行ったけれど、水中を探索するってことはほとんどなかったし、そういうときは道具も用意してたからねぇ……」
「そうだよねぇ」
「うぅ~ん……たしかに水中で呼吸ができるようにする魔法はあるし、ある程度水中をキレイに見られるようになるけれど……それだと全身を覆うから泳ぐって感じではなくなるし、その魔法自体難しいのよねぇ……」
「それを小さくはできないの?」
「小さく……局所的に……そうねぇ……全身が濡れない方がなにかと都合がいいから、考えたことなかったわ……」
――たしかに遊びじゃないならその方がいいもんな。魔力消費は多そうだけど、母さんならそこは関係ないだろうし。
母さんが言う魔法が気になった俺は、直接見せてもらえるように母さんの手を掴んで声をかける。
「その魔法がどんなのか気になるから、見せて?」
「え、えぇ。いいわよ」
魔法のこととなると考え込むことがある母さんは、俺に手を引かれたことで我に返り、そう言って席を立って一緒に移動する。
母さんを水際まで連れて行くと、父さんが近寄ってきた。
「どうしたんだ?」
「カーリーンに魔法を見せてって言われてね」
どこか嬉しそうにそう言う母さんの言葉に、父さんは「なるほどな」と笑いながら答える。
「ほら、昔使ったことあるでしょ? 湖の中を探索したときに」
「あぁ~、アレかぁ。おかげで剣も振りやすくて、あっさり終えられたやつだな」
「えぇ、あの魔法が気になるみたいでね」
母さんはそう説明しながらスカートの裾をあげ、膝あたりで縛る。
「それじゃあ、魔法を使うわよ?」
準備ができた母さんが、俺にそう言うので返事をしてその様子を見る。
「【ウォーターフィルム】【グラビティ】」
母さんがそう言って2つの魔法を唱えると、薄い水の膜に包み込まれた。
「おぉ~!」
「うふふ。あなたにもかけてあげるわ」
初めて見る魔法に感動していると、母さんが笑いながらそう言ってもう一度魔法を唱える。
母さんと同じように水の膜につつまれた俺は、指をそっと膜に触れさせてみたが、とくになんの抵抗もなく膜の外に出すことができた。
「割れたりしないんだね」
「えぇ。この【ウォーターフィルム】は見ての通り水属性で膜を張り、内側に風属性で空気を保って呼吸できるようにする魔法ね」
「【グラビティ】は?」
「この膜がある状態で水の中にはいっちゃうと浮いちゃうから、それの対策よ」
「なるほど……」
――たしかに体全体を覆うから泳いで移動はできないだろうし、底を歩くならその方がいいか。
「もともとは、有毒ガスとかに対する魔法なのだけれど、水中探索でも使えそうだったからね。まぁ装備重量次第ではなくても問題ないけれど――って、この話は今はいいわね。ほら入ってみなさい」
母さんが微笑んでそう言うので、返事をして湖に入っていく。
本来であれば腰あたりまで浸かる深さなのだが、水の膜によって湖の水が遮られ、俺の周りには膜に沿って円状の空間ができていた。
――おぉ!? 今までも魔法は見てきたけど、こういうのは初めてでワクワクするなぁ。
そう思いながら進んでいき、とうとう背の高さより深い場所まできた。
魔法で作った水の膜は、湖の水と見分けられないほど同化して透明に見え、そのおかげで水中がはっきりと見える。
「おぉ~!!」
「うふふ。喜んでいるようね?」
隣にきた母さんが、俺と目線を合わせるようにしゃがんで話しかけてきた。
「うん! って、声が聞こえる?」
「えぇ、近ければね。離れちゃうと水が邪魔してほとんど聞こえないけれど」
「便利な魔法だね」
「えぇ、そうでしょう? こんなこともできるわよ」
母さんはそう言って俺にかけた魔法に触れると、母さんの魔法とつながる。
「こうすれば、声がしっかりと聞こえるわ」
「たしかに……」
「もうちょっと深くまで行ってみる?」
「うん!」
俺が返事をすると、母さんはそのまま俺の手を握って歩き始める。
徐々に奥へ進んでいるのだが、水の透明度が高いおかげもあって薄暗くはない。
ふと上を見ると、そこそこ深いところまで来ているようで、俺と母さんを包んでいる水の膜でできた境がはっきりと分かり、たまにコポコポと空気を排出しているのが見える。
「もっと静かかと思ってたけど、思ったより色んな音が聞こえるね」
陸では聞こえていた鳥や虫の声が聞こえなくなり、代わりにかすかではあるが砂や小石が水に流され、ぶつかるような音が聞こえるのでそう言う。
「うふふふ。えぇそうねぇ。川も近いし、私たちが来たから逃げてる魚もいるみたいだからね」
そう言って母さんが指さす方を見ると、十数匹くらいの群れが何かから逃げるように忙しなく移動している。
「水中ゴーグルの代わりにならないかと思って聞いたんだけど、これはこれで周りがゆっくり見られて楽しい」
前世の水族館にある水中トンネルにいるような景色を見ながらそう言う。
――こっちは自分の周りだけだから、好きに移動できるしなぁ。いつか海の中も見てみたいな。
「気に入ったようでよかったわ」
「でも難しそうだね……?」
「そうねぇ……【ウォーターフィルム】だけで水と風魔法を合わせているようなものだし、そこに更に重力魔法だからねぇ……カーリーンにはまだちょっとねぇ」
「だよね。でも、いつか使えるようになるよ」
母さんがそこまで言うのだから、今は試そうともせず素直にそう答える。
「うふふ。そうね。また教えてあげるわ。それじゃあ、今回はこの魔法で楽しむ?」
「うん! あ、兄さんたちも誘っていい?」
「えぇ、もちろんよ。それじゃあ一度戻りましょうか」
「うん」
そう言って水際まで戻ると、ちょうど姉さんとアリーシアが近寄ってきた。
「お母さんも泳ぐの?」
俺たちが水中に行っていたことに気がついていなかった姉さんは、母さんの恰好を見てそう言う。
「今日はやめておくわ。水着もないもの。代わりにあなたたちに湖の中を見せてあげるわ」
「湖の中……」
アリーシアはそう呟いて、湖の奥の方を見る。
「大丈夫だよ。息はできるし、キレイだよ」
「う、うん」
アリーシアは俺の言葉を聞いて、少し不安ながらも期待しているように返事をする。
「ライもおいで」
「はい」
母さんが兄さんを呼ぶとすぐにきて、子供たちが全員揃ったところで母さんが魔法を使う。
自分に魔法をかけたあと、その水の膜を広げて子供たちも包み込んだ。
「あまり離れちゃダメよ?」
その言葉に全員で返事をして、ゆっくりと湖の中へ進む。
「わぁ! キレイ!」
ある程度の深さまできたところで、周りを見ていたアリーシアが楽しそうにそう言う。
「ね! ただ目を開けるのと大違い」
「あはは。そりゃそうだろうね。今度潜るときはゴーグルも用意したいね」
姉さんの言葉に、一緒に潜ったことがあるであろう兄さんが笑いながらそう言う。
「あ! あそこに魚がいるわ!」
「ほんとだ。あんなに遠くなのによく見つけたね……」
姉さんが指さした方向にある岩場にはたしかに魚がいたのだが、岩や水草の陰にうまく隠れていたせいで、言われるまで気がつかなかった。
「あの辺りなら釣れるかもしれないわね……」
姉さんはこのあと釣りをするつもりらしく、獲物を見定めるかのような真剣な表情で魚を見ている。
そのあとしばらく水中の風景をみんなで楽しんだのだが、姉さんは釣り場を探していたみたいなので、楽しみ方は違ったようだ。
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