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20.病気の疑い

連続投稿気味ですので、ご注意ください

 ロレイナートはまず俺に外傷がないかを見るために、母さんに抱き上げてもらって後頭部や服で隠れているところも確認する。


「特に虫刺されなどの小さな外傷も見当たりませんね……」


「そ、そうなると内面……」


「【魔力視】…………ロレイ、カーリーン様の魔力見てください!」


「【魔力視】……これは……かなり減っておりますな……」


 リデーナに言われてロレイナートも魔力を可視化する付与を自分にかけて、俺の魔力を確認しているようだ。


「え、ど、どうして……」


「おそらく"魔漏症(まろうしょう)"でしょう……奥様が吸い取るわけもありませんし、そもそもそんな高等技術そうそう使えるものでもありません。それにこの部屋には魔法が発動しにくくなる魔道具も置いてあるので、魔法による干渉でこのようになったとも考えられません」


「私はそんなことしないわ!? それに魔漏症(まろうしょう)だなんて、そんな!?」


「ハンター時代に聞いたことがあるんだが、命にかかわるんじゃなかったか!?」


「カーリーンしんじゃうの!?」


「う、嘘ですよね!?」


 バタバタと子供たちまで執務室へ入ってくる。


 リデーナが呼びに行った際に子供達にはバレないように伝えたようだが、父さんの慌て様が変だったと思って確かめに来たようだ。


「う、うそ……カーリーン……」


 母さんの目に溜まっていた涙がとうとうあふれ出す。


「落ち着いてください。魔漏症(まろうしょう)であれば治す手段があります。旦那様が耳にしたのはおそらく大人になってから何かしらの影響で発症したパターンでしょう」


「そ、そうなのか」


「えぇ、子供の頃でしたら充分完治する見込みのある病気です」


「何をすればいいの?」


「薬の素材が必要なら全力でかき集めてくるぞ!」


「とりあえず、魔力を流し込んで回復させましょう」


「それなら私がやるわ」


「えぇ。魔力を分け与えるなら奥様が適任でしょう」


 そういわれて涙を拭った母さんが俺の胸に軽く手を当てて、自分の魔力を流し込んでくれる。


 するとさっきまでの頭痛が嘘のようにスゥっと引いていくのが分かった。


 ――た、たすかった……


「よ、よかったわ。落ち着いたみたい」


 俺の顔色がよくなったのを確認した母さんは泣きながらギューッと抱きしめてくれた。


「あぁ。本当に良かった」


 その上からさらに父さんも抱きしめてくれる。


 ――こんなに心配させてごめん……こんな症状が出るとは思わなかったんだ、というのは言い訳になるか……こんなに大事に想ってくれてるのに申し訳ない……


「なおったの……?」


「いえ、一時的に落ち着かせただけに過ぎません」


「それじゃあ何をすればいい」


「まず魔漏症(まろうしょう)について説明しますと、文字にすると分かりやすいのですが、"魔力が漏れて減っていく病気"という知名度の低いものでございます」


「魔力が完全に空になると死ぬ……」


 父さんのつぶやきを聞いて、子供たちが驚いて悲しそうな表情に変わる。


「えぇ。ですので旦那様がおっしゃったように、命に関わる病気というのも間違いではありません」


「だったら、カーリーンも……」


「いえ、それはあくまで()()()()()()()()()()()()が発症するときの話です。それが子供の頃でしたら、まだ魔力がなじんでいないので魔力操作を習得できれば、漏れがなくなり完治します」


「ということは、魔力操作の稽古ができるようになるまでは魔力を分け与えた方がいいのか?」


「えぇ、そうなります」


「それは誰の魔力でもいいの?」


「誰でも構いませんが、できれば血縁者の方が波長が似ているので良いとされていますな。あと、奥様は簡単に魔力を吸い出したり分け与えたりしておりますが、並みの魔法使いでは不可能な技術ということをお忘れなく」


「カレアほどの魔法使いじゃないと無理なら、俺じゃ無理だな……」


「もし完治しなければ、ずっと人から魔力を貰わないと生きていけないんですか?」


「考えたくはありませんが、実際そういう例があったということはお教えいたします」


「……僕もっと魔法の練習頑張るよ。そうすればカーリーンに魔力を分けられるんでしょ?」


「わ、わたしもカーリーンを守るためにけいこがんばる!」


「お前らは立派な兄と姉だよ。がんばろうな」


 父さんも目に涙を溜めながら膝をついて目線を合わせ、子供たちを優しくなでる。


「あと波長が近いと言っても自分の魔力ではないので、できれば動かして混ぜてあげてください。まだカーリーン様は自分で動かせませんからね」


「分かったわ…………あら、すごいスムーズに動くわね……」


魔漏症(まろうしょう)を実際に診たのは数えるほどしかないので詳しくは分からないのですが、()()()()()()()という事を考慮すると、流れ自体はスムーズになっていてもおかしくはありませんな」


「そうよね……」


「漏れていたということは……この部屋のライトの魔力の減りが遅かったのは、カーリーン様の魔力があったからでしょうか……?」


「確かに……周りの空気中にある魔力を吸って、ある程度自動補充するように付与がされているので、そこにカーリーン様の魔力があったのなら、他の場所より吸収率が上がっていても不思議じゃありませんね……あの時に気が付くべきでした、申し訳ありません」


 そう言いながら悔しそうな表情をしたロレイナートが深く頭を下げる。


「誰も気が付かなかったのだから、自分を責めなくていいわ。それにロレイが治療法を知っていたおかげで助かったんだから、お礼を言わせてほしいくらいよ」


「そうだぞ。お前がいなかったら……俺たちだけだと、そのまま死なせていたかもしれん」


 ――ヤバイ。話がかなり大きくなってしまった……申し訳なさ過ぎて出来るものなら今すぐ土下座でも何でもして謝っておきたい……


 まだ身体や口をうまく動かせないことを、これほどまで悔やむことはそうそうないだろう。


「それで、カーリーンが自分で魔力操作ができるようになれば完治する可能性があるのよね?」


「えぇ。それで間違いありません。しかし魔力操作を習得するまではまた減っていきますので、適度に分け与えた後今やったように混ぜてあげてください。そうすればいざ魔法の稽古を始めた時にもスムーズに魔力操作ができて、完治が早まります」


「自然に治ったりはしないのか?」


「私の記憶ではありませんね……大人であれば教会等で無理やり魔力の矯正をして治す手段もありますが、うまく魔法が使えなくなる後遺症が残る可能性や、体力的にも子供には辛い処置です。ですので幼いころに発症した場合は、先ほどの手順が安全で間違いがないかと」


「分かったわ。カーリーンが言葉を覚えて、魔力操作がしっかり身に付くまで私が毎日分け与えて面倒をみます」


「その方がいいでしょう」


 ――もう成長するまで魔力は使わないって心に決めようとしたが……使って魔力を減らさないと逆に不思議がられた挙句に、別の病気だった扱いされて大変なことになる?


「最近よく寝てると思ったら、魔力が少なくなっていたからなのね……気づけなくてごめんなさいねカーリーン」


 ――こちらこそごめんなさい……


「寝ているうちは一時的に魔力回復量が上がりますが、あくまで防衛本能的なものですし、食事も必要なので常に眠るというわけにもいかないですからね……」


「なんにせよ治る見込みのあるもので少しは安心した……」


「えぇ。ちゃんと大きくなってねカーリーン」


 そう言って頬に親愛のキスをしてくれた。


 俺は愛されていることを再度実感し、そんな両親に要らぬ心配をかけてしまったことで泣きたくなり、記憶が覚醒してから初めて本気で泣いた。


「あらあら、あなたが泣くなんて久しぶりね。もう大丈夫よ」


「はは。確かにそうだな。この子は大人しいからな」


 割と大声で泣いてしまったが、精神が身体年齢に引っ張られたせいもあるのかもしれないが、実際申し訳なくて泣きたい気持ちがあったため、言い訳はしない。


 俺が泣き止み落ち着いたころには、兄さんと姉さんも近くに来ていて頭を撫でてくれていた。


 ――うん。これ以上家族に心配させないように魔力の鍛錬はやめようと思ったが、別の事で心配させてしまいそうだから適度に消費して、魔漏症(まろうしょう)だったと信じさせよう。罪悪感はあるが、成長してこのことを謝って気味悪がられるのも嫌だし、母さんたちも自分の子がそんなこと言い出したら嫌だろうしな……


 いつもの日課になりつつあった魔力の鍛錬を別の意味でも頑張ろうと心に決めた。

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かなり心配をかけてしまったカーリーンですが、結局魔力の鍛錬はすることになります……(´・ω・`)

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