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185.お祈り

新章です!ネタバレ回避のため、章タイトルは(仮)です(´・ω・`)

すこし時間が過ぎ、オルティエンに帰ってからの話になります!

 残りの王都滞在期間は父さんの言ったとおり、お茶会などの予定は入れずに過ごした。


 その間も稽古はしたし、アリーシアがそのままお泊りしたり、お土産を買うために商店を巡ったりもした。


 さらに、リボンを買った防具屋の娘さんの店や、ダガンの店にも顔を出したりしたので、ずっと家でのんびりとしていたわけではないが、楽しい時間を過ごせたと思う。


 そのほかにも、姉さんやアリーシアも一緒に飼育場にも行った。


 さすがに再びシラヒメを連れていくことはできなかったが、初日から俺たちの対応をしてくれた職員さんに、シラヒメの様子を伝えると非常に喜んでくれていた。


 帰るときには、伯父さんは仕事があるので来られなかったが、伯母さんやアリーシア、じいちゃんとばあちゃんも屋敷まで見送りに来てくれた。


 アリーシアは涙目になりながら別れを惜しんでいたが、オルティエンで遊ぶ約束もしていたので、近いうちにまた会えると分かって笑顔で見送ってくれた。


 帰りの道中も天候に恵まれ、1週間ほどでオルティエンまで帰ることができた。


 王都へ向かうときもお世話になったルアード伯爵へのお土産などもあったが、移動時間や食料などの消費量が把握できていたので、そちらの量が減ったことで荷物の量はほとんど変わらなかったのが影響しているのだろう。


 途中でシラヒメが馬車を曳いてみたいと言ったので、少しだけ交代させたのも効いているかもしれないが。


「――もともと2頭曳きの馬車なのに、シラヒメ1頭の方が速かったから驚いたよ……」


 オルティエンに帰ってから数日がたった今、俺は真っ白い空間で金髪の少女と話をしている。


 王都では色々やることもあったので教会に行けておらず、帰ってからの数日は家でのんびりとしていたので教会にくること自体久しぶりなのだが、毎回イヴと会えるわけではないので話すのはかなり久しぶりだ。


 そんなイヴに最近の話を聞かれたので、王都であったことを話している。


「しかも持久力もあるものだから、そのままシラヒメに頼めばもっと早く移動できそうで、母さんは喜んでいたけど、前にじいちゃんから魔馬(まば)を貰う申し出を断ってたからか、父さんは苦笑いしてたなぁ」


「あははは。まぁ魔馬自体そういう種だからねぇ。今みたいに人と共存するようになる前、といってもかなり昔の話だけど、そのころから他のモンスターのようにすぐに暴れることは無かったとはいえ、一度暴れだすとかなり大変だったみたいだからね」


 イヴは俺の話を聞いては、こんな感じで笑いながら楽しそうに反応してくれる。


「それは今も変わらないだろうなぁ……まぁその次の休憩のときに元の馬と交代して、それからは急ぐこともないから曳いてもらってはないんだけど、"オルティエンに帰ったら専用の馬具とかを作る"って話をしちゃったから、道中ウズウズとはしてたかな……それでも駄々をこねたりはしなかったし、聞き分けがよくて助かったよ……」


「まぁあの子は特殊個体だしね。年齢的には若い部類だけど、知識とかは持ってるからね」


「神様からも特殊個体って断言されちゃったか……まぁ転生してる俺が言うのもなんだけどさ……そういえば転生で思い出したけど、俺みたいに転生する人は初めてって前に言ってたけど、魔馬だとはいえ、それにちかい状態の特殊個体ってかなり珍しいんじゃ?」


「うぅ~ん。珍しいことに変わりはないけど、特殊個体ってなると結構いるね。知識とかはないけど魔力量が多いとか。あと、キミみたいな転生は初めてって言ったのは、あくまで"別世界からの転生"って話で、この世界内となると記憶をもっての転生者も存在はするよ」


「あ、そうなんだ?」


「うん。前にキミ以外で話せる人ができたって話したのを覚えてる?」


「あ~。そう言えばそんなことも言ってたね……たしかに転生とかでもしなけりゃ、イヴとこうやって話せないか」


「ボク自身はいろんな人と話したいんだけど、この空間に呼べる人は限られてるからねぇ……"記憶をもって転生した"ってだけじゃ無理だし……」


「そうなると、その人も結構特別な感じなの?」


「そうだね。まぁそのうちこの空間――いや、その子はキミの住んでる地域と近いから、そのうち現世で会うことになるかもね?」


「え、そんな近くに居るのか……」


「といってもキミの住んでる国とは違うから、そうそうすぐに会うことは無いかな? そう考えると、この空間で会う可能性の方が高いかもしれないね」


「時間軸が違うこの空間で会うって相当稀でしょ……」


「あはははは。まぁそうだねぇ」


 イヴはそう言いながら楽しそうに笑う。


 記憶を持った転生者は気になりはするが、イヴがそう言うならそのうち会えるかもしれないし、こちらから探して会おうとまでは思わないので、別の話に切り替えた。


「そういえば、キミは少し話し方が変わったね?」


 そのまま話をしていると、イヴが唐突にそのようなこと言う。


「え? そう?」


「うん。前はもっとこう……なんていえばいいんだろ? 子供らしくないというか、なんというか……?」


「いやまぁ、前世の記憶があるからね……そう言う意味だと、最近は伯父さんとか武具屋の人とか、大人の人と話すことが多かったことも関係してるのかな?」


「あははは。そうかもしれないね。まぁ今も言葉づかいはともかく、言動は子供っぽくないことも多いみたいだしね。ちょっとそう思っただけで、気にすることはないよ」


 ――たしかに聞いてる内容は子供らしくないかもしれないけど……。


「それでもみんな受け入れてくれてるから、本当感謝しかないな……」


「まぁキミみたいな子が、全くいないわけじゃないからね」


「あ、やっぱりそうなんだ?」


 騎士団の人たちも驚きこそしていたが、気味悪がられたりせず受け入れてくれていたのでそう反応する。


「うん。記憶を持った転生者というわけでもなく、子供の頃からキミみたいに知識を集めて研究者とかになる人もいるね。それに行動や戦闘面という意味では、君の父親の幼いころや兄姉も似たようなものだしね」


「父さんも昔から戦闘面はすごかったらしいけど、この間の兄さんや姉さんを見てると納得だよ……」


 訓練場での様子を思い出しながらそう言うと、イヴは「あはははは」と愉快そうに笑う。


 そのあと少し話をして、今日は帰ることにした。


「まぁ時間軸が違うから、もっと話はできるんだろうけどさ」


「あはは。まぁそうだね。でも一気に聞いちゃうのももったいないし、また時間が合うときに聞かせてくれることも探してもらわなきゃいけないからね」


 イヴはそう言って微笑む。


 ――話を聞いて笑ってるときはその少女の見た目通り無邪気に笑うけど、やっぱりそういう表情で笑うと神様らしいな。


 見ているだけで安心するような、落ち着くような優しい笑みを見てそう思うが、口には出さない。


「それじゃあ、またね」


 イヴがその笑みを浮かべたままそう言うので、「うん。またくるよ」と返事をする。


 視界が光に覆われ、次に目を開くと意識が現世に戻ってきた。


 俺より先にお祈りをしていた人がいたのだが、その人は俺がイヴと話をし始める前と同じ場所でお祈りを続けている。


 ――今回はかなり長時間話してたと思うんだけど姿勢も変わってないし、やっぱりこっちだと全然すすんでないんだな。イヴには感謝しているし、時間がないわけじゃないからもう少しここにいるか。


 あとからお祈りに来て、さきに帰るのは気まずいと思ったので、その人のお祈りが終わるまでそのままお祈りをつづけた。

本当はもう少し年齢が上がる程度まで進めようと思っていたのですが、前置きという形で書きたい内容があったので、そちらを挟むことにしました!


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