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183.魔力密度

 それから団員さんたちが交代しながら俺の魔法を受けていったが、5発すべて耐えた団員さんはいなかった。


 "斬らなければダメか"と言っていた団員さんをはじめ、何人かが剣を振っていたが連続でくる魔法すべてを斬ることができず直撃し、耐えようとしていた団員さんは倒れるまではいかなかったが、大きくよろめいたりしていたので、コーエンから不可判定をもらっていた。


 ――訓練なんだし、勝敗判定のあることでもないと思うんだけど……子供だからそう言った方が喜ぶと思ったのかな? まぁ実際嬉しい気持ちにはなったけども……。


 一通り終わったあとでコーエンに「カーリーン様の全勝ですね」と、にこやかに言われたのでそう思う。


 そのコーエンは団員さんたちの指導に行っているので、俺は小休憩させてもらっている。


「疲れてない?」


「うん。まだまだ平気だよ」


「新米団員が相手だとはいえ、【ウォーターボール】であそこまでできるのはすごいぞ」


 母さんの隣で一緒に様子を見ていたじいちゃんが、そう言ってなでてくれる。


 ――たしか【ウォーターボール】って攻撃魔法って分類の中でも初級らしいもんなぁ……いや、だからこそ斬る練習とかに使われてるのかな?


「……そういえば今回は【ウォーターボール】だけど、普段って【ファイヤーボール】とかもっと危ない魔法でやってるの?」


「そういうときもあるな。まぁその場合は大けがをしないように、しっかりと魔法の威力を調整できるものを呼んでやっているんだが」


「そうなんだね」


「水魔法は他の属性と比べると、怪我を負いにくいからな。こういう訓練にはもってこいなのだ」


 ――やっぱりそうなんだ。まぁ燃えないし、斬れたりもしないもんな。ウォーターカッターみたいにすれば危険度も上がるだろうけど……今のところ見たことある攻撃魔法の中だと、一番安全なのは間違いないか。


 そう思っていると、団員さんたちの声が聞こえてくる。


「なかなかうまく斬れずに間に合わないなぁ……」


「もっと気力を丁寧に纏わせるんだ」


「そうしているつもりなのですが……隊長もやってみてくださいよ」


「……いいだろう」


 コーエンはそう言うと振り返って向かってくる。


「すみません、カーリーン様。私にも魔法を撃っていただけませんか?」


「それはいいけど……他の団員さんと同じような感じで?」


「えぇ、それでお願いします」


 そう言ってコーエンが離れていくので、その間に魔法の準備をしておく。


「いつでもどうぞ」


 俺の周りに水の球が浮いているのを確認して、剣を構えたコーエンがそう言ってくる。


「発射!」


 他の団員さんのときと同じように魔法を放ち、3発目からは軌道を変えられる準備をしながら、コーエンの様子を見る。


 さきほど団員さんと魔法を斬る話をしていたので、今回は1発目から魔法を斬るらしく、剣が振り下ろされる。


 さすが隊長格というだけあって、すんなりと1発目を斬り、そのまま斬り上げて2発目もキレイに斬る。


 その勢いのまま曲がってきた3発目以降も斬っていき、コーエンは全ての【ウォーターボール】を対処することに成功した。


「おぉ……さすが隊長です!」


「4発目とか反対側から来たのに、よく対処できましたね……」


「なるほど。あの振り方であれば、たしかに間に合うか……」


 などと団員さんたちが話をしている中、コーエンがこちらに戻ってきた。


「いやはや、カーリーン様、魔力操作の技術がまた上達されておりますね……以前、オルティエンで斬ったときより、格段に斬りにくくなっております」


「そうなの?」


「えぇ。魔力密度とでもいいますか、うまく魔力が込められておりますね。あの団員たちが連続で対処できないわけです」


 ――そういうのもあるのか……魔法を撃つことしか気にしてなかったや……。


「オルティエンでのときは、最終的に対処することができましたが……今の状態で10発となると、初めて受けたときのように濡らされるかもしれません」


「今のはキレイに対処出来てたように見えたけど……」


「はははは。まぁこれでも隊長ですからね。部下の前ではいい所を見せたいのですよ」


 コーエンはそう言って笑う。


 ――どこまで本気で言ってるか分からないけど、魔力密度で斬られにくくなるって知れたのは良かったか。威力が魔法の攻撃力とすれば、魔法自体の防御力的なものって認識でいいのかな?


「ちょっと他の魔法でやってみてもいい?」


 まだ訓練は続くようなのでそう言うと、コーエンはキョトンとした表情をして首をかしげる。


 ――魔法密度に関してはちょっと練習しないと、硬すぎたり脆すぎたりするかもしれないからなぁ。それは今度母さんに教わりながらやるとして、他に選択肢があるなら試してもいいもんな。


「……それはどんな魔法ですか?」


「えっとね。【ソイルクリエイト】」


 俺はそう唱えて、シラヒメと遊ぶときにつくったボールを出現させる。


「ボールですか?」


「そう。これを風魔法で飛ばせば、【ウォーターボール】と同じような練習にならないかなぁと」


「なるほど……ちょっと耐久性を確認したいので、斬ってもかまいませんか?」


「うん、いいよ。いくつでも試して」


 そう言うと追加で5つほどボールを作ってそのうちの1つを手渡すと、コーエンはそれを宙に投げて剣を振り下ろす。


 土魔法で作られたそれは、程よい弾力を維持しつつ、汚れないように魔力でコーティングもされているため、そこそこ耐久性はあると思う。


 しかし、あくまで遊具として作ったものなので、武器で攻撃されれば簡単に壊れはする。


 実際に斬られた反動で地面にたたきつけられたボールは、多少破けてしまっていた。


「思ったより頑丈ですね」


「まぁ魔馬(まば)と遊べるように作ったものだからね」


「はははは。なるほど。であればこの耐久性も納得です」


 ――たしかに剣で斬られて真っ二つにはならなかったから、耐久はあるほうか。でも魔馬のシラヒメはもちろんそうだけど、そのシラヒメと全力で遊ぶ姉さんも使うとなると、それくらいは欲しいって思ったからなぁ。


 そう思っているとコーエンはもう1つ拾い上げて宙に放り、同じように剣を振り下ろす。


 今度は気力も使っているのか、キレイに真っ二つに斬られていた。


「おぉ」


「なるほど……たしかに先ほどの【ウォーターボール】よりは斬りやすいですね。そのうえ、これだけ弾力があるので直撃しても怪我は負いにくいでしょうし」


 コーエンは更にもう1つ手に取って、両手でボールの弾力などをたしかめながらそう言う。


「机や器を作ったときに、土魔法も上手いと思っていたが……このような微調整までできるのか」


「うふふ。これを作るのに色々ためしていたのよ」


「だろうな。発想といい、それを実現できるだけの魔力操作技術といい、本当に驚かされるな」


 コーエンと話している俺のうしろでは、同じようにボールを手に取ったじいちゃんと母さんがそのような話をしている。


「これはどれくらいの速さで飛ばすことができるのですか?」


「え、あ、ちょっと試してみるね」


 じいちゃんたちの会話に耳を傾けてしまっていた俺は、気を取り直してボールを1つ手に取る。


 そのボールを風魔法の【ウインド】で目の前に浮かせ、手のひらを向ける。


 ――何で飛ばすのがいいんだろ……普通に【ウインド】だと弱すぎるし、【ウインドボール】だとこっちにも被害があるだろうし……まぁ風の塊をぶつけるイメージさえできてれば、詠唱は何でもいいんだけど。速度がある初級ってたしかバレット系って教わったからそれでいいか。


 そう思った俺は、目の前のボールに【ウインドバレット】と唱えて魔法を放った。

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― 新着の感想 ―
魔力密度が魔法自体の防御力なら、魔法操作技術の上達とは関係なくないですか? 魔力密度が魔法操作とどう関係するのか説明が欲しい
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