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18.天井のランプ

短時間での連続投稿ですので、お気を付けください。

 姉さんの稽古が始まってから数日たったが、記憶が覚醒した初日に父さんが森へ出かけていたこと以外は、変わらずの日常を送っていた。


 朝食前に稽古をし、午前中は事務作業を夫婦で進め、午後は仕事を進めるか子供たちに勉強を教えるかしてから夕飯や入浴を済ませて眠る。


 常に母さんと行動していて大まかに把握したのはこういう生活だった。


 ただ、急ぎではない書類の方も粗方片付いたようで、午前中の執務室に父さんがいることは減り、代わりに子供達と遊んだり勉強を教えているようだ。


 ――父さんが勉強を教える……実際に見たことはないからどんなのか想像できないや。まぁ事務仕事もできるし、頭が悪いということはないんだろうけど、どうもあの性格と見た目から未だに脳筋なんじゃないかと思ってしまう。稽古の時の説明も()()だし……


 そんな俺は現在母さんとリデーナが午後の事務作業をしている部屋で、邪魔にならないようにと起きたことがバレないようにしている。


 ――そう、邪魔しないようにしてるだけだから。決して魔力の鍛錬がしたくて起きたのがバレないようにしてるわけじゃないから!


 などと自分に謎の言い訳をしながら、今日もポスポスと魔力を出して成長を促していた。


 体内時計的に10時と15時頃に挟む休憩の時に俺の様子を必ず見るため、毎回ずっと寝ていると怪しまれると思い、適度に寝起きのフリをしたり眠くならない程度に魔力を消費した後、声を出して抱いてもらっていたりする。


 先日魔力を消費したせいで寝落ちしていたところ、昼前に目が覚めた時に母さんにおしめを替えられている途中だったことがあるのだが、その時は思わず泣き出しそうな情けない声を上げてしまった。


 ――あれは仕方ない……そりゃあ無意識にトイレしちゃってる時もあるだろうとは覚悟していたが……いやもう忘れよう……


 授乳に加えてトイレ事情もすぐに忘れるように努めたが、そうそう忘れられるものではないようだ。


 執務室のドアがノックされ、母さんが許可を出すとロレイナートが入ってきた。


 だいたい父さんと一緒にいて子供たちの世話や勉強などを見ていたりするため、この時間にここに来るのは結構珍しい。


「どうしたの? なにかあった?」


 入ってきたロレイナートは別に焦っているわけでもなく、片手には脚立を担いでいたため緊急事態ではないのは確かだ。


「隣の部屋のライトの魔力が切れかけておりましたので、こちらもそろそろかと思いまして」


「なるほどね」


「ちょうど旦那様がご子息方と外から戻ってきて、エルティリーナ様がお眠りになられたので、この時間に充填をしておこうかと」


「ふふ、また外で遊び疲れたのね。えぇわかったわ、おねがいね」


 そう言うとロレイナートは持ってきていた台をライトの下に設置し、それに上って4つに分かれて曲がった先についている魔石の1つに手をかざす。


 ――ほうほう、ああやって魔力を送り込むことで半永久的に使えるのかな? 今まで充填してるのは見たことないから、結構燃費もよさそうだ。科学の代わりに魔法技術が発展してるから、本当に生活面で不便はしなさそうだなぁ。


「おや?」


 魔力の流れが見えるように凝視していると、少し流した段階でロレイナートは作業をやめた。


「どうしたの?」


「いえ、この部屋のライトは殆ど魔力が減っていないようなので」


「あら、そうなの?」


「えぇ。補充しなくともしばらくは持ちますな。リデーナ、補充しました?」


「いえ、前回ロレイが補充してから私はやってませんが」


「魔力操作の関係もあって、他のメイドたちはやらないと思うのですが……はて……」


 生活魔法と言われる部類の魔法であれば使えるのかもしれないが、魔力を充填するような技量のいる作業はロレイナートやリデーナがやっているようだ。


「そのライトには大気魔力吸収も付与されていますし、ここを使うのはほとんど昼間だけなのでそこまで減っていなかっただけでは?」


「まぁリビングや廊下に比べるとこの部屋は夜はつけませんし、そのせいですかな」


「壊れていないならいいんじゃないかしら? 別に悪いことではないでしょう?」


「それはそうなのですが……奥様、私たちに内緒で補充してませんか?」


「主を疑うってどういうことよリデーナ……」


「いえ……小さい頃を知っていますので……」


「そうですなぁ。いたずらをしてよく困らされたものです。壊すなど実害のあることこそしませんでしたが、今回のように無断で補充して不思議そうにしている私たちの反応を見たり、私たちより前に準備して待機して驚かされたりと」


「ちーがーうーわーよ! それに何よ"今回のように"って! 私は本当に()()()やってないわ。この屋敷に来てからは大人しいでしょう!?」


「……それもそうですね?」


「なんで疑問形なのよ」


 ――子供達に向ける表情と違って、見た目相応に可愛らしい反応するんだなぁ。まぁ父さんと二人っきりの時にも似たような反応してる時あるけど、この2人の前だと特に素が出やすいんだろうな。


「ほらほら、奥様。あまり大声を出しますとカーリーン様が起きてしまいますよ?」


 そう言いながらベビーベッドに寝転んでいる俺を見たロレイナートと目が合うと、ニコリとほほ笑んでくれる。


「そ、そうね……」


「まぁもう手遅れですが」


「早く言いなさいよ!」


 俺を起こさないようにと声量を落とした母さんだったが、ロレイナートにからかわれたことにより元の声量で答えた後、ベビーベッドのそばまで来た。


「ごめんなさいねカーリーン。うるさかった?」


「うーーー」


 特にうるさいとは全く思っていなかったので、抱っこを求めるように両手を前に出して反応する。


 ――寝ていた()()をしていたという罪悪感もあり、つい甘えるような行動をとってしまったが……これはロレイナートの作業を少しでも近くで見たかっただけだから!


「はいはい、抱っこねー。リデーナ、少し休憩にしましょう」


「かしこまりました」


 そう言うとリデーナはお茶を取りに退室し、ロレイナートは残りの魔石にも一応充填するための作業に戻る。


 充填作業の様子を抱かれた状態で見上げていたが、隣の魔石も短時間で手をかざすのを止めて次へと移っていた。


「ふむ。全部同じくらいしか減っていませんでした」


「ということは最初の1つだけ"不具合で光が弱くて消費が遅い"というわけではないようね」


「そのようですね。まぁ取り換えや修理の手間がかからなくてよかったです」


「そうねぇ。その魔石も結構な値段するものね……」


「付与内容を抑えれば価格も落ちますが、それだと補充の手間が増えますからな。これだけの広さの屋敷ですと、この付与は必須かと」


「ものによっては補充専門で雇わないといけなくなりそうね」


「そうですな。場所によってはそういうところもあるそうですが?」


「うちはあなたやリデーナがいるからもし低価格のランプだったとしても、わざわざ追加で雇わなくても問題はないでしょう?」


「それはそうですが、我々の仕事量がさらに増えますなぁ」


「それだけ能力も性格も信頼しているって証拠よ?」


「はっはっは、それはそれはありがとうございます。さて、おしゃべりはこのくらいにして、他の部屋も補充してまいりますので失礼します」


 そう言うとリデーナと入れ替わりでロレイナートが脚立を担いで出て行った。


 ――付与の中に"大気魔力吸収"とか言ってたな。それで燃費をよくしてるとも……もしかしなくても俺が魔力を無駄撃ちしてるやつを吸収しちゃってるのか? だとすればいずれバレそうなんだが……


 その可能性があるなら別の魔力消費策を考えないといけないと思いつつ、今はリデーナが持ってきてくれたお菓子を貰ってお腹を満たした。

ブックマーク登録、いいねなどなどありがとうございます!


少し時間が進みました。

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