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179.防御魔法付与

 それから父さんは、アドバイス後の振りをたしかめるかのように何度か剣を受け、次の人にも同じように話しかけては剣を受けている。


 ――()()()()稽古って言ってたけど、あれだと父さんに()()()()稽古だな。


 父さんはたまにかなり余裕のある寸止めで剣を振っているが、基本的に盾で相手の剣を受けているだけなのでそう思う。


「さすがフェデリーゴ様ですね。相手のクセをすぐに見抜き、悪い所は指摘してくださる」


「あの組は決して弱いというわけではないが、どうも伸び悩んでいる者ばかりだったからな。これでさらによくなるだろう」


 俺たちの近くで稽古の様子を見ていたコーエンが、じいちゃんとそんな話をしている。


 しばらくすると組変えをするようで、父さんと稽古をしていた団員さんが声をそろえてお礼を言ったあと離れていく。


「次の組は比較的新米ばかりの組ですね」


「それじゃあ俺が先に少しやったあと、ライとエルにも参加してもらうか」


「はい!」


「うん!」


 兄さんは意気込むように返事をし、姉さんは目を輝かせながら返事をする。


 ――見学してるときもウズウズしてたもんなぁ……。


 そう思っていると次の組が父さんに挨拶をして、先ほどと同じような稽古を始めた。


 たしかにさっきの団員さんと比べると動きが遅く、弾かれたときに体勢を立て直すのも遅く見える。


 しかし、さすが騎士団に入っているというだけあって、体格はそこそこいい人ばかりだ。


 そんな人たちが兄姉の相手をするということで、少し不安になったのも仕方ないだろう。


 ――兄さんはともかく、姉さんは大丈夫かな……? いや、ちゃんと寸止めとかはするだろうし怪我はしないだろうけど……むしろ姉さんのあの力はどこまで通用するのだろうか……もしかして相手の怪我の心配をした方がいいのかな……。


 そんなことを思いながらチラッと姉さんの方を見ると、次は参加させてもらえると分かったからか、しっかりと素振りをしている。


「ふふふ。カーリーン、大丈夫よ。2人とも稽古を頑張っているんだもの。怪我なんてしないわ」


 俺の視線に気がついた母さんが微笑みながらそう言ってくる。


「あぁ。打ち合いと言っても、()()()寸止めが基本だからな」


「いつもは普通に当てるの?」


「まぁな。普段は実戦に近い訓練だから刃をつぶした剣でやっておるのだが、今回はフェディやライたちが参加するからな。フェディは真剣でも問題ないし、ライたちは急に別の剣で稽古をして、感覚にズレが生じるのを避けるために普段持っている剣を使用することになったのだ。さすがに防御系の魔法が付与された防具があったところで、真剣だと怪我も増えるから寸止めを徹底させた訓練、または、相手に重傷を負わせない訓練も兼ねているといったところだな」


 ――たしかに、兄さんや姉さんも自分の剣で参加するんだもんな……普段の稽古もその真剣でやってるけど、加護とかのおかげで怪我とかはほとんどしてないもんなぁ。でも、俺は剣の稽古には参加してないからその実感がないからなぁ……。


「それに2人の防具も防御用の付与はしてあるものなのだろう? 寸止めを徹底している今回に限って言えば、万が一当たったところでそんな威力では怪我などしないから、安心するといい」


 じいちゃんがそう補足をしながら優しく撫でてくれる。


「父さんにはガンガン打ち込んでるように見えるけど」


「アイツは特別だ。団員が本気で、それも気力まで使って攻撃したところで、怪我を負わせるなんて無理だろう?」


「……そうだね?」


 ――"だろう?"と聞かれても、父さんの本気とか見たことないし……まぁでも、たしかに父さんが怪我をするイメージはできないもんな。


 じいちゃんとそんな話をしながら父さんを見ると、必然的に相手をしている団員さんも目に入る。


 団員さんはガチガチの鎧という感じの防具を身に着けているが、父さんはあまり動きを阻害しない程度の防具だ。


 そして、その防具の傾向は兄姉も同じで、胸当てや手足に最低限の防具しか身に着けていない。


 いくら加護があるからといえ、その実体験といえば転んだときくらいの俺からすれば、じいちゃんたちに()()いわれても不安がぬぐいきれなかった。


 ――何か防御魔法を付与してあげたいんだけど……前にじいちゃんが使ってたときはなんて唱えてたっけ……思えば、魔力操作の練習や簡単な攻撃魔法の練習はしてるけど、防御魔法ってまだ習ってないな……いや、別に魔法名を唱える必要はないか。口に出しちゃうと逆に不思議がられるかもしれないし。


 そう思った俺は、姉さんに近づいて話しかけた。


「姉さんちょっといい?」


「うん? どうしたのカーリーン」


「背中側の留め具の紐がちょっと緩いみたいだから、直してあげるよ」


「そう? この間少しサイズを変えたのが合ってなかったのかもしれないわね。それじゃあお願いするわ」


 武具は頻繁に手入れをしているのでもちろん嘘なのだが、タイミング的におかしくはないようで、姉さんは何も疑わず背中を向けてしゃがんでくれる。


 ――さて、防御魔法も色々あるけど……【シールド】みたいに常時展開系はバレないようには無理だし、危なくなったら自動発動とかは、万が一発動した場合に面倒なことになるよなぁ……となると、薄い防御性の膜を常時展開させておくって言うのが無難か? 【シールド】とかと比べると効果は薄いだろうけど、何もしないよりは安全だろうし。


 そう決めた俺は、紐を直すフリをしながらこっそりと無詠唱で魔法を付与する。


「終わったよ」


 俺がそう声をかけると姉さんは立ち上がり、防具がついていない部分を触りながら首を軽くかしげる。


「ね、姉さんどうしたの?」


 魔法がバレたのかと思い、緊張しながら声をかける。


「……うぅ~ん? カーリーン何かした?」


 振り向いてそう聞いてくる姉さんの目は、どこか確信を持っている感じがしたので、諦めて本当のことを言うことにした。


 ――魔法だから母さんとか父さんにはバレそうだけど、姉さんなら気がつかないと思ったんだけどなぁ……。


「……なんで分かったの?」


「なんかカーリーンが私の背中に触れてから、なにかに覆われた気がして」


「そうなんだ……まぁちょっと防具が軽装だから不安で、防御魔法を付与したんだけど」


「そうなの!? カーリーン、そんなこともできるのね!」


「あ! こ、これは内緒だからね!? 姉さんと俺との秘密だから!」


「うん! 分かったわ! ありがとう! 頑張るわね!」


 姉さんは嬉しそうに言うと俺から少し離れて素振りを再開したので、「う、うん」と返事をして兄さんの方へ向かう。


 ――周りがうるさいからか無詠唱のことまではバレなかったし、姉さんの声も母さんたちには聞こえてないみたいでよかった……。


「兄さん、ちょっといい?」


「どうしたの?」


「ちょっと背中見せて」


「う、うん、いいけど……?」


 移動中に父さんの方を見たら、もうすぐ交代になりそうだったため、下手な小細工はしないで背中を向けてもらう。


 姉さんのときと同じ魔法を無詠唱で付与したあと、兄さんに声を掛ける。


「何か感じた?」


「え? 何かしたの?」


 兄さんは本当に分かっていないのか、不思議そうな表情で俺に聞き返してくる。


「頑張れるようにおまじないをしたんだよ。あ、一応言うけど、内緒にしておいてね?」


「え? う、うん。分かったよ。ありがとう」


 ――姉さんのときよりは慎重にバレないようにやったけど……ゆっくりやればバレにくいのか? それとも兄さんは実は分かってて気を使っているのか、姉さんの感覚が鋭すぎるだけか……まぁ内緒にしてくれるみたいだし、気がついてても大丈夫か。


 そう思っていると交代の時間になったようで、父さんがすこしこちらに近づいて、兄さんを呼んでいる。


「あ、そろそろ交代みたいだね、頑張ってね兄さん」


 俺がそう言うと、兄さんは笑顔で「うん。ありがとう」とお礼を言い、父さんのもとへと向かった。

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