173.完成
いくつか土の球を作ってみたが、なかなか思った通りのものがはできない。
――"魔法はイメージ"って分かってるつもりだけど、"土魔法は硬いもの"って無意識に思っちゃってるのかな……。
そう思いながら初めの方に作ったキレイな球状のものや、弾むようにできないか試していびつな形になってしまった土の球を見ていると、姉さんが寄ってきた。
シラヒメに交互に乗っていたようだが今は兄さんが乗っており、俺がなかなか来ないうえに、近くには謎の土の球が複数あるので気になったのだろう。
「カーリーン、これなぁに?」
姉さんはそう言いながら、最初に作った重たい土の球をヒョイと持ち上げる。
ボーリング球くらいの大きさのそれは、姉さんが持つにも大きいのでさすがに片手ではないが、俺が持ち上げることすら諦めたものを、なんでもないように軽く持ち上げた姿を見て、驚きを通り越して呆れさえする。
――まぁいつもあんな大きさの剣を振ってる姉さんだしな……アレくらいの重さはなんてことないよな……というかアレすら持ち上げられなかった俺は、全然無意識に気力が使えてないってことか……【身体強化】とか他の魔法を使えば持ち上げるのは簡単だろうけど、そうしないと無理そうだったもんなぁ。
今はそんなことを考えなくてもいいかと思いなおし、作っているものの説明を姉さんにする。
「シラヒメと遊ぶようにボールが作れないかなぁと試してたんだよ」
「ふぅ~ん。でもこれ、結構重いわよ?」
手に持った土の球を軽く上に投げてはキャッチするのを繰り返しながら、姉さんがそう言う。
その姿からは"重い"などという感じは全くしないが、一応姉さんも"遊びに使うには重い"とは思っているらしい。
「そう。だからもう少し軽くできないかなぁとか、色々試してたんだよ」
そう言いながら中を空洞にして軽くし、落としても割れない程度には硬く作った球を手渡す。
俺でも持ち上げることができているから軽いと判断したのか、姉さんはそれを下から掬うようにして片手で受け取る。
「たしかにこれなら軽くていいわね」
「でも硬いから危なくないかなぁと……」
「たしかに石のように固いわね……」
姉さんは自身が言うように、石のように固く圧縮された土の表面を、コンコンとノックするかのように叩く。
――そうなんだよなぁ。土の球って言ってるけど、硬さ的には石の球と言ってもいいものだし。だからもう少し柔らかくしたいんだけど……そういえばオルティエンで稽古をするときに使ってた土人形は、硬度を変えてたっけ……うん? その時は【ロッククリエイト】じゃなくて【ソイルクリエイト】って唱えてたか?
そう思い出した俺は、【ソイルクリエイト】と呟いて土の球を再び作る。
俺のイメージが曖昧だったからか、出来上がった球は少しいびつで触れると土がついて汚れてしまうが、程よく柔らかく感じる。
――お? 触った感じはゴムボールとかソフトボールくらいの感じになったか?
そう思いながら感触をたしかめていると、姉さんがのぞき込んでくる。
「それだと汚れちゃわない? まぁ遊ぶんだから全然汚れないってことは無いけど……泥遊びしたみたいになりそうね?」
うちは貴族ではあるが外での汚れる遊びも許容する家なので、姉さんは昔そういう遊びをしたことを思い出したようにそう言う。
「まぁこれは試しに作っただけだから、もうちょっとちゃんとしたものを作ってみるよ。姉さんはシラヒメと遊んでていいよ? 俺もすぐにいけると思うから」
魔法のことなので姉さんには退屈だろうと思ってそう言うと、「そう? 分かったわ。早くきてね」と言って離れていった。
――それにしても【ロッククリエイト】って呟いたことで、イメージが石とか岩になっちゃってたんだな……これなら何も呟かない方がちゃんと作れてたかもしれない……というか、【アイテムボックス】のときのように【クリエイト:ボール】とか呟きながら作れば、思った通りのものができる可能性すらあるな。まぁ聞かれたときに面倒だから、【ソイルクリエイト】って言いながらそれらしいものになるようにするけど。
そう考えていると、今度は母さんが近くにきて話しかけてくる。
「どう? 納得のいくものはできそうかしら?」
「うぅ~ん。もう少しかな?」
「私は土魔法は苦手だからアドバイスとかはできないでしょうけれど、見ててもいいかしら?」
「うん。いいよ」
――最近は魔力量のことで心配されることもなくなったから、これは純粋に魔法が気になるからなのかな? まぁそれよりも、母さんが近くにいるからなおさら【ソイルクリエイト】で作るしかなくなったわけだけど……水魔法も使って柔らかく……どうせなら粘土質みたいにして、弾力のある感じにすればもっとボールっぽくなるか。
そいう風になるようにイメージしながら【ソイルクリエイト】と唱え、土の球を作り出す。
できあがった球は先ほどのものとは違い、きれいな球状で表面もツルッとしてして汚れそうな感じはない。
しかし実際に手に取ってみると、陶芸に使う粘土のようにすぐに手が汚れてしまった。
――まぁこうなるかぁ……前世で小さい頃に粘土遊びとかしたときは、あれは紙粘土とか油粘土だったからここまで汚れることは無かったけど、手に全くつかないってこともなかったしな……。
そう思いながら弾力の確認のために土の球を地面に落とすと、ベシャッという感じで軽くつぶれる。
「そっかぁ、つぶれちゃうかぁ……もう少しちゃんと強度も維持しつつ……形状が崩れないようにする方がいいか……?」
「はははは。さすが親子だなぁ。カレアも魔法のことになると、そうやって呟きながら考え込むことがあるよなぁ」
「うふふ、そうね。私の場合とりあえず"魔力を込めてみる"ことから始めるけれど、カーリーンが今作ろうとしているものはそういうわけにもいかないでしょうし、どうするのかしらね?」
いつの間にか近くに来ていた父さんの言葉に、微笑みながら母さんがそう答えている。
――魔力を込める、か……別に半永久的に使えなくても、遊ぶ間だけ維持できていればいいんだから、魔力を込めて形状を維持しつつ、表面も汚れないようにコーティングしてやればいいのか!
そう思った俺は再び【ソイルクリエイト】と唱え、土の球を作り出す。
見た目こそさっきと大差ないが、持ち上げてみてもてが汚れることは無かった。
「おぉ? 母さんパスっ!」
「え!?」
母さんは急に投げられた土の球を両手で受け止める。
「あら? 全然汚れないわね。それにすごく柔らかいわ」
手が全然汚れていないことに驚きつつ、受け止めたときに感じた柔らかさを確かめるようにつついている。
「地面に落としてみて?」
俺がそう言うと母さんは「えぇ」と返事をして、手を放す。
地面に落下した土の球はその弾力で弾み、落としたときの半分くらいの高さまで戻って来る。
母さんはそれをキャッチすると、感心したように声をあげた。
「すごいわね……」
「水魔法で表面を柔らかくしつつ、隙間をなくして弾むようにして、表面は汚れないように魔力で覆ってる感じだね。だからそこまで長時間は形を保てないけど、遊ぶ間くらいなら十分かなって」
成功したことが嬉しくて、イメージした内容をそのまま母さんに伝える。
「なるほど……これなら当たっても全然危なくないわね。それにしても土魔法でこんなものが作れるなんて、本当にすごいわ」
母さんはそう言って微笑みながら土の球を俺に返してくれる。
――まぁ魔法で生活や戦闘に使うものはともかく、こういう遊び道具を作るっていう発想自体が珍しそうだしなぁ……なんにせよ、これからはこれで遊ぶこともできるな!
そう思った俺は、さっそくその土の球を持って兄姉とシラヒメのもとへ向かった。
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