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165.2度目の飼育場

 じいちゃんが到着したようなので、みんなで玄関に向かう。


「おぉ。昨日のドレスも美しかったが、今日のドレスも似合っているぞ、エル。それにライも立派だぞ」


 馬車から降りてきたじいちゃんは、昨日とは違うドレスを着た姉さんと、普段よりキッチリした服装を着ている兄さんを褒める。


 ――そういえば兄さんは、こっちに来てからはほとんど動きやすい服装ですごしてたもんな。


 屋敷に入って話すほどの時間まではないらしく、そのまま玄関先で少し話をしたあと、それぞれの目的地へ出発するようだ。


「お茶会が終わる前にはこちらも終わると思うが、魔馬(まば)を連れて帰る関係で少し遅れるかもしれん」


「えぇ、分かったわ。使用人にも伝えてあるから、先に帰った場合は案内してもらってね」


「あぁ」


 そう話をしたあと、それぞれが馬車に乗り込んで出発した。


 姉さんは今日も不満そうにしているかと思いきや、朝の稽古で"俺の魔法を受ける練習への参加が許可されるかもしれない"と分かったことや、お茶会から帰ればシロがいて一緒に遊ぶことができるからなのか、上機嫌で「行ってくるわね」と言って手を振っていた。


 その様子を見て俺も手を振り返すと、俺とじいちゃんが乗った馬車も動き始める。


 俺たちは昨日と同じく町なかを通って北門方面に向かうが、お茶会へ向かう馬車はそのまま貴族街の中を通るらしく、途中で別の道になった。


 ――侯爵家のお茶会って言ってたし、普通に考えれば貴族街の中にあるだろうしな。


「そういえば、大伯父さんは先に行ってるの?」


「あぁ。魔法師団員や研究員と一緒に先に向かっている」


「あれ? 研究員さんって飼育場にいる人たち以外からもくるんだ?」


「今回は内容が内容だからな。他のモンスターの研究員も一応呼んだのだ」


 ――そっか。あそこにいるのはあくまでも魔馬の研究員だもんな。今回は"体内に魔石を持つ、モンスター扱いの魔馬に魔力を与える"という実験的なものだもんな。他のモンスターにも適応される内容かもしれないし、一緒にいてもらった方がいいのか。


「うまくことが進んで、シロを連れて帰れるといいなぁ」


「ははは。まぁ大丈夫だろう。そんなに楽しみか」


「うん、もちろん。それに姉さんやアリーシアさんも楽しみにしてるみたいだし、シロも昨日は我慢してもらってたから、屋敷に連れて帰ったら思い切り走らせてあげたいからね」


「そうだな。あぁ、そうだ。屋敷に連れ帰ってからでもいいのだが、シロの名前を決めておくといい」


「え、"シロ"じゃダメなの?」


「ダメということはないが、あの名前はあくまで飼育場で管理するためにつけられた仮の名前だからな。シロは私たちの言葉も理解しているようだから名前もすぐに憶えてくれるだろうし、せっかくだから付けてやってはどうだ?」


「うぅ~ん……名前かぁ……一応シロにも聞いてから考えてみるよ」


「あぁ、そうするといい」


 そういう話や朝の稽古のことなどを話しながら飼育場へ向かい、到着すると昨日と同じ職員さんに案内されて管理棟へ入る。


 向かった部屋は昨日とは違い、大き目のドアがある会議室のような広い部屋だった。


 そこには大伯父さんを含めて10人ほどがいて、入ってきた俺たちに視線を向けてくる。


「来たか」


「えぇ。みなへの説明は?」


「ちょうど終わったところだ」


 じいちゃんと大伯父さんがそうやり取りする中、俺は研究員らしき人や魔法師団員らしき人たちにチラチラと見られている。


 2人の話を邪魔するわけにいかないので何か言っているわけではないが、"なぜ子供が?"と言いたげなのは伝わってくる。


 ――俺が逆の立場でもそう思うしな……それにしても白衣やローブを着てるから、だれが研究員でだれが魔法師団員なのか分かりやすいな。


 そんなことを思っていると、俺に視線が集まっていることに気がついたじいちゃんが口を開く。


「あぁ。この子はオルティエン家の次男でな。今日は他の家族は予定があるから、私が預かることになったのだ。邪魔はしないし、大人しい子だから気にしないでくれ」


 じいちゃんが俺の頭に優しく手を置いてそう説明してくれるので、ペコリと頭を下げる。


「オルティエン家というと、昨日ご令嬢をお見掛けしましたね」


「昨日見掛けたということは、おまえはお披露目パーティーに参加していたのか?」


 ローブを着た男性の言葉に、じいちゃんが反応する。


「はい。息子も今年で7歳になりますので、私も参加しておりました。今日はオルティエン家のご令嬢も、侯爵様の所のお茶会に参加なされているのですよね?」


「あぁ、その通りだが。そういう事情があるのであれば、この時期はそれを理由に休暇の許可を出しているのは知っているはずだが、おまえは参加しなくてよかったのか?」


「はい。昨日は休みを頂きましたし、今日のお茶会には妻と息子は参加しておりますが、私は少々そのような場は苦手でして……それに、今回のこちらでの作業は、研究に大きな進歩をもたらす可能性がありますので、こちらに参加できる方が私にとっては嬉しいことなんです」


 熱意のこもった言葉に、じいちゃんは「そうか」と言いながら、納得したように頷く。


 ――目がイキイキとしてるし、俺が思ってる以上に今回の件は重要なんだな……それにしても、この人も昨日のパーティーに参加してたってことは貴族なんだろうけど、素直にお茶会の空気は苦手とか言っちゃうんだ……まぁ息子さんたちはお茶会に参加してるみたいだし、この人自身は"仕事があるので"と辞退しても問題はないんだろうな。うちの場合は両親ともにそういう場は苦手みたいだけど辞退する理由もないし、2人で参加することで負担を減らしてるのかもなぁ。


 そんなことを思っていると馬房の方へ向かうらしく、俺は遅れないようにじいちゃんに抱きかかえられて移動する。


 到着すると昨日と同じ魔馬たちが柵に入っており、具合が悪くなったりはしていないようで安心した。


 大伯父さんがシロのところから一番離れている魔馬の柵の前で、今日行う作業の最終確認をしているので、そのすきにシロに挨拶することにした。


「シロ、来たよ」


『うん。いらっしゃい!』


 シロは俺が話しかけようと近づく段階ですでに尻尾を振っていたのだが、そう返事をすると同時にその勢いも激しくなる。


「あはは。その様子を見ると、シロは元気みたいだね」


『うん。元気だよ! 今日連れて行ってくれるんだよね?』


「その予定だね。まぁまずは他の魔馬に魔力を与えるらしいから、それの確認をしなきゃいけないんだけど……」


『そっかそっか。それじゃあ私はそれまで大人しく待ってるね?』


「うん。あ、そういえばシロ」


『うん?』


「じいちゃんに"名前を付けてやってはどうだ"って言われたんだけど……シロは名前が変わっちゃっても平気?」


『それは君がつけてくれるの?』


「シロさえよければだけど……」


仮名(かめい)ではあるけど、ここの人たちに付けて貰った"シロ"という名前も気に入ってるよ。でも、君は恩人だし、そんな君が付けてくれるなら是非お願いしたいな?』


「そっか。うん、分かったよ。連れて帰ったころには、シロにも伝えられるように考えておくよ」


『うん! 楽しみにしてるね!』


「あ、あまりネーミングセンスはないから、過度な期待はしないでね……頑張るけど……」


 上機嫌に尻尾を振り続けているシロにそう言ってなでてあげていると、魔力を流す作業が始まるらしく、じいちゃんに手招きされたのでそちらへ向かった。

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