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162.魔力操作

 話をしながら広場の外周を回っていき、入口の反対側まで来た。


 道中でじいちゃんから「怖くはないか?」とか「お尻は痛くないか?」など、心配するように声をかけられたが、兄さんもいるからか恐怖心はないし、歩きの状態でこれくらいの距離であれば痛くなるほどではなかった。


 ――むしろ少し慣れてきて楽しくなってきたくらいだしな。


 歩き始めたときは、さすがに揺れを対処することに集中していたが、今は高い位置から見える景色や、会話に集中力を割いても問題なくなっている。


「シロは大丈夫?」


『うん、平気だよ。なんなら走ってみようか?』


「いや、それはやめて。多分俺は落ちちゃうから……本当にやめてね? 振りとかじゃないからね?」


 シロは上機嫌に言うが、元気になったことがバレることよりも、本当に落馬してしまいそうで怖いので念を押しておく。


 ――加護もあるから落馬したとしても大けがはしないだろうし、じいちゃんも横にいるから大丈夫だろうけど、怖いものは怖いからな……。


「おそらくシロが走ろうとしていたのだろうが、本当にカーリーンは慎重だな。うしろに兄もいて私も横にいるのだから、これくらいの時間乗っていれば"もう少し早く走ってほしい"って思う子もいるだろうに」


「俺はこれはこれで、風景を見て楽しんでるから十分だよ」


 シロに乗って視点が上がりはしたが、壁があるので遠くまで見渡せるわけではない。


 しかし、飼育場内部だけでもかなりな広さがあるので、メイン広場にいる他の魔馬(まば)たちの様子を見て、楽しんでいたのは事実である。


 俺から"楽しんでいる"と聞いたじいちゃんは、「そうか」と微笑みながら言ったあと進行方向へ向き直る。


 そのあとも、シロは俺のお願い通りに走ったりはしなかったのだが、最後に少しだけ駆け足になったことで、職員さんに驚かれた。


「やはり子供を見て、気持ちが高ぶっていたのでしょうね。とくに疲れている様子もないですし、よかったです」


 俺たちがシロから降りると、職員さんはホッとした表情でそう言いながらシロをなでていた。


 ――俺としては、最後のあの軽い駆け足状態ですら怖かったからな……まぁシロがうちに来れば、乗せる側としてのアドバイスも貰えるだろうし、乗馬の練習が始まったら頑張ろう。俺も走るシロに乗ってみたいし。


 散歩の時間が終わってシロも馬房へ戻り、他の場所も案内してもらったあと、最後に大伯父さんとじいちゃんは、職員さんと軽く明日の打ち合わせをして今日は帰ることになった。


 じいちゃんたちは早めに帰って連れてくる人を選んだり、その手続きもあるうえに、お披露目パーティー自体は昼間の早い時間に終わるらしく、姉さんたちもそろそろ帰って来るらしいのでいい時間ではある。


「それじゃあシロ、また明日くるね」


 そう言いながら頭をなでてあげると、シロは『うん。楽しみにしてるよ』と言いながら尻尾を振っている。


「それでは、明日また魔法師団のものも連れてくる」


「かしこまりました。お待ちしております」


 職員さんとの挨拶も終えて、馬車に乗って帰路へ着いた。


「わざわざその、魔法師団? っていうところの人を連れてくるの?」


 屋敷に着くまで時間もあるので、雑談がてら気になったことを聞いてみる。


「あぁ、騎士団の方にも魔法が使える者は多いが、やはり魔法を専門にしている魔法師団の方が魔力も多いし、間違いないだろうとな。魔法師団は騎士団などで使う魔道具の魔力の補充もやっているし、そういう技術があるものの方がよさそうだからな」


 じいちゃんの答えを聞いて、"なるほど"と納得しながら頷く。


「まぁ、魔力を通すだけならともかく、全員がそこからの繊細な魔力操作ができるわけではないがな」


「そうなの?」


「騎士団でも同じことが言えるのだが、ある程度の魔力操作を身に着け、戦闘で十分使えるようになったあとは、魔法の出力や魔力量をあげる訓練をするからな。魔法が使えたとしてもすぐに魔力不足になったり、威力が足りないのでは意味がないだろう? まぁどうしても伸びないものもいるが、そういうものは武術をみがいたりするし、隠密や探知など繊細な魔力操作が必要な魔法を鍛えるものもいるから、全員ではないがな」


 ――たしかに魔力量や威力は重要だろうしなぁ……ある程度魔法が使えるようになったら、そっちを鍛えるのも納得だ。


「そういえば母さんも"魔法発動までの魔力操作"と、"発動後の魔力操作"は別物って言ってたっけ」


「もうそんなことまで学んでおるのか。そもそも魔力を流すこと自体どちらかというと後者の技術が必要になるから、子供でそこまで出来るものはほとんどおらん……だからこそ、カーリーンがあのようなことができて驚いておったのだ」


 魔法の稽古のときに教えてもらったことをつぶやくと、大伯父さんが苦笑いながらそう言ってくる。


「まぁカレアの子だしな……カレアも幼いころから同じようなことが出来ていただろう?」


「あ、兄上は知っていたのか……」


 大伯父さんが続けて言った言葉に、じいちゃんがショックを受けている。


 ――どんどん幼い頃の母さんの秘密を知らない人が減っていってるが……本当はじいちゃん以外はみんな知ってたんじゃないだろうか……なんで黙ってたのかは知らないけど……。


「ん゛ん! まぁその話はいい。カーリーンの言った"発動後の魔力操作"の話だが、おまえの【ウォーターボール】の()()()()を見たところ、魔力操作は上出来どころか、すでに一般的な魔法使いより相当うまいからな」


「そこまでなのか」


 俺の魔法は氷魔法しか見たことがない大伯父さんが、驚いた表情で俺の顔を見る。


「あぁ。兄上も屋敷に帰ったら、カーリーンに見せてもらうといい」


「そうさせてもらってもよいか?」


 すでに書斎で氷魔法を見せているし、魔法を見られることに問題はないので「う、うん。いいよ」と承諾する。


 そのあとも雑談をしていたからか、屋敷に着くまでの時間は思っていたより短く感じた。


 まだ姉さんたちは帰ってなかったので、約束通り魔法を見せることになり、そのまま庭に出ることになったのだが。


「それじゃあ、カーリーン。いつも稽古で撃っているようにやってみてくれるか?」


「う、うん。それはいいんだけど……」


 じいちゃんに言われて返事をした俺の視線の先には、大伯父さんが剣を持って立っている。


 ――いやいや、なんで地面に撃つんじゃなくて、魔法を受けることになってるの!? それもじいちゃんや兄さんじゃなくて大伯父さんが! 先王陛下に魔法を向けるなんて……いや、まぁ魔法が直撃するとは思えないけどさ……。


「どうした? 疲れているなら日を改めるが……」


 大伯父さんが俺が戸惑っている様子を見て心配そうに言ってくれるが、魔法を撃つことは確定しているようなので諦めて準備をする。


「大丈夫だよ。ちょっと準備するね。【ウォーターボール】【ウォーターボール】【ウォーターボール】――」


「おぉ!? すごいな!」


 いつものように【ウォーターボール】を複数待機させると、大伯父さんが目を見開いてそう言ってくる。


「撃つよ~?」


「あぁ、いつでもいいぞ!」


 俺の言葉を聞いて大伯父さんが剣を構えたのを見て、魔法を次々発射していく。


【ウォーターボール】の軌道も、稽古のときにやっているように前半は真っすぐ飛ばし、後半は曲げたりしつつ飛ばす。


 最後の2発は急カーブさせて、ほぼ同時に当たるような軌道で飛ばした。


 さすがにすべてを父さんのように斬る事はできなかったようで、最後は回避して魔法同士をぶつけさせていたが、俺の予想通り当てるどころか全く濡らすことすらできなかった。


 ――先王陛下だとはいえ、政治のことばかりじゃなくて武術の心得もかなりあるんだなぁ……さすがじいちゃんの兄というか……実戦的な力もある王様だったんだな。


「ここまでの魔力操作ができるのか……となると明日連れていくものもしっかり選ばないとな……」


 大伯父さんが驚いた表情をして、そう言いながら戻って来る。


「一応そこは私の方でやっておくから、兄上は師団長への通達だけしてもらえると助かる」


「あぁ、分かった。それにしてもカーリーンの今後が楽しみだな」


「まったくだ」


 じいちゃんは大伯父さんの言葉に同意して俺を優しくなでる。


 そのあと一息入れると、大伯父さんは明日の準備もあるため帰って行った。

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