144.服屋さん
遅くなりました!
誤字脱字報告、いつも大変助かっております、ありがとうございます!
店内に入るとお香を焚いているのか、ほのかに甘い香りがする。
――看板とかもオシャレだったけど、店内も匂いにまで気を使ってて今まで入ったことのある店で1番オシャレだな……そして、それに見合うような可愛らしい服が多いから、俺の場違い感がすごい……。
「あ、これカーリーンにも似合いそう!」
「だねっ!」
場違いだと思っているのは俺だけのようで、姉さんとアリーシアは近くにあった服を見てそう言っている。
――そこのサイズは俺どころか姉さんたちにも大きいと思うけど、デザインを見て楽しんでるみたいだし、余計なことは言わない方がいいか。
「いらっしゃいませ、ナルメラド様」
「えぇ、今日はこの子たちのを買いに来たわ」
「あ、あれ? し、失礼ですが、カレアリナン様、でしょうか……?」
店員さんは伯母さんの言葉を聞いていつもより人数が多いことを確認したあと、母さんを見てそう聞いている。
「えぇ、久しぶりね。遅くなったけれど、開店おめでとう」
母さんの言葉で、この店員さんがさっき話していた隣の店の娘さんで、この店の店長さんだと分かった。
「お、お久しぶりです! そしてありがとうございます!」
母さんがカレアリナンだと確認すると、店長さんは嬉しいが少し恥ずかしそうな表情で頭を下げつつ、お礼を言っている。
「ということは、こちらはカレアリナン様のお嬢さま方なんですね」
店長さんは俺たちに視線を移し、笑顔でそう確認する。
「いらっしゃいませ、本日はご来店ありがとうございます」
「はいっ! 今日はリボンを見せてほしくて来ました!」
しゃがんで目線を合わせてくれた店長さんにアリーシアが元気に答える。
「かしこまりました。以前お見せした意匠のものをお持ちしましょうか?」
「えぇ、それを見せてほしいです! できれば色違いでおそろいが良いのだけれど……」
「うふふ。友達やその妹さんとおそろいがいいのですね。いろんな色がある物をお持ちしますね」
――妹って俺のことか。さすがにアリーシアさんの妹だとは思われていないようだけど……まぁアリーシアさんとも似てるけど母さんも一緒だし、そもそもアリーシアさんに妹がいたら知ってそうな間柄みたいだしな。
そう思っていると、姉さんが口を開く。
「可愛い服も多いから、そっちも見てみたいわ! カーリーンにも似合うものがありそうだし!」
「えぇ、かしこまりました。リボンを準備させている間にご案内しますね。ここにはズボンもありますし、普通のスカートが動きにくいという理由であれば、軽めの素材のものもありますよ」
店長さんは俺に視線を移し、俺の服装を確認して微笑んでそう言ってくれる。
――やっぱり女の子だと思われてるやつか……。
「姉さん、分かってるとは思うけど、前みたいにスカートとか履かないからね?」
「えぇー。試着だけしてみない?」
「え、カーリーン君履いてみたの!? 私も見たかったなぁ……似合いそうだもの……」
「ほら、アリーシアもこう言ってるわよ?」
「……スカートはいいよ……」
アリーシアには悪いが、前も条件付きで仕方なく着たようなものなので今回は断らせてもらう。
「むぅー……ならワンピース系ならいいのね? 今回も持ってきてるもの」
「ちょ、なんで知ってるの!?」
「カーリーンの部屋で寝た時に、カバンからはみ出てたわよ?」
――昨日は眠かったから、片付けは後にして寝巻だけ引っ張り出してたからな……朝起きてからちゃんと屋敷のチェストにしまったけど……。
「あー、えぇっと……男の子でしたか、申し訳ございません」
今の会話を聞いて俺が男の子だと認識した店長さんが、申し訳なさそうに謝って来る。
母さんを含めて誰もすぐに訂正しなかったので、少し不安げではあるが。
「え、いえ、大丈夫です、よくあるので……」
「カレアリナン様に似て、可愛らしいですもんね」
比較に母さんの名前を出されたことでうかつに否定もできなくなった俺は、「あ、ありがとうございます?」とあいまいな返事をして、店長さんの案内について行った。
「お嬢さま方のお洋服でしたら、この辺りのものになります」
姉さんとアリーシアは背や体格も似ているので、同じスペースに案内される。
近くにはもう少し小さ目なものも見えるので、俺のサイズもこの辺りにあるのだろうが、見たところ可愛い系なのでサイズは合っても俺が買うことはなさそうだ。
――前は寝巻代わりにもなるからってワンピース系を買ったけど、ここに並んでるものは部屋着というにはしっかりしてるものだしなぁ。
姉さんとアリーシアが服を見て楽しそうにしているのを眺めながらそんなことを思っていると、母さんたちが店長さんと話しているのが聞こえてきた。
「本当に自分の店を持てて良かったわ。お父さんはあなたに店を継がせたがってたから、どうなったか気になっていたのよ」
「父の革細工技術を学べたおかげもあるのでなかなか断りにくかったんですけど、ちゃんと分かってくれてよかったです……まぁ今でもたまに手伝わされているし、そうしやすいように店も隣にするのが条件でしたけど」
店長さんは頬をかきながらそう言っているがそれが嫌だというふうには聞こえないので、仲が悪くなったということはないのだろう。
「それにしても、あなたもすっかり美人な大人になったわねぇ」
「い、いいえ、いえいえ! そ、そんな! う、嬉しいですけど、カレアリナン様こそ、昔とお変わりなく可愛――美人のままで! 本当にご結婚される前と全然変わっていないので、すぐに分かりましたし!」
「ふふふ、ありがとう」
店長さんは唐突に褒められて焦ってはいるが、さすがに"可愛い"というのは失礼だと思ったらしく言いなおし、照れて視線をそらす。
「そ、そういえば、ずいぶん大人しいというか、大人びてますね?」
その視線の先に俺がいたので、さっきの受け答えなどを思い出したようでそう言っている。
「えぇ、そうなのよねぇ。でも言いたいことはちゃんと言うし、聞き分けもいいし良い子よ?」
母さんはそう言いつつ俺のあたまを撫でてくるので、恥ずかしくなって今度は俺が視線をそらすことになった。
視線の先は姉さんたちなのだが、その姉さんたちは1着の服を持ち上げて俺の方に向け、何か2人で話しているようだった。
「……これなんてどうかしら」
「でもカーリーン君スカートは履かないって……」
「このサイズならカーリーンが着たらワンピースみたいにならないかしら……?」
「さすがに短いんじゃないかな……結構足が出ちゃわない?」
「ズボンならまだいいけど、ワンピースとかでそれはちょっとまずいわよね……」
聞き耳を立ててみると、2人して俺に着させる服を探していたようで、そんな会話が聞こえてくる。
――普段着であれば女性でも普通にズボンを履いてるのを見るけど、さすがに素足はあまり出さないもんな……それが貴族となればなおさらだろうし。姉さんは運動する時とかはよくハーフパンツとかも履いてるけど、スカートの時はちゃんとソックスとか履いて素足は出ないようにしているし。
そんなことを考えていると、別の服を持って俺の方へ寄って来る。
「ほら! これなら問題ないわ」
「えぇ! でも肩回りとか結構大きくなっちゃうよね……」
「そうよねぇ……あ、こっちのならいいんじゃない? ほら、カーリーンも来て!」
「え、ちょ、ちょっと!?」
はしゃぐ姉さんたちの勢いに負けて、俺はサイズの合いそうな服が並んである棚へと引っ張られていくことになった。
ブックマーク登録、評価やいいね等ありがとうございます!
※お知らせ※
ツギクルブックス様より、「異世界に転生したけど、今度こそスローライフを満喫するぞ!」の第1巻が発売中です!
どうぞよろしくお願いいたします!





