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135.冷凍魔法

 ドラード以外は食べ終わったので、ドラードが買ってきた飲み物を飲もうと、コップを手に取る。


「あ、これお高いブドウのジュースじゃない?」


 口をつける前に、見た目と香りから中身が何か分かったレオナがそうつぶやく。


「シチューを売ってる店の近くにあったやつ?」


「あぁ。目についたからな」


 アリエスは一応、自分が思っているものと同じかどうかの確認をしたあと、コップを傾けて少し飲む。


「ん。美味しい……」


「飲み物までは高いものじゃなくてもいいかなぁって、いつも見るだけなんだけど美味しいわね」


ひと口飲んだ2人は素直に感想をもらし、特にアリエスが凄く幸せそうな顔をしているので、かなり好みだったのだろう。


「このあたりだと、これより安い食い物があるくらいだしな」


「それに、飲み物は魔法で水が出せるし」


 アリエスはそう言うと人差し指を立てて、【ウォーター】と唱え、小さな水の玉を出現させる。


「ほぉ。弓を持ってるから弓使いだと思っていたが、魔法も使えるのか。【ウォーター】を固定して出せるほどの技量があるなら、そっちがメインか?」


「ううん。私は弓使いで合ってる。魔力量もそこそこあるし、水魔法の適性が高いみたいだけど、攻撃魔法とかは使わない」


「だから戦闘で魔力を気にしなくていいから、野営時とかの火起こしや水の用意に使ってもらってて、助かってるわ」


 ――なるほど。野営とかも快適になるし、戦闘で魔法を使わないのには、そういう考え方もあるかぁ。


「レオナは土魔法が使えるから、野営の拠点作りは楽」


「拠点といっても、テント張るときに雨水が溜まらないように、溝や緩い傾斜をつけるとかの土台を調整したり、焚き火台を作ったりするくらいだし、飲食用やその他でも水を出してくれてるアリエスほどじゃないわ」


 あらたまって褒められているようなことを言われたレオナは、少し照れつつ早口でそう言う。


「レオナさんは、戦闘でも防御用とかに土魔法を使ったりしてるの?」


「えぇ、たまにね。まぁ魔力量はそこそこあるとはいえ、魔法ありきの戦闘は考えてなくて、基本は剣で受ける戦い方なんだけど、範囲攻撃とかされた時はさすがにね。って、よく分かったわね?」


「剣はさっき見えたけど、盾は持ってないみたいだからそうなのかなって」


「カー坊の父親は片手剣と盾を使うタイプの剣士で、防御面もしっかりしてるの見てるからな」


「なるほどねぇ。よく見てて偉いわね」


 唐突に褒められて照れくさくなった俺は、ごまかすようにジュースに口をつける。


 ――……あれ、これってルアードで飲んだものかな? いやブドウジュースはブドウジュースだしな……他にもあるだろう。


 そう思いながら、少し冷えているジュースを飲む。


「どうだ?」


「どうと聞かれても……美味しいとしか……あ、これルアードの?」


 飲んでいるとドラードがそう聞いてくるので、思っていたことをそのまま言う。


「お? 分かるのか」


「ほかのブドウジュースを飲んだことがないから、違いは分からないと思うけど……」


「はは。たしかにそうか」


「ほかのブドウジュースを飲んだことがないなんて……」


「ルアードはオルティエンからも近いから安いんだと思う。それでも普通のものよりは高いはずだけど」


 レオナは少し驚いているが、アリエスは地理を多少理解しているので理由も分かり、そこまで驚いてはいない。


「え、そんなに驚く……?」


「まぁ、ここでルアード産のブドウジュースを買う金額があれば、安いジュースが何杯も買えるってくらいだしな」


「そういえば安めの食事代くらいって言ってたっけ……」


 ――それは驚かれても仕方ない……2人は俺を貴族だと思ってないようだし。特に訂正するつもりもないけど。それにしても、このジュースはもう少し冷えてる方が美味しそうだよなぁ。


 再びジュースをひと口飲んでそう思った俺は、小さな声で【フリーズ】とつぶやく。


 ――無詠唱でも凍らせることはできるだろうし、冷やすだけだからすぐだろうけど、ドラードあたりは気づきそうだし一応声に出しとかないとな……。


 そんなことを考えながら魔法を使ったからか、魔力を強くしすぎて軽く凍ってしまった。


「あ……」


「ん? お? 何かつぶやいたかと思ったら魔法を使ったのか。一応冷やしておいたんだが、まだたりなかったか?」


 予想通りドラードは俺が魔法を使ったことにすぐに気がついたようで、声に出しててよかったと思いつつも、凍った表面を見てどうしたものかと考える。


「まぁ完全に凍ってるわけじゃないし、割ればいいか……【ロッククリエイト】」


 俺はスプーンを使うものを食べてないし、ドラードはまだシチューを食べており、レオナやアリエスから借りるわけにもいかないので魔法で作る。


「え!? カーリーン君、もうそんな魔法使えるの!?」


「え、あ……う、うん」


 ドラードとよくあるやり取りをしたせいで、つい家にいるような感じで魔法を使ってしまい、同じく土魔法が使えるレオナはもちろん、アリエスも目を見開いている。


「それでそのスプーンで何をするの? このジュースを掬って飲むの?」


 隣でドラードがシチューを食べているため、それを真似してジュースを掬って同じように飲むのだと思われた。


 ――まぁ子供ならやりそうだもんな……氷魔法の方はバレてないみたいだけど……まぁ多分凍ってるのは表面くらいだろうし、割っちゃえばバレないか。


 そう思いつつ、スプーンを突き立てるとあっさりと割れて、シャクッという音がする。


 ――うわ、思ったより凍っててシャーベットみたいになってる……まぁ結構濃厚なやつだったもんなぁ……。


 なんとかジュースってごまかせないかなぁと何回か突き刺してみるが、底の方まで程よく凍ってしまっていた。


 ――……溶けるまで放置するのもなんだし、仕方ないか……。


 レオナたちに知られても問題はないか、と思ってスプーンでシャーベット状になったブドウジュースを掬う。


「「え!? なにそれ!?」」


 2人は驚いているが、とりあえず掬った分を口に運んで食べてみる。


 ――おぉ~! まだ春先だからあまり食べ過ぎると寒くなりそうだけど、すごく美味しい……甘いものが好きな母さんなら、暖かい日に作ってあげれば喜びそうだなぁ。夏なら冷たくて気持ちいいから父さんたちも喜ぶか?


 そう思っていると、ドラードが追加で買ってきた分を食べきったようで、自分のコップを持つ。


「どうだ?」


「またそれ? 元々濃厚だからこれはこれで美味しいよ? ドラードもやってみれば?」


「だな。【フリーズ】」


 ドラードは俺と違って、最初から氷魔法を使えるのがバレてもいいと思っているようで、普通に声に出して魔法を使う。


「「氷魔法!?」」


 再び驚いている2人をよそに、ドラードはスプーンでコップの中をかき混ぜ、ひと掬いして食べている。


「おぉ……たしかに美味いな」


 ――やり過ぎて完全に氷にしちゃうんじゃないかと思ったけど、見ただけで加減までできるってすごいな……。


「これは濃厚だからこうなってるんだろうね」


 冷凍庫などでジワジワ凍らせるのとは違うので、他の飲み物がどうなるのか気になるが、それは夏場にやればいいと思って俺も自分の分を食べる。


「あ、あの、ドラードさん、私の分もやってもらえませんか?」


 俺たちが美味しそうに食べつつ感想を漏らしたので、気になってしょうがない様子だったアリエスが頼んでくる。


「おう、いいぞ。あんたもやるか?」


「お、おねがいします」


 遠慮していたレオナもそういって自分のコップを渡し、ドラードは2人のコップを片手ずつに持って【フリーズ】の魔法を使った。

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