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128.屋敷の探索

 伯父さんと別れたあと、俺はまだ通ったことない廊下の方を案内してもらっていた。


「奥さまとイリス様から事情はお聞きしておりましたが、カーリーン様がジルネスト様に何かされたわけではないようで、安心しました」


 廊下を歩いていると、リアミが苦笑しながらそう言ってくる。


「ひとり娘だもん。溺愛してるみたいだし仕方ないよ。でも実際は優しくなでてくれたり、今日も謝りにきてくれたから嫌われはしてないだろうし、そこは俺も安心したよ……あの話はナルメラド家に向かう直前に聞いたから、実際に会うまで不安だったからね……」


「ふふふ、そうですね。ジルネスト様は、幼い頃こそ奥さまを大切にしておられましたが、ご婚約されてからはイリス様を第一に考え、アリーシア様がお生まれになってからは、家族のことを更に大切に思っていらっしゃいますから」


「リアミは伯父さんの幼い頃も知ってるんだ?」


「えぇ。私とナイロは元々ナルメラド家に仕えておりました。旦那さまは貴族とのつながりも少なかったですし、奥さまも我々に良くしてくださっていたので、是非にと自分から申し出たのですよ」


「そっかぁ。それなのに、なかなか来られなくてごめんね」


「い、いえ! とんでもございません。王都の屋敷をお守りすると言い出したのは私たちの方ですし、ライニクス様、エルティリーナ様、カーリーン様と子宝に恵まれ、こちらに来られないのは仕方のないことです。出産を終えられ、体調を崩される方が悲しくなりますので。みなさま健やかに成長しているとの連絡だけでも嬉しいものですが、この度はお姿も見られましたし、更に嬉しく思いますよ」


「そ、そうだよね! あ、この先はなにがあるの?」


 思っていた以上に慌てさせてしまったのが申し訳なくなり、屋敷の話に戻すことにした。


 ――軽い気持ちで言っちゃったな……まだまだ貴族と使用人という立場の違いに慣れてない証拠だなぁ……気をつけなきゃ……。


「この先は厨房になりますね」


「ここには何人くらいいるの?」


「そうですねぇ。みなさまが滞在されている間()3人ですね。今回はドラードさんもいますから4人ですが」


「"俺たちがいる間は"ってことは、わざわざ雇ってるの?」


「えぇ。私の親戚のものを手伝いとして雇っております。町で食堂をやっているものなので、腕は確かですよ」


「うん、朝食もおいしかったもん」


「それはそれは。料理人たちも喜びます」


 そんな話をしていると厨房のドアが開いて、1人の女性が出てきた。


「あ、お母さ――メ、メイド長! ちょうどよかった、です」


 出てきた女性は20代半ばくらいで、でてきた場所とコック服を着ていることから、料理人だとすぐ分かる。


 その女性はリアミを見かけて話しかけたが、手をつないでいる俺が目に入って、すぐに言葉遣いを改めた。


 ――お母さんって言いかけてたから、この人がうちで正式に雇っているリアミの娘さんかな?


「……どうしたのですか、アミン」


「えっと、昼食の相談で――相談がありまして。予定していた食材じゃない――食材とは違うものを使いたくて」


 アミンと呼ばれた女性は、リアミに料理のことで相談をしたいようだが、俺がいるので言葉遣いを気にしているらしく、チラチラと何度も俺の顔色を伺いながら言い直している。


「俺のことはいいから、いつも通りの話し方でいいよ?」


「カーリーン様もこうおっしゃっているから、そうさせてもらいなさい」


「あ、ありがとうございます!」


 アミンはホッとしたように笑って、お礼を言ってくる。


「それで、食材が足りないの?」


「いや、食材が足りないわけじゃないんだけど、ドラードさんに教えてもらったソースに使う食材が、ちょうど今うちにはなくて……」


 ――そっか、厨房だもんな。ドラードもきてるか。


 アミンが理由を説明していると、再び厨房のドアが開いて、立派な黒紫色の角がニュッと出てきた。


「おーい、許可をもらいに行くんじゃ、って、お? カー坊じゃねぇか」


 いつまでたってもアミンの声が聞こえていたからか、顔だけ出して確認しに来たドラードは、俺が一緒にいるのを見つけて、ニカッと笑って廊下に出てくる。


「こっちの屋敷に来ても厨房に遊びに来るとはなぁ」


「いやいや、ここに来たのはたまたまだよ。今は屋敷の案内をしてもらってたところ」


 ドラードがニヤニヤしながらなでてくるので、現状の説明をする。


「それで、食材が足りないの?」


「ん、あぁ、料理の話になってな。アミンは勉強熱心なのか"今すぐ作ってみたい"って言いだしたんだが、丁度切らしてるみたいでな。来る時に使わなかった食材の中にもそれはなかったから、買いに行っていいかの許可を貰いに出たんだが」


「そこにちょうど俺たちが通りかかったから、話をしてたんだね」


「あぁ。それで、どうなったんだ?」


「それは今から買いに出て、昼食に間に合うものなのですか?」


 ドラードの口調は両親から聞いているのか、特に気にしている様子はないリアミが、ドラードにそう問いかける。


「ん~。ギリギリ……いや、アミンに作らせるから、間に合わないか」


「そうですか、それなら昼食後に配達してもらうように手配しましょう」


「昼食には間に合わないが、俺は特にやることもないし、俺が買ってくるぞ? まだ市場を見て回りたいしな」


「あ、それなら俺も行きたい!」


「お? それなら一緒に行くか!」


 俺が元気よく言うと、ドラードはニカッと笑って即答してくれる。


「さすがに旦那さまに許可を貰わないといけませんよ?」


「うん。父さんに許可を貰いに行こう!」


 リアミは勝手に決めようとしたドラードに注意し、"町に行けるかもしれない"と興奮している俺の様子を見て微笑む。


 アミンは厨房に戻り、お出かけの許可をもらうためにドラードを連れてリビングに戻ると、兄さんも別のところに行っているようで、両親しかいなかった。


「探索は終わったのかしら? あら? ドラードも一緒なのね」


「うん。あれ? 伯父さんは?」


「ジルも忙しいからな。伝言だけ伝えてすぐに帰ったぞ。って、来てたことを知ってたのか」


「ま、まぁね」


 ――そんな忙しい中、わざわざ謝るためにも来てくれてたのか……誠実な人なんだなぁ。


「それで、あとでライたちにも伝えるんだが予定が入ってな、昼から俺とカレアはちょっと出かけてくる……」


「貴族からのお誘い?」


 両親の気乗りしていないような表情から察してそう聞くと、父さんは苦笑しながら「あぁ」と返してくる。


「その間あなたたちは、お父さまのところで見てもらえることになっているから、昼食を食べたら出かけるわよ」


「あ、ちょっとドラードが買い物に出るらしくて……俺もそれについて行きたいんだけど……」


「うぅ~ん。そうねぇ……」


 ――あー、こっちも出かける予定入ってるなら難しいかなぁ……。


「買い物が終わったら、俺がナルメラド邸まで連れて行くぞ? それに、カー坊は聞き分けもいいし

 、そろそろお使いの練習させたいんじゃなかったか?」


 俺が今回の買い物は断念しかけていると、ドラードがそう言ってくれて、両親は再び悩みだす。


「買い物の練習はオルティエンでやらせるつもりだったんだが……王都は広い分治安が悪い場所もあるしなぁ……」


「オレが負けるとでも?」


 ドラードが"何を言っているんだ?"という風にそう言うと、父さんは苦笑している。


「いやいや、それはないと分かっているが、万が一そうなった場合にカーリーンが"外は怖い"と思わないかどうか……」


「大丈夫だよ! 魔法の稽古でも父さんたちに撃ったりと、色々練習もしてるし!」


 ――伯父さんのことを親バカだなぁって思ってたけど、父さんもこういう時は結構過保護なんだよな……いや、大切にされてるのはいいことなんだけど。


「んー、まぁそうだな」


 ――それに、こうやってちゃんと理解してくれるから、本当にありがたい。


 買い物に出ることを許してくれるようで、注意事項などを聞きながら、初めての町にワクワクしていた。

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― 新着の感想 ―
主人公の年齢3歳が凄いノイズになる。作者は3歳児見た事無いのかな?
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