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126.魔法のお披露目

 庭といっても玄関側に広がっている方ではなく、本邸の裏手にある方へみんなで出る。


 ガゼボや噴水などがある表側と違って裏手には殆ど何もなく、オルティエンにあるうちのように、稽古などをするための広場のようになっていた。


 魔法や武技などを使うこともあるのか、ある程度の広さには草すら生えておらず、土の色が違う場所があるところを見ると、稽古などでできた穴を埋めなおしているのだろうと推測する。


 ――まぁじいちゃんがあんな感じだもんなぁ。伯父さんも多分そうだろうし、こういう場所があるのも納得だわな……。


「それじゃあ、土魔法から使ってみましょうか」


 母さんはみんなより一歩だけ前に出ている俺にそう言ってくる。


 両親と兄姉は気にならないのだが、伯父さんたちとじいちゃんたち、さらにはそれぞれの執事さんとメイドさんが1人ずついるので、結構な人数になってしまっており、そんな中で俺だけ魔法を見せることに緊張している。


「ふふ、大丈夫よ。いつものように気軽に使いなさい」


 そんな俺の緊張具合が伝わったのか、母さんは優しい声色でそう言いながら撫でてくれるので、いつもの調子を取り戻した。


「作るのは机と椅子でいいの?」


「えぇ、それでいいわ」


 一応振り返って母さんにそう聞き、しゃがんで地面に手をつく。


「【ロッククリエイト】」


 そう唱えると、道中で作ったものより少しだけ広い机と、背もたれのない椅子が出来上がる。


「おぉ……これだけの大きさのものを、こんなに正確に作れるのか……」


「しかも丈夫さも十分あるようだな……」


 じいちゃんが机に近づいて触りながら感嘆の声をあげている横で、伯父さんも同じように触りながら出来栄えを評価してくれる。


「よければ座ってみて。地面に固定されてるから背もたれとかもない、簡素な椅子だけど……」


「来る時に作ったものより大きいのは、みんな座れるようにしてくれたのね」


義父上(ちちうえ)たちも座ってやってくれ。丈夫さは俺が保証する」


 この中で一番大柄な父さんがそう言って座ると、じいちゃんや伯父さんたちも席につく。


「ちゃんと圧縮されているからか汚れることもない……むしろ磨いたのかと思うほど手触りが良いな……」


「すでにこれだけの技術があるならば、分離しているものもすぐに作れるようになるだろうな」


 ――そっか、別に地面にくっついてなくてもいいんだ……まぁ防御に使うならこっちの方が良いんだろうけど。


 じいちゃんの言葉を聞いてそう思いながら席につき、早速試してみることにした。


「【ロッククリエイト】」


 すると、机の真ん中に直径40センチほどのお椀型の器が出来上がり、カコンッというそれなりに硬いもの同士がぶつかる音がする。


「……すでに作れたか……」


 じいちゃんはそう呟きながら、複雑そうな笑みを浮かべて俺の方を見ている。


「それじゃあ次は氷魔法ね」


「うん。【アイス】」


 母さんにそう言われた俺は、先ほど作った器の方に手をかざして魔法を使うと、器にぴったりはまるような大きさの丸い氷が出現して、ガコンッという音と共に器に収まる。


「こんな大きさのものを作れるのか!?」


「てっきり、冷やす程度かと思っていたがこれほどとは!?」


 大人たちは目を見開いて驚いているが、姉さんやアリーシアは嬉しそうに目を輝かせて喜んでいるように見える。


 子供なら大人たちの反応を見て萎縮してしまう可能性もあるが、俺が土魔法を使ってからのじいちゃんと伯父さんは、たしかめるタイミングや仕草、驚く表情があまりにも似ており、"親子だなぁ"と思って笑いそうになってしまう。


「道中ではもっと小さいものだったわよね?」


「え、うん。土魔法と一緒で形状も変えられるよ。【ロッククリエイト】【アイスクリエイト】」


 母さんに不思議そうに聞かれたので、そう言って魔法を何度か使い、別の平たい器の上に20センチくらいのブロック形状や、片手剣のような形状の氷を出す。


「剣だ!」


「このような造形まで……」


「溶けて濡れるから持たない方がいいよ」


 姉さんなら剣の形状でいい反応をしてくれると思って作ったが、持つ可能性まで考えていなかったので一応注意しておく。


 ――魔力を調整すれば溶けにくい氷とかも作れるか。何なら木剣の代わりにもできるかな? いやそれをするなら土魔法の方だよな……冷たいから長時間持ちたくないし……。


「魔力は大丈夫なのか?」


「ちょっと見せてもらうわね。【魔力視】…………ビックリするくらい減ってないわね……かなり適性が高いのでしょうね」


 突然の久しぶりの魔力量測定に一瞬不安になったが、母さんは微笑んでなでてくれたので、特に不思議がられているわけじゃないと分かって安心した。


 じいちゃんは母さんの言葉を聞いて、少し驚いていたようだが。


「カレアが【身体強化】以外の付与魔法を……」


 伯父さんも一緒に驚いているようだったが、別の事で驚いていたようだ。


 ――母さんは付与系の魔法は殆ど使わないっていってたもんなぁ……伯父さんが驚いてるってことは本当に昔からそれらは使ってなかったんだろう……。


「手紙に書かなかったかしら?」


「書いていなかったな。父上たちからも聞いていない」


「ふふ。まぁ子供たちのためよ。おかげで魔法の稽古ははかどっているし、私自身、昔より魔力量は多くなっているし、強くなっているわよ?」


「すでに称号を貰っていたおまえがさらに強くか……それは恐ろしいな」


 伯父さんは口ではそう言っているが、どこか嬉しそうに母さんを見ている。


「それならこちらにいる間、時間があればまたアリーシアの魔法をみてくれるか?」


「えぇ、もちろんよ。何ならお茶会よりそっちを優先したっていいわ」


「……そこまでではないが……」


「よろしくおねがいします、カレア叔母さま!」


「アリーシアもやる気があるようだし、それでもかまわん!」


「いや、少しは出てもらわないと困るぞ……」


「ふふふ、えぇ、少しは参加するわ」


 伯父さんの親バカ発言を聞いて、じいちゃんが呆れたようにため息を吐きながら言うあたり、この行動はいつものことなのだろうと思う。


「魔法の稽古となると、またカーリーン君と一緒にですか?」


「えぇ、もちろんよ。カーリーンとじゃ嫌かしら?」


「いいえ! 嬉しいです! またよろしくね、カーリーン君!」


 俺と一緒に稽古ができることがよほどうれしいのか、さらに喜んでいるように見える。


 そんな姿を見た伯父さんは、なんとも言えない表情で俺とアリーシアを見ていたが、俺にはどうしようもないので気がついていないふりをした。


「私も剣の稽古したい!」


「うぅ~ん……エルはパーティーの予習とか、他にもやることがあるのだけれど……」


「予定より早く着いたから時間はあるしいいだろう。稽古用の剣ももってきてあるしな」


「ちゃんとパーティーのことも忘れないならいいわよ」


「うん! ちゃんとやるわ!」


「それならうちの騎士団の所にもいくといい。どうせフェディは呼ばれているのだろう?」


「あぁ。それに機会があれば連れて行くと約束しているしな」


 じいちゃんの言葉に父さんは少し苦笑しながらそう答えると、兄姉は嬉しそうな表情に変わる。


「エルの話は聞いているから、実際にこの目で見るのが楽しみだな。ライも以前よりどれほど成長したか楽しみにしているぞ」


 伯父さんにそう言われて、兄姉は元気よく返事をする。


「旦那さま、お食事の用意が整いました」


 メイドさんから伝言を受け取った執事さんが、伯父さんにそう伝える。


「それじゃあ、まだまだ話したいこともあるだろうが、ひとまず移動しよう」


 そう言ってみんなが席を立ったのを確認して魔法を解除し、それを待っていた母さんに手を引かれながらみんなと一緒に屋敷の中に戻った。

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