124.伯父さん
1度書き上げてから、ほぼ書き直したので遅くなりました……
書き直す前の話はちょろっと活動報告に書いてます(´・ω・`)
大人たちは、母さんと伯母さんがはしゃぎながら話をしており、父さんはたまに相槌を打つくらいのようだった。
子供たちの方は、久しぶりに会う姉さんとアリーシアが、母さんたちと同じ様にはしゃぎながら話をしている様子を、これまた父さんと同じ様に、兄さんと俺がたまに相槌を打ちながら聞いているという状況だった。
「ライお兄さまもカーリーン君も来てくれて嬉しいわ」
大人グループとは違い、姉さんとアリーシアは2人だけの話はほどほどにして、兄さんや俺にも話しかけてきた。
「アリーシアさんも元気そうで良かったよ」
「えぇ。そうそう! カレア叔母さまに教わった魔法をお父さまに見せたら、すごく喜んでもらえたの!」
――うちで稽古をする前のアリーシアさんでも、十分優秀といわれるレベルだったんだもんな……威力はまだまだだけど、一応攻撃魔法が使えるようになって戻ってくれば、そりゃあ喜んでくれるか。
俺はそう思いながら「稽古頑張ったもんね」というと、アリーシアは嬉しそうに「うん!」と返事をしてくる。
「カーリーンは、土魔法とかも使えるようになったわよ。道中で机とかを作ってたけどキレイだったわ」
「カーリーン君、土魔法にも適性があったのね! あとで見せてほしいわ!」
俺の報告を姉さんが自慢げに話すと、アリーシアは少し驚きながら興味津々といった様子でそう言ってくるので、俺は「いいよ」と返事をする。
――まぁ使うだけなら特に負担もないしな。それに氷魔法のことも母さんがじいちゃんたちに話すだろうし、そっちも見せることになりそうだなぁ。
そんな感じでお互いのことを話していると、トイレに行きたくなってきた。
「ごめん、ちょっとお手洗いに行きたいんだけど」
「私が案内してあげるわ」
俺たちが家に来たことがよっぽど嬉しいらしく、アリーシアが笑顔でそう言ってくれるが、姉さんたちと一緒に他の場所の案内ならともかく、トイレへの案内をしてもらうのはちょっと気まずい。
そう思いながら待機しているメイドさんの方を見ると、目が合って微笑んだあと近づいてくる。
「お嬢さま、カーリーン様は私がご案内いたします」
「えぇ、わかったわ。お願いね」
そのメイドさんは俺たちの会話が聞こえていたらしくそう言ってくれるので、両親にもトイレに行ってくることを伝えて部屋を出る。
メイドさんの案内で、応接室に行くときに通った廊下を少し戻り、途中で曲がるとそこにトイレがあるようだ。
――この世界でも水洗トイレなのは安心したな……水道はなくても水が出る魔道具はあるし、本当に生活面は快適だよなぁ。
そう思いながら用を足して手を洗って出ると、帰りもちゃんと案内してくれるようで、メイドさんが待機していた。
――そこそこ近かったし覚えてるけど、見た目はまだまだ子供だし仕方ないか。勝手にウロウロされるのを防止する意味合いもあるかもしれないけど。
応接室までの経路は覚えているので、帰りは俺が前を歩いて廊下を曲がろうとした時に、エントランスの方から歩いてきていた人と、危うくぶつかりそうになった。
「す、すみません!」
焦って謝りながら見上げると、その人は軍服のようなきっちりとした服を着ている男性で、じいちゃんに似ているその顔は少し驚いているような表情をしていた。
――じいちゃんのように髭はないけど、凛々しい目つきと髪や目の色がじいちゃんと同じだし……もしかしなくても伯父さんなのでは……。
「おかえりなさいませ、旦那さま! お客様をお手洗いへご案内しておりました」
俺の予想は当たっていたようで、メイドさんが挨拶のあとに現状の説明をしている。
「は、はじめまして、ジルネスト様。ぼ、僕はオルティエン家次男のカーリーンです」
――まさかこんな不意打ちのようなタイミングで出会うことになるとは……焦ってちょっと言葉に詰まったけど、言葉使いは大丈夫だったよな?
お辞儀をしつつ自己紹介をして顔をあげると、伯父さんはさらに驚いたような表情をしたあと、何か悩んでいる表情に変わる。
「あ、あぁ。はじめまして。そうか君が……」
「ど、どうかしましたか?」
「いや。聞いていた以上に似ているなと思ってな……しかし、君が私の娘と……」
――その不穏な言葉の切り方やめて!? 本当に何もないから!
そう不安に思いながら、伯父さんの口から出てくる次の言葉を待っていると、フッと気を緩めたように微笑む。
「はは、いや、すまない。君は賢い子だとカレアや娘からも聞いているし、先ほどの挨拶で私も分かった。だから正直に話すんだが……娘の口から男の子の話が頻繁に出てくるとちょっとな……会ったら少しくぎを刺してやろうかと思っていたんだが……」
――まだ3歳の俺にそんなこと言おうとしてたの!? いや、この世界だと幼いころから婚約者が決まることもあるらしいし、一人娘が楽しそうに異性との話をするのがモヤモヤする気持ちも分からなくはないけどさ……。
そう思いながら苦笑していると、伯父さんは目線を合わせるためにしゃがみこんで優しく頭を撫でてくる。
「まぁ、カレアの小さい頃に似ているとは聞いていたが、想像以上だな。瓜二つじゃないか……目の色こそ違うがアリーシアとも似ている……私が注意するのを躊躇ったり、その気が失せるほどにな。もちろんアリーシアは、もともと注意されるようなことはしない良い子だが」
親バカのような発言をしながらも、優し気な表情でそう話している。
――たしかにアリーシアは素直で良い子だしな。それにしても、来るまでは不安だったけど、今の伯父さんを見ていると大丈夫そうだな?
「そ、そうですね、アリーシアさんは稽古も熱心に取り組んでいましたし、優しい子ですもんね」
「あぁ。その通りだ……やはり念のため一応言っておくが、やらんぞ?」
「いやいや、俺たちは従姉だよ? さすがに近すぎるでしょ……いや、濃い血筋を残すためにそういうところもあるのかな……」
――前世でも日本では従姉との結婚はOKだったし、血筋を重んじる家では普通にありそうだよな。まぁまだ子供だし、良い子だとは思ってるが、アリーシアさんとそういう関係になりたいと思ってるわけじゃないが……。
「はははは。本当に賢いようだな。それにそれが素の話し方か?」
責められる事はなくなったとホッとして油断していたのもあり、唐突な警告に対してついいつもの口調で話してしまうが、伯父さんは機嫌がよさそうに笑ってそう言う。
「すみません、ジルネスト様……」
「いや、気軽な口調でかまわないぞ。私の呼び方も、堅苦しい呼び方じゃなく"伯父さん"でいい。ライにもそう言ってあるからな。ところで君は魔法がすごくうまいと聞いているのだが」
「そ、それは、小さい頃から魔法に興味があって、母さんに色々と教わって練習したから、かな……?」
「ははははは! 小さいというが、今でも十分幼いだろう。あ、いや……そうか、そうだな……その頑張りがあったおかげだろうな」
豪快に笑っていた伯父さんは、言葉の途中で何かを思い出したように納得した表情に変わり、優しい手つきで撫でてくれる。
――たしかにまだ幼いし、変なこと言っちゃったな……伯父さんの変わりようは、俺の病気のことを思い出したのかな……魔法が使えるようになってからは、魔法技術が長けてるっていう報告ばかりで、俺が病気だったってことを感じさせてない証拠かな? まぁ俺自身ソレを忘れかけてたけど……。
「ま、まぁそのあたりの話は母さんからもあるだろし、とりあえず応接室に行かない?」
「あぁ、そうだな。どれ、抱いて行ってやろう」
伯父さんはそう言うとヒョイッと俺を抱き上げ、「ははは、やはりまだ軽いな」と笑いながら言い、そこまで離れていない応接室まで、俺は素直に抱かれて向かった。
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