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123.ナルメラド家

 準備といっても、出かける可能性があったのでお風呂上がりに服は着替えており、お土産などは馬車にそのまま積んであるので、すぐに出発できる状態だった。


 今日は新型の馬車の感想などの話もあるため、夕飯はナルメラド邸で食べることになるらしく、時間が空いたドラードは自由時間になったので町へ買い出しに行くようだ。


 ――俺もできればドラードと一緒に行きたかった……まぁさすがに伯父さんも、実際に会えばこんな子供相手にアレコレ言うことはないだろうし、そこまで気にしなくても平気かなぁ。


 そう自分に言い聞かせつつ馬車に乗り込み、ナイロたちに見送られながら門を出る。


 ナルメラド家の屋敷は、公爵家ということもあってうちより王城に近い位置にあるらしいのだが、うちも辺境伯という上位貴族かつナルメラド家の親戚ということで、それなりに近い位置に屋敷が建てられているので、そこまで離れているというわけではない。


 つまり、出発前に少し不安になってしまった気持ちが完全に落ち着く前に、ナルメラド邸へ到着してしまった。


 ――早いよ……いやまぁ旅と違って、短距離なら速度を出しても馬の負担にならないから、そうするのは理解できるんだけどさ。貴族たちの屋敷がある区画だから人通りも少ないし、あの速度で走っても振動が少なかったから性能が高いことも実感できたけど、今回に限ってはもう少し時間が欲しかったよ……。


 道中で見たどの家よりも装飾が凝っているゴツい門が門番によって開かれるので、そう思いながらも覚悟を決めて入っていく。


 ――さすが公爵家……庭にある噴水やガゼボ、色とりどりの花がキレイに植えてある庭園とか、かなり装飾も凝っていて見るからに豪華だなぁ。


 門から屋敷までもそこそこ距離があり、庭を見ながらそう思う。


「敷地内に林とかもあるし、かなり広いね……」


「ふふ。フェディも初めて来たときは、同じようなこと言ってたわね」


「ライは逆に落ち着いてたから、それには驚いたがな」


 ――勉強熱心な兄さんは、こうなってるって分かってたのかな……前世の知識があるから俺も考えてはいたけど、他の貴族の屋敷とかを見たあとに実際にここを見ると、声に出して言いたくもなるよ。王都内の敷地に、この規模の所有地があると思わないじゃん……。


 正面にある本邸と思われる屋敷はかなりデカく、さらにはじいちゃんたちが暮らしている別邸や、客人用か使用人用なのか分からないが他にも建物が見え、敷地はかなり広い。


 周りを見て話をしたうえに、緊急というわけではないため敷地内に入ってからはゆっくりと玄関まで進んだので、落ち着く時間はあったと思うが、やはり初めての挨拶ということで緊張はしている。


 とうとう玄関についてしまうと、待機していた執事さんにドアを開けてもらい、馬車から降りる。


「お待ちしておりました、オルティエン様。ご案内いたしますので、こちらへどうぞ」


 執事さんがそう言って玄関を開け、部屋まで案内してくれる。


 ルアード伯爵邸と比べると、こちらは彫刻などの調度品も飾ってあるが、やはり軍関係の家だからか鎧や武具の方が多い。


 執事さんの案内で広い廊下を進み、目的の部屋のドアを開けてくれるので、みんなで中に入る。


 高そうな敷物や調度品などが飾られており、食事の時に使うようなテーブルではなく、ローテーブルとソファーのセットだけ置かれているので、おそらく応接室だろうと推測する。


 あとから来たメイドさんにお茶を出してもらって一息ついていると、ドアがノックされ、「奥さまとお嬢さまがおこしになりました」とさっきの執事さんの声が聞こえてきた。


 ――あれ? 旦那さまって言わなかったってことは、伯父さんはまだいないのかな?


 そう思っているとドアが開き、2人の女性が入ってくる。


 1人はアリーシアで、入ってきて俺たちの顔を見るなり、声には出していないが輝くような笑顔を見せる。


 もう1人は奥さまと言っていたので、俺からすれば伯母さんであり、アリーシアのお母さんなのだが、思っていた以上に若々しく、アリーシアと同じく紫色の目をしている、優しそうな女性だった。


 伯母さんは俺の顔を見て一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに元の柔らかい笑みを浮かべる。


「ようこそ、オルティエン家の皆さま、お待ちしておりましたわ」


 伯母さんは俺たちが立ったと同時に、にこやかに挨拶をしてくる。


「このたびは、お招きくださり、ありがとうございます」


「ふふ。堅苦しいのはこれくらいにしておきましょうか。久しぶりね」


「イリス様もお変わりないようで」


「カレアは本当に久しぶりねぇ!」


「えぇ、子供たちがいるから、なかなか王都までは来られなくてねぇ」


「ふふふ。そうよねぇ、遠いものね。だからこそ今回は来てくれて、本当にうれしいわ!」


 伯母さんの名前はイリスというようで、母さんとも仲が良いらしく、手を取り合って再会を喜んでいる。


 ――前にリデーナから話を聞いた感じだと、伯父さんはシスコン気味だったみたいだし、その婚約者となるとヤキモチをこじらせて大変なことになってたかもしれないけど、仲がよさそうでよかった……。


「ほら、あなたたちも挨拶しなさい?」


「お久しぶりです、イリス伯母さま」


「えぇ、また一段とたくましくなったわね」


 兄さんが挨拶すると、微笑んでそう返している。


「は、はじめまして、オルティエン家長女のエルティリーナです」


「はじめまして。私はイリスよ。よろしくね」


 姉さんも少し緊張しつつも、しっかりと挨拶をする。


「初めまして、僕は次男のカーリーンです。よろしくお願いします」


 ちゃんと一人称も調整しつつ、当たり障りない自己紹介をする。


「ふふふ。カレアからの手紙はもちろん、アリーシアからもよく話を聞いているわよ」


「そ、それは! い、一緒に魔法の練習とかをしてて、すごかったっていう話だから!」


 アリーシアは俺の話をしていたのがバレたことが恥ずかしいのか、早口気味に弁明している。


「うふふ。まぁ色々と聞いているけれど、本当にあなたたち似ているわねぇ」


 イリスの前に立って弁明していたアリーシアと俺の顔を交互に見つつ、微笑みながらそう言ってくる。


「髪を下ろして目をつむれば、昔のアリーシアと見分けがつかないんじゃないかしら? 本当に男の子?」


「お、お母さま、失礼ですよ」


「あら、ごめんなさい! 別にいじめてるわけじゃないのよ? 可愛かったからつい……」


 イリスは娘にしかられ、焦ったように謝ってくる。


「い、いえ、結構言われ慣れているので大丈夫です」


 ――面と向かって男の子か疑われるのは久しぶりな気がするけど、"可愛い"とは度々言われてて慣れちゃったしな……。


「ところで、お兄さまは?」


「もうそろそろ帰ってくると思うのだけれど……まぁとりあえず座って話しましょうか」


 イリスがそう言うので、みんな座って話を聞くことにした。


「グラニトが書状を持ってきた際に、王城にも知らせを送ったのだけれどね、これくらいには帰宅できるから構わないと書状を預かってきたから、グラニトに持たせたのだけれど……なにか急用が入ったんでしょうね。でも遅くなるなら別の連絡が来てたと思うから、そろそろ帰ってくるはずよ」


「それなら、しばらくは積もった話もできそうね?」


「うふふ。そうね。何から話しましょうか。ある程度は手紙でもやり取りしていたけれど、書いていないこともたくさんあるもの」


 伯父さんが帰ってくるまでの間、大人同士、子供同士で話をして待つことになった。

ブックマーク登録、評価やいいね等ありがとうございます!

ちょっと伯父と出会うシーンを考えた結果、伯父との対面は次回になりました。


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第1巻
― 新着の感想 ―
>本当に男の子?」  ◇ ◇ ◇ ↑これ子どもを傷付ける発言。こんな事を言う無神経な大人は子どもから遠ざけた方が良い。 子どもが|自我《アイデンティティ》を確立する為に『自分は日本人だ』『⚪︎×…
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