109.出発
先週は忙しくて、投稿できなくてすみませんでした!
食材などを積み終わったドラードが屋敷に戻ったので、"俺たちも一度リビングに戻ろうか"と父さんと話をしていると、門の方から荷物がくくり付けてある馬を連れた男性が入ってきた。
「おぉ。きたか、グラニト」
「えぇ、今回はよろしくお願いします」
近づいてきて馬をリデーナに預けたあとそう挨拶をした男性は、父さんに負けず劣らずの身長と体つきをしており、2人が並んで立っているだけで圧がすごい。
――見たことある軽鎧を着ているし馬には荷物もあるから、この人が一緒にいく騎士団の人なのかな?
「いつものように話してくれていいんだが……?」
「いやいや、今回は正式に護衛として王都に行くので、きちんとした態度で同行しなければならないのですよ」
父さんが苦笑しながら言うと、グラニトと呼ばれた男性は少しからかうような話し方でそう答える。
「それは王都についてからや、他の町だけでいいだろう……道中ずっとその調子でいくつもりか?」
「はは。まぁそうだな。改めて、今回はよろしく頼む」
「あぁ、こちらこそ、長旅だがよろしくな」
2人はそう言って笑い合いながら握手をする。
――父さんは騎士団の人と稽古したり一緒に森に行ってたりするし、かなり仲はよさそうだな。
そう思いながらその様子を見ていると、グラニトと呼ばれた男性が俺の方を見た。
「はじめまして、カーリーン様。お話はよく耳にしております。俺――いや、私はグラニトと申します。オルティエン騎士団の団長を務めております」
「はじめまして、カーリーンです。俺にも父さんと話すような言葉づかいでいいよ? というか、騎士団長さんが一緒に行ってくれるの?」
俺がそう言うと、グラニトは「そう言うならそうさせて貰おう」と言って、質問に答えてくれる。
「今回の護衛は1人でいいという事で、"立場のある団長か副団長が同行するのが望ましい"という話になってな。それで俺が勝ったから一緒に行くことになった」
「まぁ今回は俺たち全員が向かうからなぁ」
――たしかに領主が王都に向かうんだし、護衛として1人連れていくならこの上ない人選だとは思うけれど……
どこか誇らしげに言うグラニトを見ながらそう思うが、気になる事もあるので聞いてみる。
「父さんたちもいなくなるのに、団長さんまで出て行っても大丈夫なの?」
「あぁ、そこは大丈夫だ。俺は団長という立場だが強さであれば副団長や、他にも俺より強いヤツがいるからなぁ。今回のように指揮権を与えていれば、俺がいなくても問題はない」
「え、でもさっき副団長に勝ったって……」
「ははは。今回は試合じゃなくてコインで決めたからな。試合であれば、俺があの副団長に勝てるはずがない」
――見るからに強そうなのに……副団長さんはどれだけ強いんだよ……
グラニトは笑いながらそう言っているので、副団長の方が強いこと自体は気にしていないようだ。
「本人はこう言っているが、グラニトは強いから安心していいぞ。それにしても、相当悔しがっていそうだな」
「1発勝負のはずが、なんだかんだ"先に10回出た方が勝ち"まで伸ばされたからなぁ。結果は10対2で俺の勝ちだったが。途中から表か裏かを毎回決めさせていたのにこれだから、文句はあるまい」
――強さに関してはこの地域の騎士団長だから、団内最強とまでは言えなくても強いとは思ってるけど……その副団長さんはどれだけ同行したかったんだ……そして運がないな……。
「まぁアイツもカレアが好きだからなぁ……今回は一緒に行くことを知って、どうしても行きたかったんだろう……」
「町で"副団長はカッコいい"とは聞くが、同じ女性としてなにか思う事もあるんだろうなぁ」
――副団長さんはカッコいい感じの女性なのか。母さんは可愛い感じだから、自分とは違うところに惹かれたのか、もしくは若く見えるところに惹かれたのかなぁ……。
「しかし、副団長が同行することになったら、おまえは奥さんがいるのに1カ月も不在にしなくてすむし、副団長もカレアと一緒に行けて喜ぶしで、丸く収まったんじゃないか?」
「いやぁ、俺も最初はそう思ったんだがなぁ……嫁に"王都に行くなら買ってきてほしいものがあるから、絶対行ってきて"と言われてな……副団長には悪いが、この結果でホッとしている……」
「なるほどな……まぁ、出発までもう少しあるから、中でお茶でも飲んで一息入れるか」
「あぁ。出発前にカレアリナン様にも挨拶しておきたいしな」
そう言うと、俺たちはリビングで待っている母さんたちのところへ向かった。
グラニトは母さんたちに挨拶を済ませて、少しの間話をしていると時間になったため、みんなで玄関に向かう。
挨拶の時に知ったのだが、母さんと知り合いなのはもちろん分かっていたが、兄さんもこの町の騎士団の訓練場に何回か顔を出しているらしく、そこで何回か話や稽古を一緒にやっていたようで、初対面だったのは俺と姉さんだけだった。
その事実を知った姉さんは、"私も今度、稽古の様子をみたい"と言っていたが、グラニトはそう言われるのを分かっていたかのように、すぐに承諾していた。
――俺の話も聞いたことあるって言ってたし、父さんから色々聞いてたのかもしれないなぁ。
外に出るとリデーナが馬車の用意を済ませて待っていたので、俺たち家族は馬車に乗り込み、ドラードとグラニトは荷物紐を確認してから馬にまたがる。
前の馬車より少し大きめに作ってもらっているおかげもあって、母さんの両隣に姉さんと俺が座っても余裕があり、大柄な父さんと一緒に座っている兄さんの隣にも、まだスペースがあるほどだった。
「それじゃあ、行ってくる。しばらくの間頼んだぞ」
「はい、お任せください。お気をつけていってらっしゃいませ」
ロレイナートは笑顔でそう言いながら、頭を下げてお見送りをしてくれる。
いつもなら町の方から通っているメイドもいる時間なのだが、今日からは俺たちがいないため、帰ってくるまでは半休にするらしく今日は来ていない。
――それでも屋敷の掃除は必要だから、毎日誰かは来て掃除をするようだし、来ているメイドやロレイのご飯はベルフが用意するって言ってたなぁ。
門まで歩いてきて見送ってくれたロレイナートとベルフに「行ってきます」と言いながら手を振り、屋敷から離れていく。
「さて、一応今まで通り2週間の旅路の予定で出てきたが、どうなるだろうな」
「そうねぇ。隣町までとかだとあまり参考にならないから、結局時間は計れていないものねぇ」
「今日の夕方到着予定の、隣の領都まで行けば少しは分かるだろうが、すでに振動も少なく感じるし、これだけ荷物を積んでいるのに、速度も普段町へ行くときと変わらないくらい出てるんじゃないか……?」
「ふふふ。あなたは1人で町に行くときは徒歩か馬ですものね。町までは乗ったことあるけれど、振動は本当に少ないわよ」
ロレイナートたちに手を振っていた子供たちが席に座りなおすと、両親がそう話し始めた。
――確かに前の馬車より揺れは少ないかな? 座席のクッションも新しいからかフカフカしてるし、お尻が痛くなることはなさそうだな。
座席をポンポンと叩いたり、グーッと指先で押してみて弾力を確かめつつそう思う。
「うふふ。そうね、座席も柔らかいものね。ベッドにもなるから、これくらいの柔らかさがあると寝心地もよさそうね?」
俺の行動を見て母さんがそう言いながら、俺と同じように座席を押して確かめている。
「ベッドといえば、これくらいの幅があれば、カレアと子供たちくらいだったら眠れそうだな」
「さ、さすがに僕まで一緒に寝ると狭いと思うので、僕は父さんとテントで寝ます!」
3歳の頃に1人部屋を貰ってから、姉さんと違って両親の部屋に寝に来なかった兄さんは、顔を赤らめてそう言う。
――父さんの言う通り母さんと子供たちだけなら、何とか横になれそうだけど結構狭くなるもんなぁ。兄さんはもう母さんと寝るのが恥ずかしいんだろうな……俺は赤ちゃんの頃から記憶があるせいで、一緒に寝ることに何の抵抗もなくなってしまっているけど……。
そう思いながら、流れていく風景を眺めた。
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