103.メンバー
リビングに戻って少しすると、ロレイナートが入って来て、お茶の用意だけして再び出て行ったので、お風呂の用意をしにいったのだと思う。
「色々機能がついててすごい馬車だったね」
俺は馬車をみての感想を言うと、母さんは少し困ったような表情になる。
「そうねぇ……お父さまの馬車と同じように、足回りだけ改善したものになると思っていたのだけれど、まさかあれほどの魔道具をつけてくるなんてねぇ……」
「重力魔道具のほうは、じいちゃんたちは2人、アリーシアさんと来た時でも大人2人と子供1人だったけど、俺たちが今度行くときはみんなで行くからつけてくれたんじゃない? 父さんはじいちゃんと比べても大きいから、なおさら重くなるだろうし……」
「うふふふ、たしかにそうね。それにしても馬車の改善から、今回のような魔道具の制作まで、いったいどれだけ手を広げているのかしらね」
母さんは呆れたようにため息をつきながらそう言う。
「そういえば、姉さんの練習に戻らなくてもいいの?」
「えぇ、リデーナに任せても大丈夫だし、今から戻ったところですぐに終わりになるでしょうしね。それに今はフェディもいないしロレイも作業をしているから、あなた1人になっちゃうじゃない」
「そ、そうだけど……」
「なぁに? もうお母さんと一緒はいやかしら?」
「そんなことないよ」
わざとらしく悲しそうな表情でそう言う母さんにそう即答すると、すぐ笑顔に戻ってお茶を飲む。
「あ、話は変わるんだけど、マジックボックスのような魔法ってあるの?」
「というと、空間拡張系?」
「そう。ものをしまえる空間を作り出す的な?」
「うぅ~ん……私は聞いたことがないけれど……あったら便利そうねぇ……でも消費とかはどうなるのかしら。魔道具の時点で結構多いけれど……それに内部にしまったものは、消したあとどうなるのかしら……さっきカーリーンが言ってたように散乱したりするか、そのまま消えちゃったり? うぅ~ん。試そうにもそういう魔法のことが書かれた本を読んだことがないわね……」
途中から母さんは手を口元に当てて、ブツブツと言いながら考え込んでしまう。
――母さんで知らないなら本当にないか、かなり希少性の高い魔法なのか……もし使えるようになったとしても、それを隠すかどうかは慎重に判断しないとなぁ……教えないままだと使いにくいし、できるなら教えたいけど。まぁこれはまた使えるかどうかわかってからでいいな。
そうやってしばらく母さんと2人でリビングで話をしていると、ドアがノックされてロレイナートが入ってきた。
「奥さま、仕立て屋から荷物が届きました」
「あら? 思ったより早かったわね。客間の方かしら?」
「はい。そちらに運び込んでおります」
「それじゃあ、すぐにいくわ。カーリーンも来る?」
「うぅ~ん、服を受け取って代金を払うだけでしょ? それならちょっとドラードのところに行ってくる」
「あらそう? わかったわ」
母さんは首をかしげながらそう言って、ロレイナートと客間へ向かった。
――また着せ替え人形みたいになる可能性も、ないとは言えないからなぁ……
そう思いながら厨房のドアを開ける。
個人の部屋でもないため"ノックなどはしなくてもいい"とドラードに言われたので、最近は開けてから名前を呼ぶようになった。
「お? カー坊お腹すいたか?」
俺が入ってきたのを確認したドラードが笑いながらそう言ってくる。
「ううん、みんな用事があるから暇になっちゃって」
「ははは。そうか。おやつ食べるか?」
小さい頃から、ここに来るたびに頻繁におやつを貰っていたため、ドラードは今になってもまず最初におやつを勧めてくる。
「うぅ~ん。もう少しでお昼だから、ドラードの料理が食べられなくなるのは嫌だし、今はいいよ」
「相変わらず嬉しいこと言ってくれるなぁ。おやつも俺が作ったものだから少し食ってけ。そのぶん残さないようにカー坊のは少なめにしといてやるよ」
「……まぁそれなら……」
ドラードは上機嫌にそう言うと、おやつの載ったお皿を出してくれる。
「今日から3日ほどお客さん増えるけど、忙しい時間じゃなかった? 大丈夫?」
厨房に入った時は、入口近くにあるテーブルに座ってのんびりしていたようだが、一応邪魔をしていないかの確認をする。
「あぁ、大丈夫だぞ。客つっても1人だからな。昼は1人あたり個数が決まってるもんじゃなかったし。そういや、新しい馬車が来たんだって?」
「そうなんだよ。魔道具が2つもついてて……いや中にライトの魔道具もあったから3つか?」
「マジックボックスは付いてるとして、あとはなんだ?」
「馬車の重さを軽減するやつ」
「ほ~。そんなものがつけられてんのか」
「あれ? ドラードはあんまり驚かないんだ?」
「ん。まぁな。そういう研究がされてるってことは知ってたしなぁ」
ドラードがそういう情報を知っていたことに、こっちが少し驚く。
――あんまり魔道具とか興味なさそうなイメージだったんだけどなぁ。
「あ、馬車と言えば、今回は俺や母さん、兄さんも一緒に行くって聞いてる?」
「あぁ。もちろん聞いてるさ。というかオレも行くしな」
「え!? 初耳なんだけど?」
「ん? まぁ馬車には乗らないからな。リデーナが御者だろ? それに加えて騎士団から2人ほどの護衛、んで追加の護衛としてオレだ」
「"料理人として"じゃないんだ……」
「旅に専属の料理人を連れていくとか貴族かよ」
「貴族だよ」
「……いや、まぁそうか……まぁ旅の途中も料理はするが、一応役割は護衛だな」
そう話すドラードは、どこかウキウキしているように感じる。
「久しぶりの旅が楽しみなんだ?」
「お、おぉ。まぁな。フェディとカレアだけまた旅をするなんてズルイだろ? だからオレも連れてけって言ったら、すんなりと許可を貰えた」
――なんか子供っぽい理由だな……まぁドラードが強いのは知ってるし、話し相手が増えるのは嬉しいが。
「そういや馬車のマジックボックスの容量ってどんなもんだった?」
俺はトランクの中を見せてもらった時を思い出しながら答える。
「広いな。それなら十分荷物も積めるだろうし、カー坊たち全員ぶんでも1台で移動できるか」
――たしかに、テントなどに加えて、全員分の着替えや食料も積まないといけないんだもんな。上にも荷物を積める場所があったけれど、トランクがあの広さなのも納得だな。
「重さを軽減する魔道具があるから、荷物用の馬車を追加で出しても差が出るかもしれないもんね……」
「だなぁ。まぁその新型の馬車が1日でどれくらい移動できるものなのかは、当日にならないと分からないか」
「同じだけの重さを積んで確かめるのも手間だろうしね……コーエンさんが乗って来てるから耐久面は保証されてるようなもんだし」
しばらくそういう話をしていると、ドアがひらいてロレイナートが入ってきた。
「おや、カーリーン様はこちらでしたか。そろそろ昼食のお時間ですので、リビングに集まっておられますよ」
「もうそんな時間だったんだ。それじゃあドラードまたね」
俺はドラードにそう言うと、ニカッと笑って手をあげて返事をしてくれた。
リビングに入ると、両親とコーエンが座っていたが、兄姉はまだ来ていないようだ。
俺と一緒に来たロレイナートが俺にもお茶を出してくれたあと、両親たちの話を聞いていると、リデーナと一緒に兄姉たちがリビングにやってきた。
兄さんはコーエンを知っているため、軽いあいさつ程度だったが、姉さんは初対面なのでちゃんと自己紹介をし、これから3日間はコーエンも稽古に参加することを知って目を輝かせていた。
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