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帰り道

作者: Luna


 『 白米 』


 今日の朝、母親とけんかした。

 火種は俺の進路についてで、大学に行ってほしいという母親の気持ちと、大学に行かずに専門学校に行きたいという俺の思いが交錯して起こったけんかだった。そのせいか今日の弁当の中身が白米だけになっていた。後で母親に聞いたが、ただ忘れていただけらしい。多分、わざとだろう。夜、母親が俺の部屋に来て謝ってくれたが、俺は意地を張って謝り返せなかった。母は悲しい顔をして部屋を出ていった。

その後、いろいろ考えてみて自分勝手だったことを反省した。明日の朝には謝ろうと思った。


翌朝、キッチンでお弁当を作っている母に謝った。

「昨日の朝は自分勝手な態度ばっかとってごめん」

母は弁当を作るのに集中していて、あまりこちらの方に向いてくれず

「別にいいのよ。」

と軽く反応されて終わった。


昼休みになって、リュックから弁当を取り出し、ご飯を食べる。

昨日と違って、少しだけしょっぱい気がした。

そのままご飯を食べ進めていると、母からメールが届いた。

「朝は忙しかったから話聞けなくてごめん。あなたも成長したんだなと思うと、少し涙が出るわ。

じゃあ学校楽しんでね。」

なるほど、だからご飯が少しだけしょっぱいんだな。



『 ある病 』


 2020年、ある病が地球全体を襲った。

その病は、人々に恐怖をもたらし、それぞれを精神的にも物理的にも分断してしまった。

病にかからなかった者は怠慢だ、などと多方面から差別され居場所を失っていた。

 社会全体にも負の影響は続いた。企業は、これまで内定を通知していた人々を雇うことが出来なくなり、内定が取り消されるという事態が起こった。我々は、その病の感染を止めることが出来なかったのだ。さらに、SNSが人々の生活に介入している現代において、その病はこれからも拡大すると言われている。学歴フィルターや、一度のミスで人生が終わりだとされる世の中。間違ったことは徹底的に粛清され、プロセスではなく結果が一番だとされる社会風潮。害をもたらすような言葉はどんな場面でも使ってはいけない。コンプライアンス、ハラスメント、コスパ、タイパ。私たちの生活は抗菌されすぎているのである。そして、その抗菌されすぎた世界を崇拝する信者が大勢いる。抗菌信者とそれ以外の人々との対立はますます深まるばかりである。

 

ワクチンでも作ればいいんじゃないかって?それは無理だ。


なぜなら、この病の名は『潔癖症』だからね。



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