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御国事情に話が突入するようだ

俺はゆっくりと茂みを迂回して姿を見せた。

軍関係者には聞きたいこともあったしな。

「ぬ、魔族?」

「しかも、単眼?」

いや、三つ目だから、横からも見て。

「そう思ってもらっても構わないそうです。実際自分らには魔族だと言ってたけど、今後は妖精で通したい? 無理じゃねザンザ殿ぉ~」

「ちょ、伍長、本音を漏らすなであります。いや、ザンザ殿はホントに頼りになる森の妖精さんでありますよー」

しかし、構えを解かねえな曹長。

しかしこいつ、


イェーク・コルトン(25歳)

LV 48

人種 ヒューマン

状態 剣将の曹長

HP 400

MP 12(12)


強 420

速 150

賢 69

魔 20

耐 250

運 13

スキル

ダモクレス流抜刀術、多段風斬(仮)、かまいたち(仮)

ガイラバルト軍徒手格闘術


正直、事を構えたくねえ相手だな。

何でこんな手練れが曹長なんだ?


ムッソ・クイックマン(52歳)

LV 27

人種 ヒューマン

状態 ガイラバルト軍少尉

HP 160

MP 18(18)


強 150

速 120

賢 66

魔 18

耐 150

運 11

スキル

ガイラバルト軍剣闘術

ガイラバルト軍徒手格闘術


こっちが標準ぽいよね。

曹長の「剣将」って何?

多段風斬(仮)、かまいたち(仮)の(仮)って何?

「速」が俺と同じ150だから判るけど、それから出せる中長距離攻撃だったら脅威だよね。

「裏でコソコソ指図してたなあ、てめえだな?」

「自分らイノキバオークが要請したから手を貸してもらったただけであります。こちらの指図であります」

「宗派とかぬかしやがったな? 妙な宗教でこいつらを洗脳してんじゃねえぞ!」

こいつ脳筋か?

声のデカさでマウント取りにきやがった。

「こちらから頼み込んで改宗したのであります。洗脳とかされてないでありますよ」

「キレた曹長カッコイイ」

伍長が惚れ惚れと見ている。

「サッサ伍長は中継だけしてような」

その伍長の頭頂に准尉がゲンコツを入れる。

「ブヒッ」

「敵対するつもりはない。二度とここに来るなと言うなら従おう」

「もう、来ないのでありますかっ? それは困るであります。また岩塩が減って来てるでありますよ。春になったから採掘に行けるのでありますよね?」

「こっちも、もっと砂糖と野菜の種子が欲しかったんだがなあ――とのことです」

「曹長、一先ず納刀せよ。話を聞こうではないか」

少尉が仕切ってくれるか。

「山道に回ってこっちに来るから待てとのことです」

曹長は刀を鞘に納めたようだが油断はできない。

何せ相手の技は抜刀術なのだ。

鞘の中の刀の方が危ない。

そういう相手の前に飛翔して着地の瞬間を狙われたりしたら・・・まあ、対処できない訳ではないが色々手の内がバレてしまうよなあ。

「曹長、道を塞ぐな。あの中で話をしよう。文字通り建設的な話をな」

「良い言い回しだとのことです」

「ザンザと言ったな、貴殿の言葉が不自由というのは?」

「この口だからな」

「ザンザ殿はB・Ⅿ・Pなどの母音が発音できないのであります」

「唇がないからとのこと、言ってることは解るとのことです」

「ふん縛ってYESかNOかで十分だろうが」

「曹長、この方は軍協力者なのだよ。不法越境者や盗賊ではない」

ああ、これはヘタレ攻めと強攻めとの掛け合い尋問だな。一方が強く出て弱めの質問に誘導するやつ。

「あんた達はガイラバルトの軍人で間違いないのか?と聞いてます」

「いかにも、ガイラバルト軍国境警備隊隊長ムッソ・クイックマン少尉だ」

「同じくイェーク・コルトン曹長」

「トドロキ連峰の向こうの牧場に間借りしてるザンザ・ガンガと言う者だ。とのことです」

「間借り?」

「夏が来る前に南に向かうそうです。渡り鳥のような生態、とのこと」

「その前はどこにいたのですかな?」

「静湖の奥の山だとのこと」

「いや、それよりトドロキ連峰の向こうに牧場なんかあるわけねえだろ?」

「いや曹長、何年か前に私は聞いたことがある。最辺境はここではなく、大門川方面の上流だと。して、いつからここに来るようになったのですかな?」

「雪解けの頃が最初で、ここへはこれで3回目で、オークの方がより多く牧場に来ている――バレちゃった」

「どうやって! 何しに行ってたの?」

「トドロキ連峰のけもの道を通って最初は岩塩を探しに行ってたのであります」

「東の山のどこかに鉱脈がある噂は昔からあったのです。国境の通行も減ってきたから、余剰人員を探索に派遣していたのです」

「なに勝手なことを――」

「曹長、彼女らは傭兵だ。軍務をこなしているならプライベートまでは拘束できん。広義では周辺探索も認めているわけだしな。ブタバナ殲滅の前例もある」

「つまりは、最初に接触したのは自分なのであります。首尾よく岩塩も分けてもらえるようになり、交易するようになったのであります」

「ああ、それで村の屯田兵から苦情陳情が無くなってたのか」

「決して塩の対価に子種を要求したりはしておりませんぞ」

准尉が胸を張ってというより、下腹を張って言った。

「いや、ご婦人からの苦情は多いぜ。全裸で村を出入りするなと」

話が下世話にずれてきたな。

ちと、戻すか。

「話を戻すが、貴殿らはこの建造物にどんな懸念を持っているのだ?とのことです」

「てめえのような奴が関わってることが問題なんだよ」

「やはり、魔族は人の敵なのか?とのこと」

「魔族と言うより、魔物が敵ですな」

「その違いが判らない。ザンザ殿は魔族を見たことが無いから、とのことです」

「目の前にいるでしょう。ただ、同じイノキバオークでも人の敵でない魔族はここの部族だけです。大変珍しいいことで、曹長が貴方に厳しい言い方をするのは、この部族を守る特命を受けているからですよ」

「少尉殿、それを魔族のこいつの前でいうのは拙いでしょう」

「ザンザ殿は自分が魔族かどうか判らないそうです。卵から産まれてさほど経っていないそう? え、マジ?」

「ああ? いつ生まれたって?」

「去年の秋ですって」

「それで、ケヤキ材やら大黒柱やら知ってたって? ざけてんのか?」

「お前たちとは「生まれ」の概念が違う。俺は、ザンザ殿は卵の中で自我を持った。卵の中で女神の声を聴いて、自分の力を知った。卵を割って出たら横に同じような卵があって、それは妹だった。親のような奴が現れてザンザ殿と妹を殺し合わせて生き残った方を育てると言った。ザンザ殿・・・」

伍長とシンクロしてきたな。

「俺と妹は・・・俺は妹を連れてあそこから逃げ出した。女神に教えられた力で獲物と食料には困らなかった。牝の熊に出会った。仔を失ったばかりの牝熊をゼナと名付けてジニーの乳母になってもらった。ゼナに連れられてあの牧場に世話になることになった。冬の間、一家は山羊と一緒に南に移動するのだが、ゼナは連れて行けない。牧場の家を春まで間借りすることになった。暫くするとオオカミがい着くようになった。狼との狩のおかげで食料は安定した。お前たちイノキバオークが現れたのはその頃だ。今は一家が牧場に戻っていて夏まで一緒に暮らすことになっている」

「ザ、ザンザどのぉ~」

サッサ伍長が抱きついて頬ずりしてきた。

俺の顔の頬は自分でもどこだかよく分かっていないのだが。

「何と健気なぁ~」

なんか涙だだ流してるけど。

「今の話、泣く要素なんかあったか?」

「あったですよ~ 妹を連れて逃げて荒野を放浪するあたりとかっ」

「いや、放浪してねえし、創造神の誘導あったし」

「その創造神と、女神ってのはどんな神なんだ?」

「ああ、創造神様と女神様は同一の神様であります」

「ナビーネ様と言うのですが、つい最近創造神を止め、教導をするようになったのです」

「創造神を止めるってぇ、大丈夫なのか?」

「神による内包する因子の創造は区切りを迎え、この後は創造物自らが進化変化をし世界を完成させるのです」

こりゃあ、サッサ伍長に降りてるな、ナビーネの奴。

「世界を光に満たしたい者は空に思いを馳せ、闇に染まりたい者は地に潜り力を求め、前に進みたい者は海の彼方に希望を探す時代になるのです。既に前に進み力を得ている者は破壊と混沌をもたらし、平穏と静寂を求めるものを淘汰してしまうかも知れません。進化する力を求めるものに方向を示し、平穏を求めるものを守護する。私の望みは世界という器の解放と多様性なのです」

また、大きく出たなナビーネ。

「おい、これは?」

「伍長がナビーネ様の言葉を伝えているようであります」

「どう思う曹長?」

「『既に前に進み力を得ている者は破壊と混沌をもたらし』ってところに心当たりがありすぎて信じざるをえねえ」

「それで貴殿はこの地に飛ばされたようなものだからなあ」

「中央から来たのか?」

俺は自分の言葉で訊く。

「俺は新都市の司令部付きの大尉だったのだ」

「何かやらかして降格と左遷か」

「やらかしてるのはあの国のトップだ。テイ王、ティム・ティーマー。本来なら皇帝か国王になってる奴だが、『既に前に進み力を得ている者は破壊と混沌をもたらし』ってのを体現してるような奴だ」

「あまり悪く言ってくれるな。私は元ティーマー帝国の兵卒なのだからなあ」

そう言えばもう一人、オークの相手をしてる士官が居たっけな。

少尉よりやや齢を食ってる固太りの男が上り坂を登ってきたところだった。

「ロッド・ロンベルド准尉だ」

「じゃあ、ここじゃ口を噤んでおきますよ」

「いや、この機に思いの程を話すと良い。君も彼女たちの子の父親になるのだ。聞かせてやれば良い。ただ、私はテイ王の味方として、話に割りこませてもらうことにするよ。反論と言うよりフォローだね」

そうして、曹長は話し始めるのだった。



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