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何にしても工事は安全第一のようだ

この回、建築用語だらけです。飛ばしてもらっても問題ありません。

四隅の低い処で3m、矢切の高い処で5m弱か。

補強のための木製の足場が組まれて、その中には屋根の位置まで石材がくみ上げられていた。

俺は亜空間に用意していた屋根材の中から棟木を置いてみる。

玄関口の上部から裏の端の上端に乗せる仕様だ。

長さが余るな。

想定より小さくなったか?

ああ、四隅と奥の矢切を2重にして補強したのか。

座標確認すると、ほぼ正確に地軸に対して垂直だ。

軒桁は必須として、母屋は何対にするか? スパンが長いから1対という訳にも行くまい、2対にするか。

垂木を乗せると各母屋に均等に接地している。

壁の縦横直角が正確に出ているおかげだろう良い造りだ。

まあ、ズレがあったら少々材を削ればいいだけだが。

軍曹と伍長を念話で呼んでみよう。

〈ザンザだ。今、教会建設地にいる。のんびり来てくれ〉

すると遠くから足音が急激に激しくここに迫ってきた。

イノシシが急制動をかけ、変身する。

「サッサ伍長であります!」

「早速の招請で恐れ入る」

〈ムニム軍曹は慌てるなよー、スっ転んだりしたら取り返し付かんからなあ〉

〈ゆっくり参りますが、直ぐに着くであります〉

「今日の御用向きは何でしょうか?」

〈屋根材だが、あれで良いかどうか、伍長も見ておいてくれ〉

俺は上部を指さす。

「あ、あれはどうやって持ち込んだでありますか?」

「山から直送だ」

知れっと適当なことを言って誤魔化しておく。

「来たか軍曹」

「ザンザ殿久方ぶりであります」

軍曹と一緒についてきた准尉も挨拶して来る。

「准尉殿、お身体は良いのか?」

「は、安定期に入っております故」

〈いや、まだでしょ?〉

「ははは、オークはヒューマンとは違います。否、今は猪人ですが、オークの時よりずっと安定してるであります」

代わりに軍曹が答える。

そういう二人は普通にマタニティールック風のチュニック姿であった。

「似合ってるなあ。普段から着なよ服」

「妊娠中の獣化はご法度ですからこれでいいでありますが、普段は人目に付きそうなときはイノシシに化けます故」

いや、絶対好きで脱いでるだろお前ら。

〈上を見て欲しい。特に母屋なのだが、あの数とスパンで良いか?〉

ツッコミは声や念話に出さず、用事を済ませてしまおうと俺は思った。

「うおっ、既にあそこまで・・・」

「い、いや、ザンザ殿の手際の速さにはいつも驚かされますな」

「ところで、モヤって何でありますか?」

〈屋根の下に野地板を張るだろ。その野地板を支える角材は垂木と言うのだが、それを水平に支える為の太めの材ことだよ。屋根の傾斜角度が大きいようだがあの上で作業出来るのか? つまり、あの横木が少ないと屋根全体の強度が下がるが、多すぎると重心が高く、屋根が重くなって、強風とか来た時壁の強度が不安になる〉

「ザンザ殿、ヒューマンの少尉殿が建築の指揮を執ってくれてるのでありますが、呼んできても良いでありますか? 我らでは判断がつき兼ねないであります」

〈いいけど、その間俺は姿を隠してるから、サッサ伍長が話を中継してもらえる?〉

「あの「妖精さん」の話をでっち上げながらでありますか。いい加減第三者(俺のこと)の介入はバレているのでありますが」

軍曹がイノシシ顔だが確かに困った表情で言う。

〈しかし流石にこの姿を見せると不味かろう〉

見た目人間離れしてるからなあ、俺って。

「伍長、クイックマン少尉をお呼びしろ」

「は、直ちに!」

「じゃあ、俺は適当に隠れてるから」

俺は岩と茂みの陰になる場所に位置取りした。

伍長が少尉を連れてきたのは、数分後だった。

速いな! もう一人ついてきてるし、駆け足だし。

「少尉殿、屋根材を置いてみたのです。どんなものでしょうかな? あのまま進めても?」

「ふむ、全ての屋根の重みが四隅と前後の上端に掛かってくるわけだ。中央の長い材が重みでたわんでしまうんじゃないのか?」

クイックマン少尉と言う年配に近い中年士官は上を見ながら渋い顔をしながら言った。

〈あそこだけは欅材だから、たわみは少ない〉

俺は伍長に念話を伝えて返答させる。

「あそこだけはケヤキ材だから、たわみは少ないかと」

「少ないとは言っても、屋根の作業中はたわんで揺れるだろう。下から支柱で支えるのが無難だ」

〈少尉の言う事は最もだ。屋内の中央に大黒柱があって、そこに向かって礼拝する形にするのは抵抗があるか? もしくは、柱を避けて左右に広がって奥に向かっての礼拝形式か?〉

「中央に大黒柱を設ける方向で考え直すであります。直ちに発注するのであります」

「だからよう、どこの誰に発注するってんだ?」

この声はこの間の下衆曹長かな?

「山の妖精さんであります!」

「ンあ訳あるか! 妖精が『ケヤキ材』やら、『大黒柱』なんて言葉使うもんかよ! 出てこい!」

おや、バレてるね。

俺の隠れてる茂みに抜いた剣先を正確に向けられちゃったよ。

「出ていく! 伍長、通訳!」

「あ、ザンザ殿は話をするのが不自由なのです。難しい話は自分らが念話を通訳するのです」

「ザンザだ。准尉らとは同じ宗派だ」


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