国境の教会は完成間近のようだ
短いです。
次の投稿は建築用語が多く無理に読まなくてもいいかも。
飛ばして読んでもらうために、3タイトルに分けて投稿します。
そんな話をした翌朝、一家は朝から忙しそうだった。
昨日聞いた話では、この国はかなり末期的な状態なのではあるまいか。
国がそんな状態でも食ったものは体から出ていくものだ。
まあ、つまり今日はトイレの移動をするらしい。
ここのトイレは家の中とは別に作られていることは知っていた。
家の離れにある、木造の簡易トイレふうの――まあ、本物のトイレなのだが、小さな建物がそれだ。
平地に突き鍬のような道具で1m以上の深さの穴を掘り・・・位置が悪かったのか、掘ろうとしては石に突き当たっていたので、代わりに俺が石を宙に浮かせ、土を柔らかくしては亜空間にしまい、例年よりやや深い肥溜めが完成した。
その上に今まであった縦長の神輿のような建屋を移動し穴の位置に持ってくればトイレの出来上がりという訳だ。
今まであったトイレ跡は肥溜めで今日から周囲に畑を作って、そこに肥料成分が滲みて野菜や山羊の餌を育てるという仕組みらしい。
この一家のしりふきは紙や植物の葉ではなく、アーランドヒノキという木の皮を使う。
木の皮を剥ぎ取り、表面の層をはがしていくと、幹に近い部分に薄く柔らかい樹皮が何層もあり、丁度使用に良い形になるのだと。
表層の固い部分は古いトイレ跡に入れておくと匂い封じと虫除けの良い蓋になるそうだ。
ちなみに俺は離れた茂みの中の狼のトイレを点検するついでにそこで済ませていたが、最近はゼナが大穴を掘ってそこに済ませ穴を埋めるので、便乗させてもらっている。
軍の話を聞いたので、軍の様子を見たくなった。
国境のクダスギ村だっけ、教会建設の進展も見たいし。
モニータとマロンにことわりを入れ、ゼナとタエにジニーのことを頼んで、南西に向けて飛び立つ。
上空は暖かくなった。
急がなければ半日は留まっていられそうだ。
タカ科の鳥のように輪を描きながら旋回していたいくらいだ。
ジニーを連れて遊覧飛行もいいかもしれない。
いや、まだ時季尚早か。
ジニーはまだ気圧の急激な変化に慣れていないからな。
俺だって気圧の変化に慣れるには数週間かかった。
それも気圧変化の知識があって心構えがあったればこそだ。
1000mの高度差を秒単位で急上昇急降下は気圧や温度変化の概念が無いと中々耐えきれるものじゃない。
内臓と筋力を鍛えれば耐性は上がるのだが、ステータスの「強」と「耐」が30以上のジニーなら常人以上なのだが、空だからと言って安全では無いだろうからなあ。
何時空中戦になってもいいような用心は必用だ。
ちょっとズルをして国境の上空に空間移動する。
恐らく高度4000m程度、山岳地帯からの高度差は3000弱、そこから俯瞰しようとするが雲が邪魔だ。
まあ、こちらから見えないと言う事は下からも見えないということのはず、クダスギ村や国境の関所、警備隊営業所の位置を確認しながら降下する。
おお、教会が確認できる。
屋根は無いが壁は出来ているっぽい。
俺は降り立ってほぼ建築済みの石壁を見上げる。