エレトン一家の旅も狼の狩りも順調のようだ
俺が石の焚火台を片付け、地面に焚火を移して片付けの準備をしているとエレトンが寄ってきた。
「今日は本当に助かった。午後には疲労がピークだったから、薪を集めて夕飯を作るってのは精神的に厳しかったんだ」
「感謝してるか?」
「ああ、感謝している」
「感謝は創造神にするといい」
「へ、ああ、創造神?」
「創造神の名は――寝たか」
モニータは毛皮にくるまって地面で寝ていた。
ナビーネの「ビ」が発音できないので、
「今度、こいつに聞いてくれ」
「モニータにか?」
「創造神に感謝して祈ると、名を教えてくれる、かな?」
「内緒だと言ってたか」
「それは回復スキルの方だ」
「なるほど」
「朝の食材はあるのか?」
「干し肉とチーズだ。今日の夕食分が浮いたんで、たくさん食べれる」
「それは良いことだ。では、明日の夕刻に」
「帰る場所は俺の家か、変な別れだな」
「ははは、そうだな」
俺はジャンプ後羽ばたいて上昇し真上に位置取りする。
音索敵で周囲に外敵がいないことを確認してから、牧場に空間移動をする。
夜、空を飛ぶのは初めてだし、夜の牧場を空から見るのも初めてだった。
着地場所は道にすれば安全か。
着地すると、ジュンとタエが駆け寄ってくる。
〈ザンザ! 獲物だよ! ジュンが鹿を狩ったんだよ!〉
〈そうか、ご苦労さん〉
俺は爪を立てないように、指を反らした手の平でジュンの頭をなでる。
〈いーなー、タエはウサギとネズミしか狩れないよ〉
〈お前は留守番をしてくれたらいいんだよ〉
俺はまとわりついてくるタエの頭を同様に手の平でなでる。
〈もうすぐ、ここの家主の人間たちが帰ってくる。タエが留守番すると彼等がとても助かるだろう〉
〈ホント? ホントに?〉
〈ああ、ホントだ〉
特にモニータとはうまくやれるだろう。
家に戻ると前には牡鹿が1頭倒れていた。
土魔法のあの口から石を吐き出す砲弾のようなスキルを使ったのか?
胸にこぶし大の穴が開いている。
これ1発で仕留めたとすると、ジュンの狩猟能力はマタギ並みだな。
もう夜が更けている。
今は考察よりも解体だな。
岩の上で捌きながら、一旦亜空間に収納する。
30分もかからなくなった。
焚火台を2台取り出して、火を付け暖気、この場合は暖器かな、上面の石と塩の板が温まったら、肝臓を取り出し三つに切り分けゼナを呼ぶ。
〈今日の肝臓は母優先だ。いいな? ゲンとダン〉
「「フオン!」」
返事は悪くないが少し悲しそうな2頭の尻尾だった。
時間が経ち過ぎていたせいか、肝臓の血抜きは今一つだったが、味は二の次で栄養価的には産後の滋養に十分だろう。
一切れずつ、ゼナ、ニオ、ラクに与えていく。
〈お前ら、塩振った方が好きか?〉
〈「塩振って」だって〉
塩の板の上で焼いて、更に塩振ったら結構な塩分濃度だよなあ。
〈そうか、じゃあ、フキノトウ、これもちゃんと食うんだぞ〉
既に一度火を通したフキノトウを出す。
マスの皮で包んでから焼いているから、少しは食いやすいだろう。
背中に半分寝ているジニーを乗せたゼナが割りこんでくる。
〈ゼナ、お前は昼に、たくさん食べただろう〉
「クマッ!」
なんだそれは? 抗議の声か?
〈マスの味のは食べてないって〉
タエが念話で通訳する。
「ゼナ~」
〈食通に成っちまったなあ。均等割りだぞ。味見ならそれで十分だろ?〉
ゼナが食べると、狼たちも催促してきた。
しかし、口に入れると情けない顔をする者と、納得する者と半々だった。
オオカミも苦みとか味覚があるのだろうか?
まあ、吐き出したものはいなかったので良しとしよう。
焚火台はそのままに塩の板だけ回収して家の中に戻る。
眠たいけど、あまり疲れていないなあ。
ああ、エレトンのビバークで疲労回復の『福音』を使ったんだっけ。
余波で俺も疲れていないのかも知れない。
まあ、お祈りしておくか。
〈エレトンの仔山羊の回復と人々の疲労回復にお感謝します〉
〈女神ポイントを60付与します〉
〈・・・まあ、『福音』自体付与みたいなもんだから、そんなもんか〉
〈ちょっと、ケチとかみみっちいとか思ってません?〉
〈いやいや、安売りはいけねえよ。期待どおりだよ。期待通り!〉
〈不満があるのなら、交渉OKなんですよ!〉
〈大丈夫大丈夫、モーマンタイ〉
女神のたらたらした文句を子守唄にして俺は睡眠に落ちていくのだった。




