再会したエレトン家にはプラス1がいるようだ
上は暖かく春の訪れを感じるようになったが、上空はまだ寒いままだった。
それの何がまずいのかというと、エレトンたちの進路の安全だ。
上空から哨戒して危険を先に取り除こうかと思っていたのだが、この体は寒さには耐えられず、1時間以上寒風にさらされると飛行を途中断念せざるを得ない。
空間移動でエレトンのいる場所までは一瞬なのだが上空での哨戒は1時間もできず撤収、その繰り返しだった。
警戒しないといけないのは夜間の方なのだが、これがまた急激に寒くなるので30分ももたないという情けなさだった。
今では正午と深夜に2度だけ空間移動でエレトンの上空から索敵して、何もいなければ撤収している。
それで気が付いたのだがエレトンたちは「行き」に比べて歩がかなり遅いということだった。
そこで、今度は正午、彼らの休憩時に様子見がてら会いに行ってみることにする。
位置的には合流した大門川から100㎞の辺りになる。
今回はかなり低空を飛んで近づいたので、すぐに一家に見つけられた。
モニータとマロンが手を振っている。
なんか、一人増えてるなあ。
山羊の数も2割増しになってないか?
山羊のいない離れた場所に着地して歩いて近寄る。
モニータが駆け寄ってくる。
「ザンザ!」
〈久しいな。モニータ〉
「来てくれたのね! おっかさん! もう内緒にしなくていいよね? ジニーのことも」
ああ、そういうことか、新人が加わっているので俺たちの話はタブーにしていたらしい。
新人、若い女はガトーの後ろから恐る恐る俺を覗き見している。
「あれは何ですの!? 珍妙なのですけど!」
とか言ってるのが聞こえるのは俺の耳が良いせいなのだが。
「あれは何ですかぁ? 髪型が変なんですけど!」
と言ってやった。
「あれはオリパ姉ちゃんだよ。髪が変なのはね、寝癖でね、旅の前にクルンクルンだったからだよ」
「ロールヘアですの! それにわたくしの名はオリペアーネですったら」
「お貴族さんですか?」
「いや、元良いとこのお嬢様だ」
エレトンがのっしのっしと歩いてくる。
「エレトン、ひさしい」
「ザンザ、久しぶり!」
「はあ、久しぶりだね」
「元気?」
マロンのマが発音で来ないので、向き直って彼女の前で挨拶だ。
「ああ、ああ、元気だよ」
「ガトー、元気?」
「ああ、まあ、ボチボチだよ」
「ザンザ、ジニーは元気?」
モニータの関心はそこだよな。
「元気すぎー」
「ゼナは?」
「乳出て、元気」
「エレトンに報告がある」
「ホーコク?」
「俺の替りに話してくれ」
「念話を伝えるのね?」
〈家の周りにオオカミガ住み着いている〉
「おとっつぁん、家の周りにオオカミが住み着いてるって」
「な、なんだと?」
「11頭でニホンオオカミが7頭、ハイギンオオカミが3頭、犬が1頭」
「角のあるやつか? それに灰銀?」
「あんたぁ、灰銀は拙くないかい?」
「おとっつぁんが嫌なら出てってもらうけど、もうすぐ子が生まれるんだって、子を連れてイドー出来るようになるまで待って欲しい?」
「まだ増えるってのか?」
「なんてこったい」
「子供? 赤ちゃん? 見たい見たい!」
「何言ってんだ! 狼の子なんて見た時が死ぬ時だぞ! それくらいヤバいんだぞ」
ガトーの懸念は想定内だった。
ヤギの天敵だろうからなあ、狼は。
「あー、そう、人や山羊は襲わないように命令してるって」
「でも、そうだよ、ザンザはもう少ししたら出て行っちまうんだろ? 残った狼が命令きくのかよ?」
「山羊の王」
「え?」
まあ、教えてもいいだろう。
この「状態」というステータスでこの手の称号に近いものは自覚すると「伸びる」可能性が大だからな。
「その時はお兄が命令しろって、ヤギノオウトシテメイレイケンがある、から?」
「山羊の王? として?」
「お兄は『山羊の王』なんだって」
「俺が?」
「そうか、それで余所の山羊もお前の言うことを素直に聞くんだな。ずっと不思議に思ってたんだ」
エレトンが納得していた。
「ああ、職業スキルの称号みたいなもんかい」
マロンが補足する。
今はそれでいいが、実は職業という枠で囲っていいものではない。
「え? ヒトノススムベキミチヲキワメルタメノミチシルベ、だから、ショクギョウトシテゲンテイ、してはいけない? だって」
「そんな、大それたものなのかい?」
「ガトーの精進次第」
「ほー、精進だとよ。ガトー、頑張らねえとな!」
エレトンは何故か機嫌が良く笑っていた。
「え? 家に戻ったらホーコクすることがあるんだって、待ってる、うん、又来る? 来てくれるんだ」
「肉、置いてく」
俺はイノシシのロースト風肉隗をひと固まり置いて、宙に舞い上がった。進路を牧場に向けて、空間を移動し、牧場に戻ったのだった。




