オオカミケアの日になるようだ
昨日の狼は案の定たくさんの肉を消費した。
しかし、翌日からは逆に食う量が減ってきた。
消化吸収効率が良くなって、減量しても体力は前より維持できるようになったのだろう。
俺は道から外れた山間の岩が剥き出しになった場所で焚火をする。
寄生虫やエキノコックスの卵が混じった毛を焼却するためだ。
いつもより多めに薪を燃やして火が安定したら、亜空間の悪しき貯蓄を燃やしていく。
今回はダニ・ノミも焼却だ。
エキノコックスの卵付きかもしれないこれらを川に流して他の動物を汚染させるわけにはいかないからなあ。
次は、狼たちの「掘っ建て」だな。
燃やす訳にもいかないし、いや、燃やして建て直してもいいのだが、それは最後の手段だ。
そうだ、この焚火の熱を、熱い空気を収納できないか? できた!
そんなことをしながら、別の方法をさらに思いついた。
川の水を収納し、蒸気に変えて放出するのだ。
いや、収納内の「熱風」君らも有効活用するからな。
「掘っ建て」の中は、丁度留守だった。
「索敵」してみると、極小の「なにか」に汚染されている。
収納の中の物質は本質を変えない限り、形状を変えることは出来る場合もある。
水の場合がそれで、水、氷、水蒸気と分子を動かしやすい物質は状態を変えることが出来る。
水分に熱を加えるわけではない。
水を動かしながら放出することで、分子単位で放出しスチームとして発熱させスプレーにするのだ。
作戦開始!
あ、いかん、圧が強すぎて地面を掘削しちゃいそう。
もっと柔く放出を調整する。
掘っ建ての中はサウナ状態になり、除染はうまくいっているようだ。
水浸しになった中を熱風で乾かす。
横壁と板はすぐに乾いたが、下側の地面は表面しか乾かない。
しばらく、湿気るかもしれないが我慢してもらおう。
これ、MP消費が少なくてイイね!
亜空間から放出し一時停止するまでのMP消費は1だ。
繰り返しても10以下だ。
次は新築の方だ。
「掘っ建て2号」だ。
2度目なので試行錯誤がないから除染は速やかだ。
使用する水分も少なかったから、乾燥工程も短時間だ。
ニオとラク、そしてタエは日向ぼっこのようだ。
他の狼は狩場か。
帰ってきたら、まとめてもう一度「福音」で除染だな、と思っていたらニオとラクが寄ってきた。
尻尾フリフリ状態だ。
体を摺り寄せてこようとするので「索敵」してみると、毛についた土埃の中にそこそこの反応があるので、3頭を集めて「女神の福音」を使ってみる。
毛をまさぐって調べると、喜びまくって舐めたり顔を擦り付けたりする3頭。
寄生虫卵の反応は無くなり、除染は成功のようなので、3頭が飽きるまで付き合ってやる。
飽きるまで付き合ってやるつもりだったけど、お前らいつまでじゃれてるの?飽きる気配無いじゃない!
タエがはしゃぎまくって俺の足元をぐるぐる回り、身重の2頭がタエが疲れると俺にスリスリしてきて、タエが復活して、またはしゃぎ回る。
切りがねえよ!
でっかいオオカミが2頭で取り囲むから暖かくていいけどさ。
けど、ニオ、ラクを後ろ壁にしておいて、角付きの頭でグリグリしてくるのはホントに止めてくれ。
ダメージになりそうなレベルだから。
俺はじゃれ合いを切り上げるために、ラクを引き寄せて昨日できなかったグルーミングをする。
今までは3頭でケアしてきたのだろうか、毛玉にはなっていない、軽い抜け毛を回収していく感じだ。
張り付いて食い込んだダニは「福音」の成果か見つけられなかった。
あれは引き剥がすのに手間だから、いなくて助かる。
タエもついでにやってやろう。
あ、毛の感触が全然ちがう。
ギンイヌとタテジマコヨーテの混血だよな。
狐に近い毛触りかな?
こいつ、野に放ってハンターに見つかったら絶対この毛皮が狙われるよね。
「タエ」
〈山にいる人間には注意するんだぞ〉
〈はーい〉
〈弓や槍を持った奴には近づくなよ〉
〈うん、匂いで分かるから近づかない〉
こんな感じで常に念話してやった方が良いんだろうけど、タエは狼からも人気者で、楽しく遊んで遊ばれてるから良しとしよう。
たまに、マウントを取ろうとするやつが興奮してくることがあっても、ジュン(純粋に力で)とニオ(母の威厳で)が直ぐに抑えてくれるのだ。
最後に言い訳程度にニオにグルーミングをする。
昨日もやったしね。




