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これは春雷のようだ

ニホンオオカミとハイギンオオカミは何度か合同で狩りを行い獲物を分け合ったようだ。

オークたちはその後2度訪れ、塩と石の台をタンニンや日用品と交換した。

准尉から話を聞くと、毛抜きをした厚手の皮は1,2カ月漬け込むそうで、俺の良く乾いた毛皮なら3日~1週間つけこんだので十分らしい。

その後洗って乾かすと匂いが無くなるが、固くなってしまうらしい。

准尉たちは匂いを気にしないので、獲物の油脂を塗り込んで柔らかくするとのこと。

落花生油、ひまし油があれば使うが、今は無いらしい。

俺の場合はタンニンの水溶液に浸してそのまま亜空間に・・・時間が止まってたな、ここ。

鍋は鉄製だから駄目だな。

壺や甕もないし・・・漬け物と同じでいいか。

横切りした岩の上に毛皮を敷く。

タンニンをまぶした黄色い雪を満遍なく載せて、皮と雪とを交互に重ねていく。

岩の重石を乗せて、最後に岩と皮を雪で覆う。

これで魔狼の皮は半分以上タンニンの雪に漬け込むことが出来た。

普通は常温で加工するのだが、この状態は浸透に時間がかかりそうだから、一月はこのままにしておこう。


和らぎかけた寒さがぶり返した。

狼たちは狩りに出ない日が続く。

まあ、肉は与えているのだが。

火が焚けない風雪がこんなに続くのは初めてだ。

亜空間移動できなかったら、氷付いた扉から出られず春まで閉じ込められそうだ。

家の竈で肉を焼いて、作り置きしておく日々だ。

吹雪と嵐の一週間が終わって、亜空間経由で外に出る。

屋根の雪を回収、つららの回収、周囲の雪を回収、焚火台の位置を設定し直して地肌を出して、日常を取り戻した。

ナビーネのお天気情報と地域情報では東南に魔狼が出没し始めたとのこと。

前にブタバナオークが出たあたりで、合流地点の狩場には姿を見せてはいないらしい。

それ、絶対エレトンたちが戻るとき襲われるフラグだろ?

空間移動してみるか。

一頭一頭狩っておこうか。

エレトンたちなら、魔狼が群れていなければさほどの脅威ではない筈だ。

翌日から南南東70㎞の地点に移動後、魔狼の群れを発見する。

雪の中のダークグレーの体は良く目立つ。

群れと言っても3頭なので1頭ずつ切り殺しては収納していく。

皮剥ぎ作業は、帰ってからにするか。

途中の河川合流地点でハイギンオオカミを見つける。

〈飯、食えてるか?〉

唸る娘狼を母狼が牽制して、父狼が口を開けてフルフルしている。

つまり、食ってないのか。

長い嵐だったからなあ。

俺は亜空間から半頭分魔狼を取り出す。

魔真珠を抜いて、皮を剥ぐ。

剥ぎながら、足を切り離して、灰銀たちの前に抛ってやる。

ニホンオオカミのように父から食べるのではなく、3頭一緒に食べるようだ。

上手く引っ張り合いながら、切り離している。

皮を剥がせた部分から切り離して、一頭分置いておいてやる。

〈じゃあな、うちのと仲良くしてくれよ〉

「ふひゅん」

こいつら狼が鼻を鳴らすのは概ね肯定と言うことなのだろう。

二本と灰銀はあの後和解はしたがトラブルがないわけではない。

獲物の分配は特にシビアだ。

その時は、ジュンがタエに念話(警報のようおなもの)してタエが俺に知らせて、俺が調停に入る。

各部位をバラシて部位ごとに7対3に分配しておけば大抵収まりはつく。

灰銀は体が大きい分食う量が二本より多くなるので、配分とは別に頭を置いておいてやるのがコツだ。


幾日が過ぎた。

〈雷雲が発生します〉

ナビーネのお天気予報だ。

雲が濃く暗くなり始め、川下から生暖かい風が吹く。

実際は冷たい風なのだが、冬の山から吹き下ろす雪交じりの風よりは暖かく感じる。

「ゼナ」

〈壁際から、部屋の中央に寄ってくれ〉

「クフー」

ゼナの危機感が緩い?

前回のような大嵐じゃないのかな?

外に出ると狼たちも何か感じているのか板の巣の周りで固まっている。

「タエ」

〈雷が来るかも知れない。音がしたり、大粒の雨か雹が降ったら、全員巣に入るんだ〉

〈避難だね? 大人しくするんだね?〉

〈そうだ、じっと待つんだ〉

とか言っていたら、遠くで空の鳴る音がする。

雪ではなく雨が降って来たので、俺も家の中に入る。

ジニーが怯えて無ければいいが。

伏せているゼナの腹に乗っているジニーはキョトンとしている。

外では雨が霰に変わるにつれ、雷も確実に近づいてくる。

しかし、風は強くなっても雹は降ってこなかった。

雷も連続ではなく散発だ。

雷はかなり近づき、空が割れるような音になり始めた。

しかし、前回のように大砲が弾けるような音と共に地面が揺れるような落雷はない。

そう、これは落雷ではなく、雲放電と言う奴かもしれない。

ジニーに翼をかぶせて、ゼナにもたれて音が通り過ぎるのを待つ俺。

ジニーも時々体を硬直させるが、泣いて声を出すようなことは無かった。

空気が震えるような響き方はやがて離れて小さくなり、数も減って行ったのだった。


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