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次はオークと商談のようだ

家、いえいえ、借家に戻ると、イノキバオークたちが待っていた。

もう来たか。

ムニム軍曹とネネ准尉と、他10頭、准尉を囲むように団子になって寒さをしのいでいるようだ。

白毛の軍曹はやっぱ、目立つな。

〈そのままにしていろ、お前ら様式の敬礼もいらん!〉

若オオカミ5頭が牽制するのを抑えて、一列にさせようとする軍曹を止める。

「新人もいるであります! 軍規を尊重したいのでありますう~」

〈その軍規というか、敬礼、人間式に改めろよな〉

「イノキバオークここにありと知らしめるための軍規なのであります!」

「元帥殿に認めてもらった由緒正しい敬礼ですからねー『継続は歴史なり』なんです」

全裸軍曹とネグリジェ准尉が俺に抗議してきやがった。

〈ふん、お前らの管轄内なら正論だけどな、ここいらは別の縄張りなんだよ! 下世話な行為は俺が禁じる!〉

「なんて?」

「我らの敬礼は下世話なのでここでは禁止だそうであります」

ち、やっぱり准尉には念話が通じないか。

「さっさと商談」

片言だが声で話をつけよう。

と、思ったが、しまったな。

石の焚火台は亜空間内だ。

あれをパーツごとに借家から取り出すふりをするのは、のはかなりの手間だな。

重力魔法は公開済みだから、浮かして運ぶか。

「性急ではありますが、始めるであります。鍋からで宜しいか?」

軍曹が部下に持ってこさせたのは鋳鉄の鍋だった。

アウトドアのダッチオーブンと似ているが、ずっと軽い。

その分、割れ易いのだろうが。

俺は、地面に丸太を数本置いて、その上に2m×0.3mの板を乗せて、簡易な机? 台? を仮設して、借家に入って、取り出すふりをして塩の板を2枚持って来た。

「これでいいか?」

木の板の上に置く。

「あるだけ、頂くわけには?」

俺は乾いた大きな草の葉で包んだ塩の粒を、皮のバッグから取り出す。

「これ、あるだけ」

「じつは、鉄の鍋はこれだけの大きさとなると、銀貨20枚はするのであります」

〈この塩の量だと釣り合わないか?〉

俺は、もう一度借家に入って、亜空間から石の焚火台セットを取り出して外に出る。

「約束の品、あと4セットある」

俺はそれを焚火台の形に組む。

「ほお、見事な切断面でありますな」

空間切断による一発切りだからなあ。

大理石や御影石は柔らかいから、あの光沢のある切断面が出せる。

堅い岩で同様の鏡面仕上げが出来る俺の技術は誇っても良いのかも知れないが、一回当たりの使用MPは3だ。

吹っ掛けることもあるまい。

〈一人、一個ずつパーツを持っての移動が望ましい。特に板の方は衝撃に弱い〉

と、いう訳でさらっと軍曹の感想は受け流しておく。

で、製品の完璧な梱包など望めない、とは言っても、塩と石の板は木の板2枚ずつで挟んで革ひもで固定してやろう。

これで輸送事故率は大幅に下がるだろう。

三度、家の中から焚火台御セットを取り出すふりをして、板の上に置く。

〈これからは、綿の生地から他の生活用品が交換で良いか?〉

「次の石の台の交換交渉に入るであります」

軍曹が准尉に説明する。

「軍曹、これ持って帰るとなると、一人一個ずつだよね? 持って来た物資余すと持ち帰りに支障を来すよね? これ全部置いて帰ろう」

「は? それでは大損になるのでは?」

「次、来た時、1台もらって帰ろう。いらない物資と、量が過剰とザンザ殿が判断するならその時持ち帰ろう。足らなければ、追加の物資を検討してもらおう」

なるほど、准尉はこの取引を継続した商いにしたいらしい。

この交易は春までなので、准尉たちが急ぐ気持ちは分かる。

〈塩はともかく、石の台は作り置きできる。しかし、そんなに必要なのか?〉

「残り3台は必要であります。営業所では余暇の時間が限られているので、ここのようにのんびり一人分ずつ焼肉すると言う訳にはいかないのであります」

俺は聞き分けながら納品の品を改める。

綿生地の巻物が2反と糸が2巻き、裁縫道具が1包み、木の器とスプーンのセットが10、包丁のようなナイフが2本、胡椒・砂糖が100g程度、そして、

〈木の実か。椎の実、クルミ、この栃の実はあく抜きしているのか?〉

「冷水で20日間さらしたであります。2年は持つのであります」

〈分かった、次は手ぶらでも構わない。残りの石の台は引き渡そう。その上でまだ追加がいるのか?〉

「予備は欲しいであります」

〈タンニンはあるか? 毛皮の加工用だ〉

「鞣しに使うミモザの粉ならあります」

〈それが交換品だと、兵たちの輸送量も減るだろう〉

「交渉成立でありますかな?」

「ああ、それでいい」

俺は、家に入って別の石の焚火台を出すふりをし、外に2台目を組み立てる。


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