喧嘩負けしたら、そのままじゃいられないよね?
二本狼たちは二,三日おきに狩りに出る。
アウトホーンゴートをゲットして以来ずっとボウズなのかなと思っていたら、ちゃんと小物は狩り得ていたらしい。野鼠や野兎の類だ。待ち伏せた大門川源流で食べては残骸はちゃんと土中に埋めているのだ。
なぜそこが狩場なのかなというと、冬場は川の水温の方が気温より高く、多門川と門前川とが合流する場所は積雪が少ない部分があり、そこから覗く植物を食べにくる草食動物を狙って待ち伏せるのだ。
比較的寒さが和らいだ日だったので、俺は上空から狼たちの狩場を見に行っていた。
良好な狩場であるので他の肉食獣も訪れることもある。
そこで、その日、二本狼たちと別種狼たちがバッティングしたのである。
相手は魔狼ではなく、灰色の狼三頭だ。
三頭とも似たり寄ったりだが、一頭だけ魔力持ちだった。
ハイギンオオカミ(一歳)
状態 ハングリー精神持ちの親子の娘
LV 九
HP 九五
MP 二九
強 九一
速 一〇二
賢 六
魔 二七
耐 九三
運 二四
スキル
犬歯・威嚇・風乗り
風魔法
しかも、若い奴だ。複数回、魔真珠食ってないとこうはならないよな。
ステータスを見る限り、二本狼たち、旗色悪いな。なのに、三頭選抜で挑むってー、おい!全員で掛かれよ。
ハイギンオオカミ娘の最初の威嚇で勝負はついてしまった。ひるんだ隙に左右を各個攻められ、センターのゲンは風魔法ではじき飛ばされたのだ。
残り四頭が臨んで返り討ちにされたので、俺は介入することにした。念話で撤退命令だ。
灰銀夫婦は俺から距離を取るが、娘は空中の俺に飛び掛かってきた。風魔法の応用かな?
殺す方が空間切断を使えば簡単だが、野生動物同士のフェアな陣取りだ。若い命は奪いたくはない。
と、いう訳で、こういう時の対策は考えてある。俺は前面に亜空間を展開する。亜空間はある程度、個を確立した生命体を収納することは出来ない。つまり、物理無効の盾にすることもできるのだ。
灰銀娘は亜空間に激突して地に落ちた。
「ガフッ」
灰銀娘はふらつきながら立ち上がる。
空中で勢いが殺されていたのが幸いしたな。地上でフルパワーの突進だったら首が折れていたぞ。灰銀娘を夫婦が支えるのを後ろで見ながら、二本狼たちを撤退させる。
暫く牧場方面に戻って、二本狼たちの体をチェックする。ガントの前足が折れてるな。
〈集合!〉
他の者は噛み傷一、二か所ずつか。結構、深い傷だな。
〈目前の傷負いし者に女神の福音を与え賜え〉
俺の胸元を中心に光源が発生し、周囲を包む。光が収まった後、二本狼たちの傷は全快していた。
狼たちは、川の合流地点に頭を向けるが、俺は制止した。
〈今はリベンジは無し! 牧場で作戦会議だ〉
道を戻らせ、牧場に向かわせた。
タエが出迎えで三回、吠える。
タエは留守番で家に残ることが多い。
エレトンの家の前で横一列に二本狼たちを整列させる。
ステータスを確認すると、ゲンとニオ、ジュンがLV八、ガントがLV七、他がLV六だった。
ジュンだけが『魔』の数字を持っている。
「ゲン」
〈ここに、ゴートの魔真珠がある。本来ならお前から与えるべきだが、次が何時手に入るか分からない。魔力を持ってるのがジュンだけだから、ジュンに与えていいか?〉
「ウォフ」
ゲンの許可が出たようなので、ジュンに魔真珠を与えてみる。
ニホンオオカミ(〇歳)
状態 独立一家の世話好き次女
LV 一〇
HP 一〇〇
MP 二四
強 一〇〇
速 一〇〇
賢 二五
魔 二六
耐 一〇〇
運 一〇
スキル
速足・犬歯・甘噛み・土波
土魔法
レベルが一〇になったか。そして、期待どおり土魔法が生えた。
「ジュン」
〈お前は土魔法が使えるようになった。使いこなせるようになるにはイメージが大切だ。ま、最初は真似からだな〉
俺は家から離れたところに移動し、雪を吹き飛ばし、土を剥き出しにする。
脚で地を蹴って壁(一二〇×一二〇×三〇㎝)を発生させる。
〈やってみろ〉
ジュンが目の前の土を意識している。四カウント後に俺と同程度の壁を作ることに成功。
〈しかし、あの灰銀の娘は二カウントぐらいで発動させたな。しかも出合い頭で威嚇を使ってだ。一カウントで風魔法が来るかもしれない。発動までのカウントを縮めるんだ。〉
MPが無くなるまで訓練して二カウントまで縮めることが出来た。




