この国の上の方は謎だらけのようだ
誤字報告ありがとうございました。
しかし、ステータスが見えるだと? 魔物、魔獣は鑑定できなかったんじゃないのか? 現に軍曹は見れないし。
「ゴート肉、うんまいです。塩の利き方が絶妙です」
准尉が食い始めやがった。お前は一番最後だ、と嫌がらせするつもりだったのに。
『ヒトブタ』ってこれ訊いてみてもいいのかな? 『更年期』はそっとしておいてあげた方がいいと思うし,むしろつついていいのは『昇進不遇の准尉』の方か?
「その年で、准尉? 位、低くない?」
「傭兵団自体の扱いが低い。ついでにオークの兵の集まりですからな」
「上位組織は人族の軍か?」
「ガイラバルト辺境軍などと名乗っておりますが、実質レジスタンス上がりの独立編成軍ですからなあ。新都から来た上官殿の腰が低いのが救いです」
「レジスタンス? 何に反抗していたのだ?」
「レジスタンス時代は旧都の旧貴族どもが敵でしたなあ。まあ、その頃の我らはそのレジスタンスを襲って手籠めにしていたのですが。まあ、体を合わせれば情も移りましてな、貴族に追われたレジスタンスを匿ったり、殿をしてやったり、最後には馴れあってしまったのですよ。お陰で子も兵も増えました」
何やってんだよレジスタンス! 何やられてんだよレジスタンス! 肝心なところをレジスタンスしろよな!
「子が出来れば守らねばなりません。その頃、丁度リューキ元帥が御子と皇女を連れてここを訪れましてな。託児を請け負う代償に獣化兵の普及を努めて頂き、確固たる辺境軍が鍛えられたのです」
元帥が、御子と。皇女を、連れてきた? 重大事件じゃねえか?
「元帥、国の軍の中枢の人か?」
「当時はそうでした。今は所在不明ですが」
「元帥、辞めたのか?」
「いえ、詳しいことは、こんな辺境には伝わって来ないのです。ただ、旧都消滅に大きく関わられていたらしいとか」
「謎の多い人なのだね?」
「謎と言えば、皇帝一族には謎、不明な点が多いです」
「わかる範囲で?」
「まず、トップが皇帝なのか女王なのか不明です。皇子が何人かも不明です。皇帝の義兄も行方不明です。その奥方が元帥なのですが、やはり所在不明です」
「ちょっと、元帥って女?」
「お身体は男と見間違うかのような筋骨隆々でしたが、立派な乳をお持ちでありました。元帥が連れていた獣人が、姫皇子様であられたということも、大分後で知ったことですが、人同士の皇帝と女王の皇子が何故獣人なのかも謎ですなあ」
俺が知りたかったのは、准尉のステータスの件だったのだが、謎だらけの王家の話になってしまったな。結局何もわからないに等しいが。
このぐらいは聞いておくか。
「獣化兵って?」
「我らの一つ下の世代から使える能力です。一時的に先祖帰りして獣の能力を駆使できます。国境の山岳地帯を駆け回り国境越えを防ぐのに重宝されておりますわい」
「国境警邏? 剣、槍、楯無しだけど?」
「そこは元帥より伝わる体術がありますのでな。ふむ、お見せしよう。キキとララ、前へ」
その組み合わせはヤベエだろ! 色々と!
「約束組み手、「舞闘の三」で良いでしょう」
「「ハイッ」」
左手前、四股立ちで構え合う二人?二頭。全裸で股広げて立つなよ!って言う間もなく演武を始める。
カンフーだな、これ。
左手足による払い、裏拳、受け、突き、蹴り、足の受けによる組み合わせだった。
「ハイ!」「ハッ!」「ハ!」「ハイッ!」
掛け声も勇ましく最後は右回し蹴りと、後ろ回し蹴りを空打ちして、決め立ちする二人。
うん、ゼナに匹敵するスピードだったね。手も良く出てるし、鍛錬してるのよく判るよ。足も良く上がってるよね、全裸のくせに! ノーパンでやるな!
「その二人にこれを」
俺はゴート心臓のぶつ切り肉を皮の包みから出して焼いてやる。焼きあがるまでに二人の息も整いインターバルになっただろう。
「ゴートの心臓だ。臭くないか?」
「美味いでありますっ」
「歯ごたえが堪らないであります!」
目をしばたきながら食べるオークビッチたち。
追加で五〇〇gほどずつ、ゴート肉を焼いて胡椒を掛けて食わせてやった。
残りの三人の分も焼きながら、三等分で食わせて焼肉はお開きにする。
「今日、これで、帰れ」
「最後にこの塩のことを訊いても良いですか?」
「ずっと北の切り立った崖にあった。今、下降気流が酷くて行けない」
嘘だが、ホントのことを言うと、熊の里が荒らされるからな。
「そう、なのですか。夏に来れば融通してもらえますか?」
「軍曹」
〈俺たちは春には南の島を目指す。ここにはもう来るな。家主に迷惑を掛けたくはない〉
「は? ええ? 准尉殿、ザンザ殿は春には南の島に行くようであります。家主が? 帰ってくるので、もう来ないで欲しいそうであります」
「我ら、地域住民とは節操のある関係を築いておりますよ。肉体関係は営業所のみです」
そんな営業所あるから信用できねえんだよ!
「軍曹」
〈ここの一家は、移動中、ブタバナオークに襲われかけた。オークが来ると強く警戒するだろう〉
「准尉殿、ブタバナどもが出たようであります。お陰でここの家主の心象最悪であります」
「クソッ、かなりの数をトドロキ連峰で殲滅した筈だが、まだ残っていたかっ」
「巣は徹底的に潰した筈であります。どこで沸いているのでありましょうか?」
〈南東七〇㎞の平地に出た。その東の山から出たり入ったりだったかな? 二六頭は始末したよ〉
「南東七〇㎞で、二六頭は処分済みであります」
「それは、恐れ入りました。しかし、東からですか? アスナロ村付近で被害にあった婦女子の話などは聞きませんな」
「二六頭もいるということは、この一〇年来で三〇人近くの婦女子が襲われたことになるのであります。やつら、攫った女に孕ませて仔を増やすであります」
〈仔を産んだ後の女は?〉
「再び凌辱されるのであります。奴ら産後であっても容赦なしなので二人目を産む女は皆無であります」
生臭い現実だが、雄オークとはそういうものなのだろう。
〈今後も、見つけたら狩っておこう〉
「駆除対象であります。狩りまくって頂きたいであります」
「うむ、ご馳走になった。これにて失礼する」
「さいなら、挨拶の礼無しで帰れよ」
「それはぁ~どういう意味ですかな?」
「ささげーなんとか、いらない」
「それが無いと、締まらないのですが」
「軍曹! とっとと、連れて帰れ! この赤いの!」
「准尉殿、ザンザ殿は下ネタが御嫌いなのであります」
いや、嫌いじゃねえけど、お前らのは特に鬱陶しいんだよ!
軍曹は獣化し、イノシシとなった背に抵抗する准尉を乗せて去っていった。




