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隊長は年の割に強気交渉で臨むようだ

 その日のお祈りタイムは無難に食の豊かさを感謝して女神ポイントを一〇貯めた。

 午前はジニーと遊んで、午後は狼と遊んで日が過ぎ、オークたちが再びこの地に訪れた。

 何か赤いの着たのが軍曹にまたがっている。鬱陶しい騎乗だな。随伴は前回の半分程度だ。

 赤いのはネグリジェだったよ! 軍曹より豊満且つ弛んだ体形で下半身何もつけて無いのが腹が立つ。顔は軍曹も准尉も殆んど同じだが、下あごの牙が准尉の方が長いので区別がつく。

 軍曹とオークビッチ五頭が並ぶ。人型に変化して赤いのはその反対側に立ち、例の「捧げ乳」をきめる。

「国境警備隊オーク傭兵団中隊本部営業所中隊長ネネ准尉です」

〈准尉殿は念話が出来ないのであります〉

 軍曹が補足する。

「俺、ザンザ・ガンガ」

 この名乗りが気に入らないなら、この後の対応もそれなりだ。

「本日は、胡椒を持参しました。岩塩との交換を望みます」

 ストレートに交渉してくるのは、こちらとしても望ましい。

 俺は、いったん家の中に入り、前回と同じ大きさの塩の板と、狼の皮を亜空間から出して、外に持ち出す。

 焚火台の上に魔狼の皮を敷き、塩の板を置く。

 横でタエが吼えているので、諫めながら訊いてみる。

「胡椒、出せ?」

 軍曹が背嚢から胡椒が入っているらしき袋を取り出す。前世の塩・砂糖の一㎏袋の倍ぐらいはある。が、これで一㎏程度だろう。

「品質、確認、良いか?」

「どうぞ」

 准尉が応えたので、俺は袋を紐解き中を覘く。胡椒の香りが広がる。

 袋の中の胡椒は白黒混合で中間色のようなものもある。乾燥状態は良いようだ。亜空間に入れれば三種に分類できるだろう。

「塩、これで良いか?」

 塩の板は六㎏程度だ。前世の中世なら塩の方がずっと少ないことになる。

 胡椒の減量は致し方あるまい。

「まだ、頂きたい」

「これしかない」

「例えば、この皮の下の塩です」

「これ、俺らに、必要」

「では、取引不成立に?」

「仕方ない、塩、体に必要、胡椒必要ない」

「我らも、体に塩が必要なのですよ。ところでザンザ殿、『腕ずく』と言う言葉をご存じかな?」

「よく知っている。俺の好きなやり方」

 横で軍曹が慌てている。

 俺は焚火台の横の大きい目の石を重力魔法で浮かし、上空に移動させる。高さ一〇〇mの位置で重力魔法を解除する。石が鈍い音を出して地にめり込んだのは俺のすぐ横だった。

「ただ、上にあげたのだが、これだけズレるようだな」

 俺は再び上空に石を浮かせる。次に落ちたのは准尉のすぐ右だった。

「高くすると、落ちる位置の範囲が変わるようだ」

 また、俺は石を浮かせる。

「そろそろ、『腕ずく』とやらをしないか?」

 石は准尉と軍曹の中間に落ちてきた。

 准尉と軍曹はこの寒さの中、汗をかいている。脂汗かな?

 俺は三個同時に頭大の石を浮かせかける。

「『腕ずく』しないと、誰かが怪我するんじゃないか?」

『俺を止めないと』と言いたかったのだが、俺は『め』が発音できないのだ。

 准尉が両手を上げた。

「もう結構。『腕ずく』はしません」

「降参か?」

「降参です」

「軍曹と替われ、負けた者とは交渉しない」

「理屈ですな。替わりましょう。軍曹、前へ」

「は、良いのでありますか?」

「良い。交渉結果は私が責任を持つ」

「結果? 胡椒が塩になるだけだ」

 俺は塩の板の上に胡椒を広げる。半分強の胡椒が板の上を平たく埋め尽くしたことになる。その胡椒を魔狼の尻尾の皮袋に詰める。

「これだけ頂こう。残りは塩と共に持ち帰るが良い」

「なるほど、分かりやすい計量と基準でありますな」

 俺は敷物にしていた魔狼の皮を塩の板で包み、足の部分の皮を縛って梱包状態にし、軍曹に渡す。

「ところでザンザ殿、自分の手には胡椒があるであります。ここには塩の板があるであります。そして、前回頂いた塩で作った鹿の生ハムであります。いかかでありましょう?」

「良い提案だ。火と肉、用意しよう」

 今日、俺の身内は満腹に近いが、試食させるのは嫌がらないだろう。

 猪から焼くか。家の中に入って魔狼の皮に細断した肉を大量に包んで外に出る。

 焼きあがった塩の板の上で、よく火の通ったイノシシ肉から、一握りの石を二つに割った平たい断面で胡椒をすり潰して肉に振りかける。

 ゲンを呼んで食わせてみる。あまりたくさんの胡椒は使っていない。嗅覚の優れた狼にはキツイかもしれないからだ。ゲンに抵抗はないようだ。ニオはどうかな? そうか、イケるか。

〈明日沢山焼いてやるからな〉

 とか、念話してたらゼナが外に出てきた。胡椒の匂いが伝わったかな? 

〈まあ、食え〉

 俺はゴート肉を焼いて胡椒をふりかけ、ゼナにやってみる。

「イケるか?」

「クフー」

 ゼナは、納得したのか家の中に戻って行った。

「今のは熊の女王ではないのですか?」

 准尉が訊いてきた。

「ゼナと呼んでいる。そちらこそ、何故、女王と?」

「熊の中で一番強いからです。雄に近い体躯、雄も恐れる強さ、故に熊の女王と」

〈確かに強いだろう。物理攻撃は限りなく無効化されてしまうだろうな〉

「なぜ、念話でありますか?」

〈俺は「ブ」とか「ム」とかが発音できない〉

「そ、そうだったのでありますか。お気を使わせて申し訳ないであります。准尉殿、ゼナには物理攻撃がほぼ効かないとのことであります」

「つまり、未だ強くなってると言うのですね?」

「そーだ」

 俺はイノシシの胡椒味を若衆、娘衆に与え、タエにも食わせる。全員胡椒に抵抗はないようだな。

「その、毛並みの替わった子狼は、前の時はいなかったでありますな」

〈狼ではない。犬とコヨーテの雑種だ〉

「それはまた、珍種でありますな」

〈イノシシの肋骨周りで良いか〉

「大好物であります!」

「アウトホーンゴート、食うか?」

「は、あの難物を仕留めたのでありますか?」

「うちの狩人、腕がいい」

 軍曹が食べた後には准尉が控えていた。


ヒトブタのネネ(四九歳)

状態 更年期ニンフォの昇進不遇の准尉

LV 四九

HP 三八〇

MP 三七

強 一七五

速 三〇

賢 五一

魔 二九

耐 三九一

運 一二

スキル

我流抜刀術・公文書理解・会計初歩

性魔法


 視界に准尉しか入れなかったからか、何気に見えてしまった。見たくもないステータスがあるし。


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